九百六十九生目 復讐
小さな悪魔アンデッドスピダルを撃破。
残りはダカシともつれ合っているバファゴトに雷の槍を投げたい放題しているホロウマンだ。
それにしてもラキョウの話す言葉……
「世界から外れている? 元の場所から別の場所にいつの間にかいた? それが世界を巻き込んで大騒動起こす理由になるか!」
イタ吉が着地しつつタンカをきる。
そう……その言葉。
先程の英語発音ジ・アースと言い……
「そう。味わったことのない相手に何を言おうと無駄だ。だから俺は、俺自身でどうにかして帰ることにした。例え何をどうやろうともな……!」
「クソが! 俺をこうして、妹をあんなにして、父さんも、母さんも、村のみんなも奪っておいて、被害者ヅラだと!? ふざけるな! 降りてこい! そして死ね!!」
「ハハハ、そういえば調べた所、キサマは復讐者だったらしいな。ならば奪われる苦しみは最も知っていよう。それを取り戻すためならば、何でもすると、そう心に決めるからこその復讐心ではないか?」
ダカシは法的に定められた復讐者だ。
いわゆる仇討制度。
相手はラキョウ。
そしてダカシは昔本当にそういう姿勢だった。
経験を積み強くなるためには自身の身体すらいとわない。
結果的に実験体を探していたのかカエリラスに捕まり大きく変質させられてしまう。
それでも今のダカシならば……!
「ダカシ、助けに来たよ! おまたせ!」
なんとかダカシとバファゴトの殴り合いに間に合う。
ダカシは既に……肉体を壊されやすくされているらしい。
バファゴトの"蹂躙行軍"の効果か。
バファゴトは鼻息荒く……はしていないかアンデッドだし。
蹄を地面で鳴らして威嚇してきている。
そのまま光を前方に纏って突撃してきた!
「……昔の俺ならばラキョウ、お前の言うことを否定できなかったかもしれない」
「ほう、違うと?」
「ああ。今でも俺は復讐者だ。だけれども……」
ダカシは悪魔の力を使い背中から腕と刃を出す。
小剣と大きく赤い復讐刀。
その2つが生えた。
私も空魔法"ベンド"!
突撃してくるものの向きをずらす……それはバファゴトすらも!
牛の巨体がわずかコースがズレ私達に横腹を見せる!
「今だ!」
「うおおおーっ!!」
ダカシが2刀を振り切る。
思いっきり踏み込んだ刃は重く切り裂き牛の身体が曲がる。
当然1撃で終わらない。
そのまま運ぶように連続で切り裂く。
じわじんと奥へ押しやり……
最終的に上からの斬りつけで地面に叩きつける。
「そこだー!」
グレンくんが勇者の剣をナイフのように振り空振る。
するとどこからともなく斬撃の光が飛来する。
そのまま体制を立て直そうとしているバファゴトの悪魔の目を切り刻み……砕けた!
「今の俺の復讐心は、俺たちのためにある。お前を斃し、アカネと共に生きるために剣を振るう。そんな揺さぶりには乗らない」
「ふむ、実にくだらない答えだな。やっていることは自分を棚上げして他者の批判とはな。まあいい、どうせロクな答えを返さないだろう。それよりも……そうだ、確か、ローズオーラと言ったな?」
「……何?」
「キサマ、姿は違うが、水洞の迷宮で出合い、行く先々で邪魔をしたローズオーラだな?」
いきなり私に話を振ってきたから警戒したがなるほど。
相手からすればそこそこ有名だよね。
とりあえずダカシの脆くなった身体は光魔法"リフレッシュ"!
魔力で付与力と対抗して……勝利!
ダカシの身体はもろくなくなった。
「こっちからしたら、めちゃくちゃ邪魔されまくるんだけれど!」
「アノニマルースなる集団もキサマらが率いているのだったな。報告で聞いたことがある。魔王を認めない魔物たちの街だと。それを踏まえて聞くが……お前はなぜここで戦う? 流されてか? 命令されてか?」
さすがによく調べられている。
だからこそ私の戦う動機が謎だったのだろう。
ダカシに引き続きこちらの精神を突いてこようとしているのな……
補助魔法のかけなおししつつ身構える。
ホロウマンはその腕と巨漢を活かし次々雷の槍を生み出しては投げつけて来る。
大盾で防ぐのは難しくないが。
進展がないね。
ならば前方に展開したまま……飛び込む!
「私は、みんなと生きるって決めたんだけれどカエリラス、キミたちは世界を危機に陥れようとしているし……みんな多かれ少なかれ迷惑を受けている。私もそうだ。だから私は、私と私達のためにキミたちを止める!」
「なんという大言! いっそ愉快だな恐ろしく臭いような台詞をそこまで真っ直ぐ放つとは、面白い気に入った。理想を抱いたまま死ぬがいい」
こちとら理想のひとつやふたつ言えるようにそして叶えられるようにならないとダメだからね!
カエリラスの方針とはまったく相容れない。
だから私が止める。実にシンプルなことだ。




