九百七十九生目 奪取
ダカシがトランスしたあとも激しい削り合いを続ける。
ここにきてラキョウがさらに調子を上げてきた。
こっちも相手の動きに慣れれば向こうも慣れるのだ。
「そこに来るな?」
「うおっ!? がっ!!」
囲み不意打ちを仕掛けようとしたイタ吉を小イタ吉含め完璧に爪で切り裂き止められた……!
伴う爆発で吹き飛び高く打ち上がる。
そして地面に転がり必死に立ち上がった。
「イタ吉!」
「まだ、まだいけるぜ!」
即イタ吉たちに"ヒーリング"を飛ばす。
小イタ吉が1体立ち上がらないがさっきもこうなっていたものの他のイタ吉たちが力を分け与え立ち上がっていた。
イタ吉の誰かが生きていればよみがえられるという例の力か。
正直回復は追いついていない。
ジリ貧だ。
私は自然回復狙いで他者を優先しつつ補助を切らさぬようにし攻撃魔法で牽制する。
大型魔法だと瞬間移動回避や味方の邪魔になりやすいから小型やピンポイントがメインかな。
私は他者の視点だろうとドライやアインスのおかげで比較的動きやすい点からインファイトを中心。
もう威力面で全員分合わせれば実は夢の異世界で戦った蒼竜像を倒せておつりがくるほどニンゲンひとり分であるラキョウに叩き込んでいんだけれど……
まだ6割も生命力があるなあ。
「ほんと、すごく動かしやすいなこの服……頑丈だし無駄に能力が高い……うん?」
「ダカシ! まだいける?」
「あ、ああ。それどころか……よし、試してみるか」
「行くよ!」
グレンくんとダカシが合わせて接近しラキョウに対して剣を振るう。
こういう時私は距離をとりイバラを伸ばしたり魔法をはなったり。
回復や補助はとにかくいそがねば。
「やっ、さっ!」「ほらっ!」
「その程度か!」
連続で切り裂きあいラキョウが魔王の爪を振って払うのを息合わせ引く。
そのまま再度踏み込む。
ラキョウはあくまで魔王の爪以外は防げないので切り裂きは少なくとも当たっていく。
ただ大きな魔王の爪はかなり当たりやすい。
気をつけていても……
「ぐっ!」
……触れて爆発する。
勇者の剣では爆発しないためできうるかぎりグレンくんが惹きつけるものの相手は両腕。
反撃での振りに対応しきれないとどうしてもかち合う。
直接斬られるよりはマシだが喰らえば大きく吹き飛び全身に傷が入る。
特に中が傷付くから爆発はきつい。
ダカシは回転し吹き飛びながらも空中で体制を立て直す。
地面に着地し剣を床に突き立て勢いを殺した。
そのまま再度立ち上がり駆ける。
とにかく"ヒーリング"! "ヒーリング"だ!
できる限り前衛に"ヒーリング"を唱えさせたくない。
そんな大した回復量はないし。
ゼロエネミーは槍モードになってまた長距離狙撃を狙う。
みんながかち合っている中で隙間を見つけ……撃つ!
大した力があるわけじゃないから怯みも狙えないが命を奪う力ならある。
まあラキョウに当たっても中まで入らずすぐ見た目回復されるが……
それでも着実にダメージがたまる。
「面倒な!」
「「うわっ!?」」
ラキョウが強く踏み込んで一気に速度を上げた大爪連続振り。
今まで歩きがほとんどだったからステップからの大爪乱撃されるとダカシたちは対応しきれない。
ふたりとも爪が身体に入り爆発で吹き飛ぶ。
離れたことでラキョウが瞬間移動。
先は……うわゼロエネミー前!
撤退間に合わない!
「ここで壊れろ!」
ゼロエネミーに対してラキョウは大爪で挟み込むように切りつける!
強烈な爆発が起こりゼロエネミーは吹き飛び……
地面へ落ちる……と見せかけて地面の上をらくらく滑空。
壊れるような衝撃を受けたくらいでは壊れない。
「チッ」
舌打ちひとつラキョウがしてタバコを新しいものに変えようとしている。
ダカシは片耳を抑え何かを聞くようなポーズ。
あれは……悪魔との交信かな。
「そうかさっき悪魔の言っていた……今か! その力、俺のものだ!」
「……何?」
ラキョウに向かい瞬時に光線が伸びる。
それに痛みはないらしく黒と白の入り混じった不思議な光線はラキョウに届いてもラキョウは驚くのみ。
「こんな攻撃、今更効くとでも……」
「そこだ!」
だがダカシの狙いはそこではなかった。
ダカシが叫ぶと光線が今度は逆流し始める。
「ぬぐおっ!? 力が!?」
「貸してもらうぞ、無理矢理にでもな!」
光が消えるとダカシが一瞬光り輝く。
そして……ダカシの姿がかき消える。
同時にラキョウの目の前へ現れた。
「なっ何!?」
「これは便利だ、な!」
ダカシは浮けないので落下と共に大上段2刃。
勢いと力の乗った1撃はラキョウの大爪出現より早く斬り捌いた!