九百三十六生目 弱点
上の階への階段を見つけのぼりアンデッドたちを蹴散らしていく。
「なあ! またこの階で別世界への入り口を探すのか!?」
「ううん、少なくともこの階じゃない」「む、何か情報が得られましたかな」
イタ吉の言う通りこの階にもおそらく別世界への入り口がありその先に壁がある。
だけれども2回のハッキングで見つけたことがある。
「全てを当たっていたらおそらく日が暮れても探索しなくちゃいけない……けれど。どうやらあの2つに連なるウィークポイントがあるみたいなんだ。マーキングしておいたから、近づけば私はわかるはず。そこを崩せば魔術の機能が停止するね」
「ほーん」
「わかった! じゃあそこまで行こう! やあっ!」
グレンくんが剣を振れば見えない刃でアンデッドたちが斬り裂かれる。
アンデッドたちの感知すらもくぐりぬけるのか……
まさに神の剣。
魔術は全体としてはとても大規模。
だがわざわざポイントをわけてあるのは規模が大きい分1つでは支えきれなかったということ。
全てを止める必要はない。
ただ他ではかえが利かなくなった部分を狙って止める。
どんな複雑な機械もパーツ1つ無くすだけで壊れるようなものだ。
向こうも手はうってあったが特定した今コチラのほうが有利。
さあ登るぞ!
撃破に階踏破そして上へ。
休憩もするがたまに聞くと教えてもらえる外の戦況はあまりよろしくない。
どんどんアンデッドが強くなっているらしい……
とにかく私達は行動をくりかえしつつ城を制覇していく。
行動力不足はみんな起こるから薬の大盤振る舞い!
あとで経費で帝国奪還軍につけますね!
それはともかくおそらく城内8階。
おそらくというは帝国城と黒の城がくっついているせいで高さすら違うところがあるため。
あと帝国城は頂上付近。黒の割合がかなりを締めていた。
「隊長さん、大丈夫ですか? さすがにもう……」
「むう……やはり、若いのに体力が勝てぬ……」
「いや全身金属鎧で常に双剣を振るっている時点でかなりのものですよ!?」
はっきり言って隊長さんはハイレベルさを増していく戦いについてこれなくなっていた。
ただそれでも薬で治し私の魔法で強化してなんとか戦ってきたが……
「誰か、帝国側の交代人員なんかはいねーのか?」
「……そういうものは想定されておらぬ」
「使い潰すつもりなのかな……」
「私は、国の思惑など計り知れぬ……だが、任された仕事をこなせぬは、兵の恥。たとえそれが、その場での命令に背くものでも」
「……ムリはしないでくださいね」
このニンゲン……苦労人だな。
最悪アノニマルースで休んでもらおう。
それにイタ吉も……
あまり表に出さないが長い付き合い云々以前に直接スキルで見える私にはわかる。
結構なお疲れ具合。
グレンくんのような勇者の剣もなく私のようなゼロエネミーもないしなあ。
まああっちはまだやる気十分。
ほうっといてもダメになったら言うだろうし。
それにしても……
「多分この階にある異世界への移動装置が、目的の場所だよ」
「なるほど……やっと壊せるってことだな!」
「早くやらねば」
「助けに行こう!」
アンデッドたちもこの高い階層まで来ると本気度が違う。
もはや単なる歩くアンデッドなど配置されていない。
みな段階の違う能力持ちたちだけだ。
アンデッドはたとえ強くても思考能力があるわけではない。
むしろ暴れたがりほど思考能力は薄い。
それでもここの高レベルアンデッドたちは意思が見受けられた。
単に歩むのではなく指示を聞き話せなくとも考えて索敵。
そして私達と接敵すれば即仲間を呼び出す。
機械的ではなく魔獣的思考の再現がされていた。
おそらくはそれで力と賢さのバランスを取れているのだろう。
そのかわり感情も生存意思もない。
誰かと会話する力もなく純粋な殺意により構成されていた。
私も魔物の獣だから魔獣的思考というのはもののたとえだけれどね。
殺意と血に飢えた邪悪なる方の獣だ。
「グレンくん!」
「うん!」
「「……!」」
廊下にいるアンデッドたちはみな不気味な唸り声を上げながら突っ込んでくる。
いま目の前にいるのは鎌を持ったゴースト2体にサメに手足あるようなゾンビ3体。
それと指示スケルトンにリボルバーを持ったスラリとしたスケルトン。
みな動きが機敏でアンデッド特有の意思の薄いフラフラとした足取りではない。
しっかり武器を構えおぞましく機敏な動きで襲いかかってくる!
私とグレンくんは前衛に立ち連続で刃を振り込む!
私は念じているだけだが!
止まらぬ刃と見えない剣で鎌ゴーストもサメも次々切り裂き奥へと押し込む!




