九百八十四生目 激戦
私は敵の暴風魔法に巻き込まれていた。
そして天井から……
魔法が消え落とされた。
まっまずい！
ここは飛べるほどには広い場。
天井から落ちたらかなり痛いというよりおそらく今の状態だと折れる。
けど全身の感覚がもみくちゃにされた挙げ句切り刻みを食らって麻痺している！
わけがわからなくてボール状に展開した鎧とイバラたちをどうこうするには難しい……！
でももしかして行けるのなら！
たのむ！ "飛行の極意"！
ぐんぐん床が近づき落下の危機。
頼む！！ 止まって……！
……フワッと。
急速な減速がかかり私の身体が動く。
う……浮いた！
すごいな"飛行の極意"！？ ちょっと地味とか思っててごめん！
なんとか落ち着いたので全身の丸まった状態をほどく。
痛みは脳内物質で打ち消されていくものの逆にその感覚が不快として全身を支配する。
これは……生命力半分は吹き飛んだ。
追加で折れずとも肋骨折れたかな……"ヒーリング"だ"ヒーリング"。
みんなは……？
「ローズ！ 大丈夫じゃなさそうだな！」
「あ、よかった！ よくないけど！」
「こっちはなんとかしてる！ 立て直せ！」
「う、うん！」
敵に対して小イタ吉が爪を誘導しつつ尾刃イタ吉が大きく斬り。
そのあとグレンくんが勇者の剣で中距離連続突きして爪の合間をぬって刺しこむ。
グレンくんが離れる瞬間にダカシが剣を刺しこんで斬りスキを与えない。
今のうちに立ち上がって……！
骨の折れやヒビは複雑骨折じゃなきゃなんとか"ヒーリング"で行ける。
強めて治療していく。
３者とも敵に対して息を合わせ削るように攻撃を加えていく。
というか全力込めて１発入れ離脱しないと手ひどいダメージが待っているからね。
１撃入るか入らないかで斬り合いしているのは手数を稼ぐ攻撃は浅すぎてまるであの甲殻に通らないためだ。
ああ……やっと自前の目がはっきりしてきた。
ダメージであっちこっちひどいことになっていたからなあ。
今の４重の２重"ヒーリング"は誤魔化しみたいなものだが"生命力"があれば戦える。
そして……今度こそ薬を出して行動力も直さなくちゃ。
"ヒーリング"をひとつ中断し空魔法"ストレージ"。
中から薬瓶を取り出し飲み込んでいく。
「また来るぞ！」
「毛が逆立つ……雷槌だ！」
「離れて全力で避けよう！」
「うわ、もう盾は出来ないから気をつけて！ 私から"ミニワープ"を借りて使って！」
またあの雷ビームか。
誰に来ても炭すら消し飛ぶ１撃。
ここの壁に穴があきそう……
私に来ても良いように私も準備しなくちゃ。
空魔法"ミニワープ"を唱え待機だ。
激戦。
まさにその言葉に限る。
私達は出し尽くしたり絞られそうになりながらも更に薬品で補ったりしつつ立ち向かう。
敵の炎に雷そして氷や風の大魔法は戦場の様子を様変わりさせてしまうほどの力を持つ。
全部避けられればいいがそうはいかずみんな引っかかったり中心外に当たったり。
みんな死なずにここまでこれたのが奇跡としか言いようがない。
……ようはズタボロなのだが。
くらえば下がって治療を全力。
生命力だけ全快させて再度突撃なので傷だらけだ。
身体の傷まで治す余裕なんてない。
動けば問題ないという状態で再度戦場へ。
欠ければこっちが全滅する……！
敵は瞬間移動すらしない。
けれど"ダイヤモンドブラスト"さえも爪で切り払う。
さっき試した。
攻防一体となっている爪の強靭さは異常で結局弾けたり切り落としたりしたことはない。
"猫舌打ち"を爪にしてから集中連撃とかやったんだけどなあ。
切り裂かれればイタ吉ならば即死の危険性がある。
まあイタ吉は３体の誰かが生きていれば大丈夫だが……
それはそれとして被弾を減らさねば総崩れ。
だが当てにいかねば疲弊で崩れる。
もはやこの状態で何分かかっている？
体感数時間の濃密な時間だがそんなに戦っていたら全員倒れているのでそんなわけがない。
グレンくんが爪で強めに勇者の剣を叩かれ吹き飛ばないよう足で踏ん張る。
凄まじくスライドしていったがギリギリ耐えていた。
勇者の剣が相手から見えると最大の利点は消えてしまうからなあ……
「ほ、本当にアイツは倒れるの！？ と言うか効いているの！？」
「大丈夫！ 反応が薄いだけで、確実に効いているから！ 残り２割もない！」
ついでに私も下がった腕が痺れているっぽいグレンくんの身体を"ヒーリング"。
イバラと復活した剣ゼロエネミーでしっかり攻撃には参加。
もう薬品も心細くなってきてる……倒れてくれ！
