九百四十生目 狙撃
隊長さんが話したとおり窓から光の反射が見える。
おそらくは遠隔狙撃攻撃用スコープ……
ならば観測者のはず。
だから射撃主はその隣……!
「来る!」
開かれた窓の大きな杖から光線が放たれる!
私達の場所まで一直線!
速いッ!
「「うわっ!?」」
凄まじい爆風で押される。
今のは誰に……いや剣ゼロエネミーに当たったのか!
残念! 剣ゼロエネミーはその程度でどうにかなるほどヤワではないのだ!
しかしいまのでそれぞれゼロエネミーから距離が……
これはこれでマズイ!
向こうは向こうで壊れなかったのを見て狙いを変える様子。
「ギャッ!?」
「グワッ!」
今のはグレンくんと隊長さんの声!
声の方を見ればふたりとも感電して吹き飛んでいた。
ゼロエネミーで守りきれる範囲外。
ならば急いでゼロエネミーを二人の近くへ!
そして大盾化!
同時にまた光線が走り大盾ゼロエネミーが弾く。
感電者なんて格好の的だもんなあ……!
反撃だ! 場の特性を利用して……
電気魔法!
[エレキシュート ジグザグな軌道で放たれる雷撃の魔法弾丸。先端の電力が高い]
遠くまで飛ぶこれを放つ!
電気はキレイにジグザグにの軌道を描き……
杖……ではなく観測者の方に飛び込んだ!
そらそうだよね! 射撃している方は避けられやすそうな上杖持ちだものね!
カウンターマジック系統しかけられたら目も当てられないし!
おそらく魔法耐性も高い。
建物から短い悲鳴が上がる、
これで短時間感電していてくれるだろう。
さっきからあちこち電流が飛んできて鎧を伝い危険なので私もゼロエネミーの近くへ。
「ふたりとも大丈夫!? 今治すね!」
光魔法"リフレッシュ"!
それを2つぶん唱える。
また砲撃が来たがさっきよりだいぶ狙いが甘く私を狙ったらしいが遠くで着弾。
爆風も少し来る程度だ。
牽制と威嚇のためだろう。
ただ連射は利かなそうだし怖くない。
治療に専念し……イタ吉はどこへ?
少し見回したら見つけた。
煙に紛れ岩陰を飛び移り着々と接近。
小さいのも連れてそのままスルリと建物内へ。
あっちはほうっといて良さそう。
ならばこちらは陽動か。
とりあえず回復!
「か、体が動く……! ありがとう……!」
「ううむ、なんともやりづらい土地……かたじけない」
「このまま回復を続けるから少し待機してて! ッ!」
また杖からの魔法撃。
盾ゼロエネミーの端にあたり爆風が体を圧する。
「これでも当たれッ!」
火魔法"フレイムバード"!
距離が伸びれば伸びるほど酸素を取り込み巨大化する!
数百mは離れているここからなら"フレイムバード"の効果は最大化する。
巨大な火の鳥が敵を飲み込まんと襲いかかる……!
もちろん"二重詠唱"でふたつだ!
「あっ」
誰が発した言葉が。
それが分かる前に"フレイムバード"たちの体に穴が開く。
杖から水の泡が放たれ弾けるたびに"フレイムバード"の体が砕ける。
ううむ……やはり対策されるか……!
けれど!
「よし……剣を握れる! 俺たちもそろそろ!」
「それ、回復! ……多分そろそろ動きがあるはず」
「そう言えば、イタ吉殿は……おや?」
建物内がいきなり騒がしくなり爆発のような音も。
さらに杖持ちが窓から気配が消えた!
「イタ吉がやってくれたみたい! 行こう」
「承知した」「うん!」
私は急いで向かう。
盾ゼロエネミーはふたりを守らせておこう。
私は低空を一気に駆け抜けた!
室内はすでに大騒ぎ。
小イタ吉たちが部屋の中をかき乱していた。
「そっちだ! うわっ!」
「このっ! あれ?」
「お前味方……ギャッ!?」
小イタ吉が彼らの攻撃を縫うように避けその先のカエリラス兵に攻撃を押し付けていた。
弾丸はフレンドリーファイアし剣は味方の背中を斬りつける。
凄まじい光景だ……
「ローズ! 来たか! 今上がなかなかヤバいからそっちいってくれ!」
「わ、わかった……!」
通りすがりにイバラで殴りつけつつ階段をのぼる。
私は普通に狙われるからね……
階段前に構えていた獣カエリラス兵を勢いを利用しうしろへぶんなげそのまま一気に駆け上がる。
2階は……なんだこれ!?
あっそうか。
床から大量の刃がでているがこれはイタ吉の攻撃だったはず。
刃が重なりあい斬り合う音が響いている。
耳が傾く方目線を向ければイタ吉とカエリラス兵の姿。
互いに斬り合っているが……もうひとり誰かがいる。
「フフフ……なかなか余裕を奪ってくれるじゃない。どこまで続くのかしら?」
美しい黒髪と山羊のツノ。
光で出来た体はニンゲンに似ているが見たことのないピッタリとした素材。
眼鏡の奥に覗く山羊と同じ水平な瞳孔。
召喚獣ラヴだ……!




