表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/2401

八十九生目 大竜

 それにしてもこのお掃除ロボも便利だ。

 そこそこ行動力を食われるけど確かに吸い尽くされるほどじゃない。


「ほう、意外と持つな。 今までの奴らならデータ上すでにくたばっているが……」

「ちょっと!?」


 物騒な事を言っている九尾のおじいちゃんをよそにどんどんと片付けて行き、やっと5つの部屋を片付けた。


「さ、次はこっちじゃ。どうせまだ平気なんじゃろ? そこそこ強そうじゃからな」

「限度はありますよ……」


 今度は山のように書類が積まれた部屋たち。

 発明品の次は発明するための理論と設計部分か……


「これゴミですかね?」

「ゴミじゃないわ! ワシの発明の元じゃ!!

 発明には多くの元が必要、その過程じゃ!!」


 過程なら結果以外の紙はまとめて置いてほしいな……

 それにしても凄い量だ。

 さっきみたいに物をキレイにしてから配置し直すだけではダメか。


 紙はそれぞれの内容をジャンルわけして迷子にならないようにしないとな……

 機械任せに出来ない部分がかなり多い。


「ふーむ……もしかして途中まで別の方が書かれてます? 途中からはあなたが書いているみたいですが」

「亡くなった妻のだ! 悪いか!」

「あ、いえ……ごめんなさい」


 乱雑な筆跡とやたら几帳面な筆跡それぞれあったので推測したけれどそうだっなのか。

 『大往生だったから悪いもクソもあるか!』と怒られた。

 まあ不幸を背負っているという感じではなさそうだ。


 書いてある内容はさきほどの発明たちよりも多くの理論や研究が書かれている。

 思考実験して実践しようとして失敗し次の改良点を細々と書かれている。

 ただ思考実験の段階で止まっているようなのも多いようだ。


 これを見る限り夫婦どちらかが天才だったというよりも秀才が奇跡的なかみ合わせで遥かに天才を凌駕していた感じかな。

 九尾の奥さんはコマコマと考えるのは好きだったようだけれどそれで満足してしまう事が多かったらしい。

 出来る出来ないは放置気味だし改良点を見つけるまではおじいさん頼りっぽい。


 特に実際に何かを作る、実験するというのはほぼおじいさんだよりか。

 ただ奥さんはとにかく色々と思いつく勢いはとんでもなかったらしく片付けても片付けても考えついたアイデアや理論が出てくる。

 一体これを全て作り込むには九尾のおじいさんは後何十年生き続けなければならないやら。


 やはりというか奥さんがなくなったあとの分はイマイチふるわない様子。

 いや、個人では十二分凄いのだが奥さんとやっている時代はぶっ飛んでいたようだ。


「この書類凄いですね、魔力の解析実験ですか」

「ほう、価値がわかるか。なあに中身なら覚えているから語ってきかせてやる。

 だから手を止めるなよ!」


 ひええ、大変だ。

 とにかくものが多くてバラついているから確認に手間がとられる。

 さらに九尾が魔力について語るから頭の中が混乱しそうだ。


「……というわけで行動力変換時に魔力は……だからその効率を……身体効率化させて……」

「あとで! あとでききますから!」

「なんじゃい今聞かんかい!!」


 理不尽!

 今そこまで脳が処理が出来ない。

 そんな調子で何とか書類を片付けていった。


 しかも1部屋で終わらなかった。

 部屋を跨いで書類がバラバラだからシャレにならない。

 ええい、この実験書類2ページ目はどこの部屋だ!!





 お、終わった……

 さすがに行動力が削れてきたぞ。

 まだあるのかな……?


「だんだん察してきたな? 次は倉庫じゃ」


 奥にあった大扉がガリガリと音をたててスライドしていく。

 うっ、倉庫と言うだけあって広いうえ物が多い……

 だが材料が中心のこの部屋なら!!





「じゃあ次は実験室たちじゃな」


 精神的にへばってきた私をよそに新たなるステージが解放されました。

 ようし、やってやろう……やってやろうじゃないか!!





「ふむ、一旦昼休憩にするか」


 やっと一段落ついた私に九尾はそう告げた。

 いい加減くたばりそうだった……

 機材を身体から外し自由になった。

 大きく伸びをする。


「ふむ、お前さんやはり少し変わっとるの。かなり力を吸ったのに常に回復しておるか。

 それに知識もじゃ。ここまでワシの話についてこれたのはばあさん以来じゃ」


 客間で紅茶が出てきたのでそこでくつろぎながら九尾の話を聴くことになった。

 ここも(きちゃな)い。

 後で掃除だ。


 何らかの発明品なのか九尾がスイッチをいじったら紅茶が運ばれてきたのには驚いた。

 もちろん皿で。

 私達四足はカップ持てないからね。


「じゃあさっきの続きでも話してやろうかの」


 そういうと九尾は魔力解析理論を語りだした。

 私の前世の知識が及ばない分野。

 だから難しくはあったが……なんとかついていけた。


 やはり事前に感覚的にわかっている点が大きかった。

 進化の事もあるしね。


「……そして我々はそこから姿を変える秘術を編み出した」

「ブフッ!?」


 危なっ!

 紅茶吹き出しかけた!

 気管支に入りかけてむせる。

 い、今のって……


「なんじゃいきなり」

「ケホ……それって、進化、ですか? 

「……ほう? それはどこから」


 私は伏せるところは伏せつつ経緯を語った。

 寿命とか前世あたりは話さなくて良いからね。

 聞き終えると九尾が納得といった顔をしていた。


「その大トカゲ(ガランザード)に伝えたのはワシじゃな、まあ自己鍛錬のためかと思っていたら、そんな所に情報が流れていたとは」

「そうだったんですね!」


 元々ちょっとした知り合いだったらしい。

 意外なつながりが見えてきた。

 ということはこのおじいさんが……


「おっと! 話し込みすぎた。続きは掃除の後じゃな!」

「えっ」

「仕事しにきたんじゃろ?」


 そう言われ睨まれたらそらそうでしたとしか言えない。

 その後はさらにあれこれと言われながら多くの廊下に居間に寝室や個室……と。

 どこまでも掃除させられた。


 やっと家中ピカピカになるころに私はぐったりして解放された。


「ふん、なかなか良かったじゃないか。機材の使い方も慣れてきたようだからな」

「そ、そりゃあもう日暮れまでやらされれば……」

「じゃあ次は外壁だな、お前さん気に入った、また明日も来い」

「え」


 ええええぇー!!

 いや、話が聞きたかったからそれは良いんだけど、外もやるの……?

 疲れ切って門をくぐり抜けギルドへと向かった。





「うおおおおおぉ!! アヅキさんとユウレンさんすげえええええぇ!!」


 ギルド……の隣の酒場からそんな叫び声が聴こえてきた。

 アヅキとユウレンたちの名前がコールされまくり熱気が飛び交っている。

 え、何?


 当のアヅキやユウレンも困惑している。

 わざわざ酒場の外にアヅキたち用の街に住む小動物たちからすれば巨大な机や椅子も用意され座らされている。


「え、ちょっと、これ何?」

「あ、ローズ」

「主よ、説明します……」


 私が魔物たちの群れをかき分けアヅキとユウレンに近づいて話を聞いた。


 私と別れたあとに他の討伐隊と合流したアヅキたち。

 討伐対象である魔獣の空を飛んでくる竜を討伐したそうだ。

 ちなみに私の知っているドラゴンではなく火を吐き強靭な爪を振るう危険な竜だ。


 そしてそいつを(たお)したと思ったらそれの親が飛んできたのだとか。

 遥かに大きく巨大で先程斃した竜がさらにトランスして形態すら違う存在で討伐隊は蹴散らされる運命だと悟ったとか。

 そこをアヅキとユウレンが死闘を繰り広げ討ち取ったらこの騒ぎ。


「申し訳ありません、主のように相手に慈悲をかけ引き込めれば良かったのですが……なかなかうまくいかないものですね」

「それはローズが特別過ぎるだけだからやめとけって言ったんだけれどね……」

「た、大変だったようだね……」


 アヅキが私に何か飲むか聞いてきたからお金あるかを聞いたら『山ほど貰ったのでしばらくは困りません』とのこと。

 追加の報酬がとんでもなかったのだとか。


「竜は捨てる所がない全てが希少な素材。その代わり生きている間はかなり恐ろしいもの。

 つまりおいしいのよ。街からも後々感謝状が送られるそうよ」

「おおーそんなに凄い事を!」

「まあ、主に比べれば雑魚でしたからね」

「それもローズがおかしいのよ」


 私への過大評価がすごい。

 空を飛び回ってはるか上空から一方的に攻撃する竜なんて勝てるわけがあるか!


 アヅキは空を飛べるしユウレンも工夫次第で色々と出来るだろうからね。

 彼等は相性が良かったのかもしれない。


「さあみんな飲め飲め! 今日は大竜殺しの祝いだぁ!」


 誰かがそう叫び呼応するように声が上がる。

 私も何か食べたり飲んだりしようかな。

 定番のミルクなんてあるかしら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ