九百七十八生目 服飾
私はラキョウに吹き飛ばされる。
グルグルと周り空高く飛ぶ。
……よいしょ! 空中受け身!
グレンくんも立ちあがりだした段階で大爪がまだ見えなかった。
やはり避けるには無理が有るか……
これで2割ほど生命力が吹き飛ぶからキツイ!
爆発の効果は目立つが魔王の爪自体の破壊力がとんでもない。
身体を引っかかれれば生命力をごっそり奪われる。
この痛みがその証拠だ。
私が吹き飛んでいる間イタ吉たちによるカバー。
グレンくんも立ち上がりラキョウを見ることで魔王の爪可視化に役立っている。
とにかく"ヒーリング"かけつつ接近し直さねば。
ダカシも切り合いに参加しているが今度はさすがに防がれかけている。
ギリギリで互いに刃が触れないように立ち回っているようだ。
ラキョウが低く下半身狙いに大爪を回転するように振るいみんな跳んで離れる。
そのスキにラキョウは瞬間移動して全員距離をとった。
……それはそれとしてともかくダカシが何か一気に集中をかいているような。
「ダカシ、トランスして何かあったの? 様子が変だけれど」
「あ! いや、その……まあ、ほら、服が……」
「……ああー」
ダカシはニンゲンだ。
そして今トランスし魔人としてだがニンゲンにもどった。
……つまり毛皮はあれど彼の中では全裸みたいなもの。
「余計な重みが消えて、やりやすくなったなと思っていたら、必要な重みもないなって……うん? ……できるのか?」
「ダカシ?」
「ああ、悪魔がどうにかできるらしい。よろしく頼む」
ラキョウが最接近してきて"ヒーリング"を私達みんなにかけつつ迎え撃つ。
みんな思い思いに叫びつつ攻めあっているが今気になるのはダカシのほうだ。
ダカシの身体に新たな紋様の光が浮かび上がり……
発動!
ダカシの全身あちこちに光が纒われ……
カタチとなる。
上半身は毛皮を考慮してか短めの丈に腕なしのぴっちりとしたもので下半身には上とは逆に緩めなのにギリギリまで下げられた位置に。
ローライズパンツ……ヘソ出しルック……
靴は派手に大きめなスポーツシューズ。
全体的に素材がよくわからないのはあくまで悪魔の呪法で作り出したものだからか。
さらに……
「なあ、少し……服が可愛すぎないか? ……そうか? そういうものかな……」
剣を握るためのグローブも。
頭部を護るための防具も。
獣耳を飾るものも。
腰へあらたに巻かれたベルトすらも……
ぶっちゃけ服のカラーリング含めて何もかもキュート寄りだった。
快活さもあるがかなり悪魔の趣味を感じる……こっそりハート模様まじってるのも見逃していないぞ。
そうだダカシの中にいる悪魔はラヴの因子……
あの誘惑の悪魔だ。
ダカシ言いくるめられている気がするがまあいいだろう……かな。
「戦場でその格好はふざけているのか?」
「ラキョウ、貴様もさっきからタバコ何本も吸ったり捨てたりして人のこといえないだろ! ……ん? とりあえず動いてみろって? あ、ああ」
ダカシから少し離れたところで私達と殴り合っていたラキョウも見ていたらしい。
ちなみにラキョウのタバコは5本目。
確かにこの中で1番戦闘ぽい格好しているのグレンくんだな……
ダカシは剣を構えまた剣に悪魔の紋様で力をみなぎらせる。
そのまま跳ぶように駆ける!
小イタ吉と入れ違いでラキョウの正面にたち魔王の爪を空振った瞬間に到達。
小剣で牽制するように振りラキョウはもう片腕をそこに振り込む。
直前でフェイントとして小剣を抜き復讐刀を頭に叩き込む!
ラキョウは無理やり上体をそらし避ける……が切っ先は遅れた胸に当たる。
「ぐっ……!」
「うおおおおーっ!!」
ダカシが高速で剣を振りこむ。
武技らしく圧倒的な早さにより1回斬ったと思ったら3回は斬っている。
光による追加斬撃だ。
何度も弾かれる音がして爆発もする。
大爪に当たっているのだが爆発を直接反動がないことを良いことに身のこなしで避けている。
他者の目を通しているのに……ということは。
どれを弾かせるか……それをダカシは計算して斬り込んでいるということだ。
そこをバトルセンスや悪魔の力それにニンゲンとして戦っていた経験則とそこからの直感でやっている。
最終的にラキョウの見た目修復が追いつかない速度で切り刻み最後斬り飛ばした!
「ぐおっ……! 調子に乗りやがって……!」
「ラキョウ、ここでお前を倒す! 必ず!!」
こっちはみんな何度も吹き飛ばされ受け身とってとやってるのに……やっと1回吹き飛ばせたかあ。




