九百六十六生目 悪魔
カエリラスはこの城にいるものたちは壊滅的。
残るはほぼラキョウのみ。
そのラキョウは高い玉座から生者にあるまじき邪気を纏い私達を見下ろしていた。
「なっ……なんだ、その量の邪気。お前さっきあった時は感じなかったのに……お前、本当に生きているのか!?」
「愉快な発言だな。生きているのは明らかだろう? それともどこぞのババアが作ったできそこないとでも?」
「なっ! カムラさんのほうが遥かにお前より『生きて』いるよ!」
さすがに顔のモデル元とは言えいまのは侮蔑でしかない。
本人がいないのでかわりに怒る。
なによりこれは私の思いそのものだ。
「ハハハ! アンデッドに対して生きている、とな! 話を聞いた時は嘘かと思ったが、あのババアめ、本当に作っていたか……」
ラキョウが指を鳴らすとどこからともなくアンデッドたちが暗い闇の光からわいてきた。
今までのものとは雰囲気がまるで違う4体。
アンデッドなのに……悪魔の目!?
「な、なんだ!? どっちの存在なんだ!?」
「みんな、勇者の力を!」
イタ吉が驚いている間にグレンくんが全員に勇者の力を広げる。
勇者の力は私達を暖かく包み込み淡く光る。
アンデッドと悪魔の目の組み合わせでその存在たちはみな本物の『悪魔』じみた姿をしていた。
異常にか細くなのにグローブでもはいたかのような手とやたらヒールと高い靴のような足。
仮面をつけたかのような顔が泣いて笑っている1体。
ヤギのような頭部と水牛のような身体を持ち唸っている1体。
小さく2足で毛皮に覆われた姿は紫でそれなのにコウモリ翼が背から禍々しい雰囲気で生え長い尾の先は槍となっている1体。
そして全身鱗に覆われ2足で巨体を存分に揺らし狼のような頭部がこちらを見て唸る1体。
……"観察"!
[ロピエールLv.50 比較:少し強い 異常化攻撃:混乱 危険行動:パニック・ラッシュ]
[ロピエール 特殊なアンデッドであり悪魔の目を持つ存在。何よりも相手の錯乱を求めている]
[バファゴト Lv.50 比較:少し強い 異常化攻撃:防御能力低下 危険行動:蹂躪行軍]
[バファゴト 特殊なアンデッドで悪魔の目も持つ。生者を踏み潰すことが彼の至上だ]
[スピダル Lv.50 比較:少し強い 異常化行動:攻撃能力低下 危険行動:パワーオフレイン]
[スピダル 特殊なアンデッドで悪魔の目を同時に持つ。力が失われていく恐怖を特等席で見るのが何より好き]
[ホロウマン Lv.55 比較:強い 異常化攻撃:毒 危険行動:雷の槍]]
[ホロウマン 特殊なアンデッドで悪魔の目とともにある。雷で出来た槍で見るも無残なほど破壊するのが好き]
うっ……特殊ということはやはりラキョウお手製。
しかも悪魔の目前提のアンデッドか?
言ってしまえばまさにお手製の『悪魔』だな……
しかも強さが今の"進化"済みでガチガチに強化した私との比較が[少し強い]や[強い]である。
これはうっかりしたら全滅もありうる……
特に混乱はマズイ。治す手間の間に内紛しかねない。
「話しているばかりでは退屈だろう? ……やれ」
「「…………!!」」
アンデッドたちが吠えこちらに向かってくる!
私達も構え対立!
「みんな気をつけて、あいつらかなり強い!」
「ああ、ビリビリ伝わってくるぜ!」
「……そうだよな、ラスボスの前には四天王戦だよな」
グレンくんが何かしみじみ言っているがそれどころではない。
まず優先すべきは……
「みんな固まって! あのピエロみたいなのに集中放火で行くよ!」
「おっ、あっちだな!」
「了解!」
「俺から行く!」
ダカシが真っ先に突撃していく。
同時に相手もバファゴトが突進してくる!
同じように四肢もちの牛と獅子がぶつかり合う。
「ぐ、ぐむむ……!」
どちらのサイズも拮抗している。
大きめの身体持ち同士の戦いは任せよう。
「今のうちに!」
「うおおーっ!」
イタ吉たちと共にかけていく。
向こうも3者まとまって寄ってきた。
「まったくやれやれ、我々カエリラスの居城を土足で踏み荒らすとは、けして生きては返さんからな?」
「何がやれやれだ! ここは帝都城だろうが!」
ダカシが反論しつつバファゴトへ爪と蹄で鍔迫り合い。
こちらもひとかたまりで衝突し戦闘開始。
ロピエール……混乱持ちを最速で仕留める!
「ああ、そうかキサマらはこの場所がどういった場所かもわかっていないのだったな。ここはキサマらの知る世界などではない」
「うん? どういうこと……? いや、やっぱりこの世界は……元の帝都となにかがくっついているの?」
とりあえずと火魔法"フレイムボール"は奇妙な踊りで避けられてしまう。
追撃だ!




