九百六十三生目 隔離
アカネの身体はアカネ自身の意識がないまま悪魔の目によってメチャクチャな飛行をしだした!
背中に竜の翼……懐かしの形態だ。
ここで絶対終わらせる!
動きは無茶苦茶で追いかけるのも困難。
あんな動きを意識無しでやったら……
アカネに負担がかかるじゃないか!
マズイなアカネが悪魔の目なしでちゃんと生き残れるか……
早く止めないと。"時眼"でこちらを加速して……
いやそうだ! 明らかに弱っている今ならば!
唱えている魔法をひとつ変更!
それまでの時間は稼ぐ!
"時眼"発動! 対象は自身で加速!
本当に動きがめちゃくちゃでランダムなせいで動きが読めない。
ただそれでも……
今の状態ならば接近して襲いかかれる!
「そら! やっ! そこだっ!!」
メチャクチャとは言っても私から逃れる挙動。
相手をテンポ良く追い詰めていく。
とにかく軌道を単純化させるように追い詰めていく。
捕まえることはできなくともこのぐらいなら!
線を単純化させ……
とにかく時間を稼ぎ……
こう! 聖魔法"ソウルシャッカル"!
魂を縛る光の鎖が瞬間的にアカネへ伸びる!
この魔法見て避けれるものじゃないからね。
悪魔の目たち……アカネがとまっている。
今度こそ……"セパレーション"をやりとげる!
そして……"ピースマインド"!
彼女の精神を癒やす!
聖魔法の治療は痛いけど効果的だ!
そしてさらに! 空魔法"ストレージ"!
ここで亜空間から取り出すものはひとつ。
髪飾りだ!
よしなんとかここまで間に合った。
"ソウルシャッカル"は数秒たたず消える。
だがもう捕まえたぞ! "時眼"解除!
掴んで離さない!
「うっ! わっ! おっ! 止まれーッ!!」
めちゃくちゃ振り回される……!
身体を揺さぶられ急加速急発進が自分のタイミングではないものだから酔う……!
けれど!
飛行を逆に制御してやる!
強くつよく前へ押し出す。
揺さぶられてあっちこっち飛んでもこれなら方向に左右されない!
悪魔の目が"セパレーション"で苦しむ。
"ピースマインド"で悪魔の目に白い顔が浮かび上がりこちらをみつめてくる。
ダカシの時と似ている。原型がかなり失われているが……アカネの顔だ!
「アカネ……! ぐっ!?」
ダメだ髪飾り見せるどころじゃなく暴れる!
とにかくこのまま飛行し続け下へ前へ押し込む。
それで止めるぞ!
「ん、ぐ、お、お、お、オーッ!!」
ものすごい揺さぶられ床や壁に叩きつけられる。
それでもこちらが全力で押し込み……
ついにはアカネの身体が地面をえぐる。
激しく床が壊れてゆきブレーキがかかっていく。
床がめくり上がり壁となることで止まった。
ここで絶対逃さない!
素早くイバラを伸ばし"縛り付け"!
グルっと巻いて拘束。
腕でも追加のイバラでも全身を抑える。
かなり激しい抵抗を感じるものの化物と化していたときよりだいぶ楽。
さあ今度こそ髪飾りを!
"千の茨"でとげなし細イバラで掴んだ髪飾り魂の顔に突きつける。
「アカネ! 身体がどれだけ変わっても、魂ならわかっているはずだ! それがこの髪飾りだったんでしょう?」
この髪飾りはアカネ自体が大事にしまっていたものだ。
例え誰から貰ったのかわからなくなっても……
これは彼女を現世に繋ぎ止めていた唯一のもの。
「キミが守ろうとしたものは、今もキミを守ろうとしていてくれている! 生きて、その相手に会うんだ! もう、がんばる必要はないよ!」
髪飾りを悪魔の目に押し付けるように訴えかける。
"セパレーション"という物理的かつ魔法的解放も忘れていない。
今やっていることは"ピースマインド"と共にアカネの意識を戻すことだ。
それにより悪魔の目は白く濁り……
やがて黒の部分が外側に押し出せれるように変化していく。
さああとひと押し。
「身体を操る悪魔を……追い出すんだ!!」
アカネの身体が震えだす。
さきほどまでの操られた振り回しではなく身の奥底から来る自発的な震え。
筋肉がゆらぎ動く。
そしてついに顔が……動いた。
苦しげにしながらも確かな意思を感じる。
それと同時に悪魔の目が閉じ……消えた!
黒い塊が飛び出し一瞬何かヒト型のフォルムをとる。
だがすぐにその形は崩れ……私に飛んできた!
「知ってるよ!」
神の力バリア!
マントの色がさらに少しだけ減ると共に光のバリアがはられ黒い物はあっさり跳ね返される。
2度目だからね。
ちなみに今のもいわゆる"宣言"の無効化と要領は同じ。
出来るかなと思って出来るみたいだったのでやれた。
悪魔の因子……ほぼ姿が取れたということはよほど多く使っていたのか。




