九百五十一生目 調整
イタ吉がピッキングで扉を開けた。
「何してんだ? さっさと行くぞ」
「う、うん」
「あんな技術が……」
「イタ吉……器用だね……」
イタ吉を先頭に部屋の中へと進んでいく。
なんというか普段の戦闘スタイルからして器用なのでピッキングも覚えてさえいればやるだろうけれど。
そういえ機会は今までなかったし全然知らなかった。
「なんというかお前ら……俺を全て力で解決するなにかだと思っていなかったか?」
「「い、いやいや」」
「まあ、とにかく行くぞ」
なんというか……イタ吉はどう見てもイタチだしなあ。
彼も私の知らないところで大きな成長をしているということか。
1つ目の扉向こうは特に何もなかった。
正確にはたくさん機材が置いてありパイプも繋がっている。
パイプ自身が強い結界を持ち破壊は難しそうだ。
そのまま2つめの部屋へ。
ここにあるのは……
「うーん? なんだこりゃ。前にもまして分からないもんばっかだな」
「すごい発展した技術……」
大量のスイッチや壁に設置されている調整つまみ。
ひとつひとつ何らかの意味をもたせているらしく使い込まれ文字も多く書き込んである。
そしてさらに奥への扉がありパイプはその先へ続いている……
だが扉は見るだけで異様さを放っていた。
今までの変なものだらけな空間だからこそここにきて頑強な鉄扉。
いきなり無機質すぎるものにいやがおうにも注意を引く。
「これ、何をどうやればいいとか誰かわかるか?」
「「…………」」
ダカシの問いに流れたのは沈黙。
当たり前だがこんなのを目にしてパッと理解できるような知能はない。
私が過去の知識を引っ張り出せても応用が効かないせいでなんの意味もない。
「……仕方ない、無視して進むか。なんか嫌な予感はするんだがな」
「だね。あの鉄扉――」
「……ん? んん!? げっ、ここも例の結界が!」
鉄扉の奥……と言おうとしてイタ吉がそれ以上の問題を見つけた。
イタ吉の腕は弾かれ鉄扉にふれることすらかなわない。
ううーん……あのパイプをどうにかしなきゃいけないのに。
「うーん、扉、そして壁一面の機械……機械には結界ないから、ここを壊して壁貫くって方法も……」
「どんなパワープレイなんだよそれ……勇者ってそんな感じなのか?」
「仕方ない、それをやると何か不具合で全部閉められたりしそうだから、見つつ操作してみよう」
グレンくんの提案は最終手段。
壁を壊す労力や行動力含めてそういうのは後にとっておきたい。
この黒い城の壁面すごく硬いんだよね……
操作パネルをみてみれば最低限の説明は書いてある。
まあ[アルファ-効力剤]だの[ベータ-変化剤]だの大半はこの意味がわからないとだが……
だがもっと単純なスイッチがある。
たくさんある中に紛れた[扉]と書かれたスイッチだ。
おそらくこれを切り替えれば……と思うがスイッチは動かせない。
隣にわざわざ注意書きもある。
「これは……?」
「えー、安全な状況確保は終わったか、やらなければ開かせない! か……」
ダカシやイタ吉が読みグレンくんも他のところを探している。
注意書きの下にさらに後から書き足したようなあと。
かすれているが……ぎりぎり周りから推測して読める部分だけ。
[α100 β500 θ?00 ロックを忘れない]
もちろんアルファだのベータだのはこの世界基準の文字を直しただけだ。
にしても肝心な数値が読めないや……
他にはどうなんだろう……
「あ、こっちにも何か記述が……やってみるね!」
「うん」
グレンくんは別の壁の機械で記述を見つけたらしい。
ダカシももう片方の機械へ向かう。
「帝国語……じゃないな……帝国語にすら慣れてないのに……まあこの言葉も輪が翻訳してくれるか……」
確かにこの言語は帝国語ではないか。
前あの博士を"観察"したから私はバッチリだが。
とりあえずこちらも理解を進めねば。
「うーん……扉は既定値じゃないと動かない……と」
「うーん? これ適当に動かせばなんとかならないか?」
「あ、それこっちに書いてあるよ。変な値でやると暴走して危ないって」
「暴走……何が? 機械がか?」
ダカシが頭を悩ませているとグレンくんからフォロー。
イタ吉が腕を組んでつぶやいてみんな頭を悩ます。
私としては……この扉の向こう側の存在が気になる。
そこから少しして。
「よし、やってみるぞ!」
ダカシもだいたい読みおわりそれぞれの操作を行っていく。
わかったのは順番とタイミングそれに量があるということ。
大雑把にかかれている目盛りで調整しなくてはならない……!
「よーし、俺がタイミング指示するぞ! 3、2、1!」
「「それ!」」




