九百七十生目 皇帝
雷の槍が降り注ぐなか最後はホロウマンの元へ大盾ゼロエネミーと共に突っ込む!
みんなも私の背後についてきている。
そして……衝突!
ホロウマンは投げるのを止め私の大盾と押し合い。
その間にイバラを伸ばして……攻撃!
大きく"叩きつけ"!
「……!」
何!? 肩から雷の槍が生えて止められた!?
どこからでも魔力で生み出せるのか!?
あっちこっちからイバラを伸ばすものの鱗と雷の槍で的確に防がれる。
こいつ思ったより厄介!
「そこのイタチ、お前はどうだ? なぜこんなところで戦う。魔物なら魔物らしく、縄張りにかえっていれば良い。1番我々と争う理由が薄いだろう」
「何いってんだ! イタ吉って名前だ覚えろ! それとむしろ逆、この中で1番おまえらをぶちのめす理由がある!」
「……ほう」
イタ吉の言い切りは私もラキョウも意外だった。
そうこうしている間にも私の後ろから3者とも出てホロウマンを殴りに行く。
「俺の理由、それは……!」
「なんだ?」
「冒険したいから、だー!!」
「……は?」
え? 私も思わず思考が止まってしまう。
イバラは動かすが。
イタ吉は気にせずそのまま駆ける。
ホロウマンが片腕で力強く雷の槍を投げる。
そのまま降ってくると大量の棘に変わっていた!
まさに雷の雨だ!
小イタ吉が先行しつつ高速で回避。
こういう直接狙いに来ないで範囲に巻き込むワザはかなり危険。
それでもイタ吉は突っ込んでいく。
「キサマはもしや……バカなのか?」
「何むずかしく重っ苦しい理由並べて高尚な感じで戦おうとするんだ? んなもんバトルマニアにでも任せておけば良いだろう!? 俺はワクワクする冒険がしたいんだ! 立ちふさがる強えやつぶっ飛ばしてその先の景色を見る! それが最高なんだ、求め続けて何が悪い!」
あまりにも率直。
あまりにも独自的。
けれどそれらは全てイタ吉の心の底から発せられたと感じれて。
「ハッ、ハハハ! そうか! そうか……このタイプは1番折ることは難しいな……」
イタ吉たちは雷の雨に打たれ何度も身体に電流を流されようと駆ける。
そして真っ先に回り込み小イタ吉とともに思いっきり踏み込む。
そして……
「「らっ!!」」
イタ吉たちによる息の揃ったドロップキック!
大盾ゼロエネミー迫り合い中だったため簡単に姿勢が崩される。
今だ! イバラで四肢を"縛り付け"!
グレンくんは雷の棘を打ち払いそのまま大きく悪魔の目に切り込む。
ダカシはさらにいままでの分もと高く跳び上がってから急降下切り裂き。
そのまま背中から生えた腕でホロウマンを斬り崩した!
「む……なんとなく今日は、いけるな」
ついにはホロウマンの姿すら崩れだし私も拘束をとく。
そう残るは……
椅子の上にいるラキョウのみだ。
「ラキョウ! おとなしく投降しろ! もはや決着はついただろう!」
「投降したところでその復讐刀に斬られるだけだろう。それに……追い込まれているのはキサマらだ!」
4体ともアンデッドたちを倒した……と思ったら。
ラキョウが暗闇の向こうで腕を掲げたかと思ったら強烈な光が!
うわっ眩しい!
「な、なんだ!?」
「目が……!」
さらに光に照らされて崩れているアンデッドたちの身体が……回収されている!?
それに……この魔力の動き。
戦闘で散らされた魔力たちが。
場に残ったエネルギーたちが。
みな黒い根に吸収されその力はラキョウの椅子へ。
輝きが消えると感じる……
ラキョウから感じる強さのプレッシャーが……増している!
「い、今のは一体!?」
「ヤベェな、強くなっていないか?」
「場のエネルギーたちを全て吸収した……のか?」
「その程度ではない。この城に残っていたエネルギー全てを得たのだ。どれ、こいつはもういらん」
僅かな輝きを残す何かをラキョウは深い闇の向こうから投げる。
ってニンゲン!?
まずい受け止める!
空中に飛び柔らかく受け止め勢いを殺すように落ちていく。
最後はゆっくり地面におろした。
全身とても高級そうな身なりをした若々しい女性。
……だがなんとなく見たことあるような。
直接見たんじゃなくて……ほら絵とかの……絵?
閉じていたまぶたが顔のゆがみと共にかすかに。
「……うっ……く……」
「皇帝に受け継がれる、おぞましいほどに強い輝きの力、使わせてもらった。例え俺がどれだけこのような邪気をまとおうと、力を受け入れようと、俺自身が侵食されないようにな」
「えっ……皇帝?」
皇帝!?
グレンくんも思わずといった様子で皇帝の顔を何度も見る。
そうだ皇帝だ。そりゃ絵で見たことあるよ。
絵だと男か女かはっきりしない感じだったけれどこうして直接みると女性っぽい。
それにしてもこれは……
「もはやその力も使い古しだ。キサマらにやろう」




