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九百五十六生目 変貌

「私がここを引き受けるから、みんなは追って!」


 アカネは宙に浮き出しこちらを虚空に引きずり込むような濁った目で見てきている。

 静かに威圧感が増し敵対行動の準備が行われている。

 ダカシに妹の変貌見届けさせるのはあまりに酷で……同時にまたあの博士を逃がすのは危険。


 遠くからこの地の様子を見る方法はいくつか心当たりがあるしメレンができないという保証はない。

 むしろ安全圏まで脱出される可能性のほうが高い。

 幸いまだ扉は半開き。


「だ、だけど……」


 グレンくんが私とアカネ交互に見る。

 色々と含みがあるが……


「ここでアイツを逃したら、世界中にさっき会った化物が生まれちゃう! それだけは阻止しないと!」

「うっ、わ、わかった! せめて勇者の力を!」

「ああ。アイツとラキョウは死んでも止める。ローズ、髪飾りを! アカネを……アカネに戻してやってくれ!」

「……うん!」


 (くう)魔法"ストレージ"からひとつの髪飾りを出す。

 これはアカネが前に落としたアカネがダカシから貰った平和な時代の品。

 折れてもう髪にはさせなかったものだが……職人に頼んで蘇らせてもらっていた。


 シンプルな花をかたどった布のついたかわいらしいもの。

 どうみても子ども用でおもちゃみたいな印象もある。

 それでもこれこそが唯一彼女を引き戻せる手がかり。


 グレンくんが大きく腕を振るうと暖かく力強い光が私達を包む。

 対悪魔用の勇者の加護だ。

 この状態ならば悪魔の力を持つ者に立ち向かう勇気と悪魔特攻の力が手に入る。


 私は少し浮きアカネと目線を合わせる。

 そして魔法を4つ分唱えつつ髪飾りを掲げた。


「さあ、こっちだ!」

「……グ、ゴ」


 反応は劇的だった。

 アカネは私の方だけを見据え目を見開く。

 そして。


「ゴアアアアアアァァァ!!!」


 ニンゲンや猿のそれではない。

 獣の……怪獣の吠え声。

 とどろき空気が震え轟く。


「うくッ……!」

「おいローズ! まけんなよ!」

「もちろん、イタ吉たちも!」


 私の方ばかり見ている間に3者とも扉の向こう側へと消える。

 よし……やるか。

 早速彼女はその姿を変貌させてゆく……


[実験体O-184 Lv.66 比較:不明 異常攻撃:不明 驚異行動:不明]

[実験体O-184 人間の作り出した人間。度重なる改造で非常に思考力が落ちている様子。もはや人間ではない]


 うわなんだこの"観察"結果。

 これは……あれか。

 私がスキルで見てわかるようなほどまっとうな相手ではないということか。


 魂をもてあそび縛り付け邪気をまとわせる邪気アンデッド。

 肉体と心をもてあそび縛り付け狂気をまとわせる改造体。

 どちらも方向性が違うだけでカエリラスのおぞましさが現れている……


 すっかりとアカネは原型を失いニンゲンの大きさすら失う。

 全身が膨れ上がって巨大化したあとそこからさらに大量の触手が生え。

 複雑に肉の部位が増えていく。


 生えるとは言ってもまるで肉の中から肉を突き破るように。

 そのたびに血の体液と鉄さびじみたニオイを撒き散らしながら。

 うっぷ……


 生えた腕が体液を払うと毛が生え揃い筋肉がかわき固まる。

 虎の腕。さらに竜の足。そして熊の腕。

 盾のような恐竜の頭。狼のごとく牙の生え揃った口。青白い鱗の生えた良くわからない蹄も。

 左右無駄に対照的の3本ずつ生え。

 背中から大きな鳥の翼と皮膜の張った翼が片翼ずつ。

 生えてはいたがさっきから飛んでいたし浮遊に対し翼は()ぐのみ。


 揃ったときには原型などはなかった。

 中央にわずか彼女だった顔があり……

 そこが瞼のようにさけて開く。


 悪魔の目玉は今まで見た中で最大限に膨らんでいた……!

 そして身体はただ不安定に丸くなったわけではなかった。

 ……周囲から肉の花弁が中央に向けてしまうように閉じる。


 肉と言っても見た目はまるで植物のそれ。

 外側からぐっと生えてきたのだ。

 残酷にも美しい赤い花がそこを中心にして……咲き誇った。


 こ……こんなの事前情報役にたつのか!?

 腕はしっかり花の外側に通しているし……

 前の戦いの時情報を得てたのに……


 前の戦闘時切り落とした翼の片側は無事帝国の機関に届けられた。

 ただ翼はどんどん原型を無くし……

 最後はスライムのような肉塊になったらしい。


 調べた所変質した肉体はかなりエネルギーを消費していた。

 さらに魔力だけではなく何か……おそらく化学的な仕込みが多数見られたと。

 人類の力でスキルをニンゲンに後から付け足したというものだ。


 そして大事な事は変質したとしても結局は元の生物に由来するということ。

 アカネは見た目からして元は1番基礎のニンゲン種未進化なのだろう。

 水が多くて感電するし凍らされれば痛打となる。


 そしてエネルギー源……悪魔の目を潰せばじきに戻る!

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