九百八十二生目 重傷
グレンくんを護る大盾ゼロエネミー。
対するは光線のように放たれた稲妻の槍。
通常なんらかで増幅しながら全力全霊で渾身の1回で放ち超広範囲を焼く雷光があんな軽々と……
しかもたったひとり1点集中して投げるだなんて!
みんなからすればとんでもなく広い攻撃だろうが私から見れば違う。
あれは凄まじい圧縮を行ってもまだ1直線広範囲を焼き払っているんだ……!
けれど電撃。
私のゼロエネミーなら!
「ローズの剣、がんばって!」
「今のうちに……なに!?」
ゼロエネミーの周囲に雷撃が飛んでいるからグレンくんは下手に動けない。
かわりに私が仕掛けようとした……その時。
ゼロエネミーで受けている感覚が……変わった。
「まさかヒビが!」
ゼロエネミーで雷撃は吸収しているはず。
実際私にエネルギーが流れ込んできている。
……まさか単なる雷撃魔力ではない!?
魔王の力が直接混ざっているのか!?
「うわあっ!?」
雷撃の槍とゼロエネミー。
それらが同時に砕け1部の雷撃がグレンくんを襲う。
残りののこりだったおかげで大した感電ダメージは無かったらしくすぐに走り出した。
「ゼロエネミーが……! あっ!?」
ゼロエネミーがまた壊れた……と思ったら。
私の近くに液体みたいなものが集まり……
それはひとつの宝石を中心に丸く固まった。
ゼロエネミーだ!
この状態は……休眠モード?
なんとなくそうだと伝わってくる。
少しの間だけだが休むらしい。
復帰するまでは私が奮闘せねば。
「なんて出力……みんな! あれはまともに防がないで! 多分受けた物ごと壊れる!」
「なんてやつだ……ヒットアンドアウェイでいくぞ!」
「「ああ!」」
ダカシの提案は全員許諾。
つまりは攻め入ったあと必ず離れるということ。
本来みんな連続で攻め入る実力があるがアイツは別。
ダカシとグレンくんが共に駆ける。
先にダカシが瞬間移動して到着し目の前で両手の剣を十字に斬る。
追加で光が出て十字の光が敵をしばりつけた。
「次!」
武技だろう。
だが容赦なく振られた腕。
全然縛りが効いていない……!
「うぐっ」
それでもほんのわずか影響があったのか重く早い振りのわりにかすっただけで済む。
しかもやっぱり爆発しない!
グレンくんの力が効いているのだ。
急いでそのまま瞬間移動し私の近くに来る。
グレンくんが入れ替わるようにとんできた。
「はぁっ、かすった、だけなのに!」
「治す!」
ダカシは腕に爪が引っかかれていた。
だがそれだけでまるでとてもレベルの低いニンゲンみたいに苦しみ悶えている。
……うわ生命力が満タンから4から5割吹き飛んでいるんだけれど。
さっきまでならダカシの場合魔王の爪振りかざしをしっかり1撃喰らい爆発で吹き飛ばされていた時くらいのダメージ。
これは痛い……
恐ろしい。
「グレンくんその爪をかすっても食らったらダメ!」
「うえっ!? そんな、難しいことを!?」
グレンくんは鍔迫り合いを爪としようとしてすぐにやめ切り返しをししのいでいた。
明らかにパワー負けしたのだろう。
かわりに素早い身のこなしと技術そして勇者の剣の力でしのいでいる。
「うぐぐ、本気で、打ち込まれてると、切り込むことすら、出来ないなんて!」
グレンくんは確かにみごとに爪をさばいている。
しかしそれだけだ。
相手へ切り込めていないのだ。
ものすごく早い爪撃だが片手で凌がれてもう片手はまた何か力をためている。
まあグレンくんも1刀流だしそこは若干仕方ないのかもしれないが……
それでも1撃の早い1つの刃がここまで的確に爪で押されるだなんて。
切り合いというよりもはやグレンくんの防戦。
たまらずグレンくんは素早いステップで下がる。
小イタ吉たちがカバーに入り前へでたけれど……まずい。
「イタ吉! 下がって!」
「お、おう!?」
私と"同調化"しているもののカバー行動を優先したかっただけなのだろう。
私がかわりに来て"千の茨"を伸ばして距離を取りつつグレンくんとイタ吉のカバーに入られて驚いたのだろう。
ここはやっとくしかない。
もう彼の腕に魔力が集まりきったからだ。
魔力は今世界に形を与える。
その姿は……
急激に場が冷えだし瞬時に腕から放たれた魔力の動きに脳内危険信号が放たれる。
イタ吉たちも全力逃走。
私も空に逃げる!
敵の右手は何かをすくっているかのようにまるめて手のひらを上に。
そしてそれを……ひっくり返す。
たった1滴そこから水が生まれ落ちた。
――凍てつく。
周囲の床が。場が。宙が。
爆発的に氷が広がり床から巨大過ぎる氷の結晶が生まれ敵を覆い尽くした。




