九百四十九生目 追走
ウロスさんが叫ぶと同時に何かをかかげ光り輝く。
暖かな光がウロスさん中心に広がってゆき……
いきなりアンデッドたちの動きがギクシャクとしだした!
まるで油の切れた機械のように。
1つ動くのにも苦労するように。
その動きは緩慢で先程までの優秀さはどこにもなく……
「それっ! あれ? 楽に倒せた……」
グレンくんのひとなぎでアンデッドたちがまとめて砕けていく。
明らかにもろくなっている。
これはチャンス!
「新型お祓い炎石、フルパワーー!! じゃん!!」
「なん……だと!? 今の魔力感覚、まさか本物、だと……!?」
「だっから言ったんじゃん、弟子! いや……カエリラスの首魁、ラキョウ!!」
「貴様、その名を……! ウロスゥ……!!」
名前……! 知らなかったんじゃなかったの!?
ここにウロスさんが現れたことじたいが驚きだけれども。
彼……ラキョウは明確に敵意をむき出しにし言葉に怒りをにじませる。
「名前、ご存じだったのですか?」
「いやあ、むかーしでろでろになるまで一緒に飲んでた時に、ウッカリ漏らしたのをやっと思い出せたんじゃん」
「そんなことが……」
おみとおし眼鏡をかけて"観察"してもわかっただろうが今はそんなスキがないし。
なんだか名前がわかるだけでどうにかできそうな気がするから不思議なものだ。
「ウロス!! なぜ貴様がババアからチビになったかは知らないが……好きにはさせん……!」
ラキョウはラキョウで何かを掲げると今度は先程とは違って光を奪うかのような黒が広がり部屋の中でウロスさんの光とぶつかり合う。
力比べだ……!
「消えろウロス! 貴様の時代は終わった!」
「そっちも何があったかしらないけれど、魔王復活だの、邪気アンデッドだの、何をやっているじゃん! ワタシの教えを、なぜ破ったじゃん! どうして、いきなりいなくなったじゃん!!」
場の制圧がどちらになるかのぶつかり合い。
光が入り乱れ砕けていく。
どちらにせよアンデッドたちは錯乱中だ。
私はアンデッドをかき分けダカシの近くへと飛ぶ。
「ババア、貴様は昔からそうだ! 素晴らしい力は使ってこそだろう! 魔王を蘇らせるのもそうだ、眠っている力は全て利用し尽くして……目的を果たす! それの何が悪い!!」
ラキョウは力強く拳を顔の高さまで上げてから振り払う。
さすがの師匠対決にラキョウも余裕がないらしいが……
カエリラスの目標は魔王復活そのものではなかったのか!?
「ラキョウ! 他所様に、迷惑をかけるなってことじゃーん!」
「貴様が迷惑だ、去れ! ウロス!!」
互いに光の波状が強まり……
暗い色が地を駆け抜ける。
「ギャッ!?」
ウロスさんが弾かれ転がる……が。
誰かによって受け止められる。
いや……誰かというと彼らしかいない。
後方部隊のメンバーだ!
「こっちは大丈夫だよ!」
「みんながウロスさんをここに!?」
「いや、このおチビさんと会ったのは俺たちもさっきだ」
「味方なのはわかっています」
「というわけで、こっちは任せろ!」
オウカにダンダラそれにゴウとダン。
彼らなら安心だが……アンデッドたちの動きが元に戻りだしている。
急いでこちらの……作業を……終わった!
私がこっそり結界に触りダカシが荒らして弱まっていたポイントを探って。
そして今結界を解除!
ダカシが急いで駆け出す。
「ラキョウゥーー!!」
「ふん、まあいい、十分だろう。ではな、ババア。二度と会うこともないだろう」
光とともにラキョウの姿は消える。
ダカシの剛爪は柵を叩き強く地団駄を踏んだ。
「クソッ!! 逃げるなー!!」
「みんな、追いかけるじゃん! アンデッドたちはなんとかしておくじゃん!」
「わ、わかった!」
「無理はしないで!」
「死ぬなよ!」
私達は口々にウロスさんたちに話してからアンデッドたちが復活しきるまえに蹴散らしつつ階段へ移動。
オウカが金属製の柵を切り裂きダンが爆発的な音をたてながら突進して破壊。
大広間に入ってきた。
「私達も!」
「登ってくるな!」
魔法でワープより切ったほうが早い!
ゼロエネミー長剣モードへ!
そのまま……たたっ斬る!
長剣ゼロエネミーによりただの金属柵はアッサリ切り開かれる。
ダカシが勢いよく突撃し吹き飛ばした!
アンデッドたちがガンガン詰めてきてグレンくんとイタ吉が切り返して……
「「そらっ!」」
正面の巨腹ゾンビをイタ吉ズで蹴り飛ばす。
グラついたそのゾンビは階段を踏み外しそのまま転がり落ちる。
もちろん他の詰め寄ったアンデッドごと。
飛来してくるゴースト系なんかはいるが今のうちだ!
全員で階段を駆け登った。




