表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
968/2401

九百六十四生目 無事

 悪魔の黒塊を跳ね返した。

 あっちこっちと跳ねて明らかにどんどん元気がなくなっていく。

 おもちゃのスライムみたいだ。


 最後の方にはもう床にへばりつき流れるようにアカネの方に流れ込む。

 はてさて……


「悪魔くん、わかってるよね?」


 別に必要のない言葉かもしれないけれど一応。

 少ししたらアカネの表情は穏やかになる。

 そして……すうすうと寝息をたてだした。


「よかった……」


 悪魔はなぜかしらないがこうやって憑依していれば莫大な力が使える。

 だがもう乗っ取りしようとはしないだろう。

 ダカシと似た状態だ。


 さて……彼女はアノニマルースに送ろうかな。

 その前に。

 この髪飾りを髪の毛にさして…と。


 これでよし。

 (くう)魔法"ファストトラベル"唱えておこう。







 自身の傷を手当しながら扉の向こう側へ。

 また廊下が続いているようだ。

 道中戦闘跡も見られメレンとイタ吉たちの戦いが繰り広げられたのだろう。


 いくつか部屋を抜け……おっと。

 そこにはたくさんの繋がれた機材。

 それだけなら珍しくないが大きな容器の中に浮かぶものがよろしくなかった。


 それは生き物。

 ニンゲンだったり魔物だったり獣だったり。

 そういう生きていたものたちがその中で浮かんでいた。


 ……そう。生きていた。

 そこに命は無かった。

 機械が繋がれた先にあったのはひとつのベッド。


 そこは空席だがまだあたたかみがある。


 やはりいたか……召喚獣バケーション。

 下階にあった異世界たちを生み出すために使われていたのだろう。

 ……召喚獣の神って頼まれればなんでもしてしまうのだろうか。


 近くにゴミ置き場も見つけた。

 彼らカエリラスにとってのゴミ。

 命をしぼりきった残滓。


 やはりイタ吉たちにメレンを追わせて正解だった。



さらに上階へ。

 すぐ近くの大扉部屋へ入ればその場へとたどり着く。


 さっきと比較しても同じくらい広い大部屋。

 部屋の形は横にまるく広い。

 天井はさっきと同じくらい高いから階層を考えるとおそらくここも空間を魔法でいじっている。


 だがその大きな部屋はあまりに巨大な機材で埋め尽くされていた。

 その機材たちは部屋や他の機材と一体化している。

 それはまるで大きな胴とそこから生える腕に見え……


 腕の先は砲台のようになり頭の部分は空席となっていた。

 そう……いうなればこれは…、

 前世の知識で言えば……


 ロボだこれ!?

 なんでこんな……いや私が思い浮かぶメカよりなんだか肉々しいが。

 多分メレンの専門が生物方面だからなのだろうが。


 そのロボもいまやあちこちで火花を上げている。

 腕は力なく垂れあとメレンのメカとメレン自体も転がっている。


 対峙しているのは……もちろんイタ吉たちだ。

 互いにボロボロだが全身焦げているメレンが1番重傷かな。

 まあ命に別状はないだろう。


「ど、どうじて……ワタシの自信作が……」

「自分の鍛え方が足りなかったな!」


 小イタ吉が跳んでからのストンピング。


「ぐえっ!?」


 それで頭を軽く蹴飛ばされメレンはおとなしくなった。

 "観察"……気絶確認。


「みんな! そっちも終わったみたいだね!」

「おっ、ローズ!」

「エヘへ、こっちもしっかり終わったところだよ!」

「ローズ! アカネは! アカネはどうなった!」


 ダカシに思いっきり詰められる。

 まあそりゃそうなるよね。

 妹の相手を本当はしたかっただろうし。


 笑顔を見せうなずく。

 ダカシは安心したのか身体から力が抜けひざから崩れた。


「よかった……良かった……!」

「おいおいしっかりしてくれよ? これからが本番なんだからよ!」

「イタ吉、それは……」


 イタ吉がトントンとダカシを肉球で叩く。

 グレンくんが止めるが……

 気遣いに気づいて中途半端に。


 それにダカシが力強く立ち上がったのもあった。


「……ああ、そうだ。俺はアイツと決着つけなくちゃならない。親や村のみんなを探すのはそれからだ」


 ダカシもおそらくあの部屋は見てきただろう。

 命を様々なことに浪費した跡。

 もはや遺体さえあるのかわからない。


 アンデッドたちの材料もそうだ。

 ……それでもきっと探すと彼は言うのだろう。

 弔うために。前へ進むために。


 だから今から最後の枷を外しに行く。

 相手はきっとすぐ近く――


『やあやあ、ハハハ、また派手にやってくれたね』

「んな!? どこだ!?」


 イタ吉とともにみんな周りを見渡す。

 音の方は……あっちか。

 吹出口みたいなものがある。あれは音を通すやつか。


『遠くから失礼するよ。そろそろ面倒なことになりそうだったんでね、君たちが処理してくれて、助かったよ』

「この情勢で仲間割れたあいいご身分だな! もうお前だけだ!」


 イタ吉が唸った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ