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九百四十八生目 家族

 柵の向こうから聞き覚えのある笑い声。

 多くの情報をばらまきながらまだ名前1つわからない男。

 この事件をおこしたカエリラスメンバーのおそらく中枢。


 広いホールに響くようにかおそらく拡声系の魔法を使っている。

 アンデッドたち結構騒がしいし戦闘音も激しいからね。


「お前は……! 妹を、父母を! 返せええええーっ!!」


 ダカシがアンデッドたちをかき分け乗り越え階段の柵に近づく。

 しかしその直前で見えない壁にぶつかり顔をぶつけ(エフェクト)が弾ける。

 あそこか……結界の位置。


「ははは、済まないね、誰だったかな? 恨みをかう覚えのある相手なら…、数えられないほどいるもので」

「お前ぇーー!!」

「ダカシ、横に跳んで!」


 私の声にふと我にかえったのかダカシは横へとジャンプ。

 そこにゾンビの大きな肉切り包丁が叩き降ろされた。

 アンデッドたちはまだまだいる。


 柵の向こう側に見せるその顔はカムラさんの元となったあの顔。

 だが温和そうに目を閉じているカムラさんと違い見開かれた目からギラつく悪意が隠す気もない。

 知っている顔なのに何度見てもまるで知らない顔だ。


「この、邪魔をするな!」

「愉快、愉快だ……そうだ。妹、といったな。確かいたな、兄や親のことばかり話していたやつが」

「……アカネ、か!?」

「おお、そうだ。聞いて合点した。名はアカネだったな」


 彼はおどけるでもなく単にたんたんとその言葉を話しているように感じれた。

 だからこそ……ダカシの感情をさかなでするのだろうが。

 こっちから向こうは特別でも向こうからこちらはあまりにありふれた1つなのだ。


「アカネを……アカネはなんであんなふうになっているんだ! っち、邪魔だ!」


 ダカシにアンデッドがまとわりついている。

 私も援護したいが……あ! グレンくんが向かっている!

 大丈夫かな。


「その子ならけなげでなぁ……自分が頑張るからと、自身を捧げてくれたんだよ。博士がアレコレしていたが、アレは何とも不快で冒涜的ななものでね、私も詳しくは知らないんだが……レポートでは、かなり面白いことにはなっていそうだったね。例えば……記憶や感情の操作、なんてね」

「あ、がああぁぁっ!!」


 ダカシはアンデッドを振り払い再度衝突。

 当然結界で強く弾かれ飛ばされる。


「ま、博士にとってそれらの作用は副作用でしかなかったのだろう。今、最終調整を行っているところらしい。もう少しここで戯れていきたまえ」

「お前、一体、命を、妹をなんだと……!」

「命、ねえ……どれだけ取り繕ったところで、君たちとはわかり会えない部分だ。私の大事なアンデッドたちを蹴散らす君たちとはね」

「けっ、大事ならしまっておけってんだ!」

「何、自ら戦線に立ち、君たちの仲間も戦線に立たせている時点で、それは大事な|いのち

《・・・》、とやらではなく、結局その他諸々ではないのかね?」

「な、なんだと……!」


 イタ吉が見かねて横から口をだしたがあっさりひっくり返されてしまった。

 ついでにアンデッドたちにも寄られひっくり返されそうになっている。

 鞭剣ゼロエネミーでふっとばし!


 ああいうタイプは口喧嘩に乗るだけ損だ。

 倫理観が違う。

 実に不思議そうに言っているところへなにか言い返したくなる。


 ここに正義や悪だなんて説く意味をなさない。

 正確には……


「イタ吉、これはどちらが生き残れるかの戦いなんだ。だから、大事なのならば戦うしかないんだ」

「ローズ……!」

「ほう、少しはまだ元気があるようだ。なあに、まだまだ時間はたっぷりある、せいぜいあがいてくれたまえよ、ははは」

 

 穴からはアンデッドがどんどんやってくる。

 彼特製の邪気アンデッドたち……

 あの結界を解かねば!


「調子に乗るのはそこまでじゃん!」


 ……えっ!?

 今の声は!? 振り返り入口側の柵向こうを見る。


「ウロスさん!」

「ああ! あのユウレンとともにいる!」

「あ、聞いたことはある……!」

「やっと来れたじゃん」


 イタ吉やグレンくんもわかったらしい。

 ダカシはそれでどころではなく結界に攻撃しているが……

 ユウレンの師であり今階段の上から話す彼の師でもある。


「何……? あのババアが幼児……? ふざけていのか? 年齢すら一致していない偽物とは珍しいな」

「ふふーん、言ってられるのも今のうちじゃん!」


 ウロスという名を聞いて初めてその顔が露骨に嫌がる。

 だが遠目から見れば単なるちんちくりんな子が叫んでいるだけだしな……

 けれど彼女は本物だ。


「ふむ、まあなぜチビがこんなところに紛れ込んでいるか、それを含めどうでもいい。アンデッドたち、殺せ」

「させないじゃん!!」


 ウロスさんが叫んで何かを掲げた!

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