九百三十四生目 爪折
"千の茨"と剣ゼロエネミーでプライドに反撃をかける。
同時に彼の言葉に耳を傾ける。
私の意図していないところでの変化……
「そういえば……このツノ。それに……神の力はこの姿じゃない時にも……」
「青いの、まだ伸びる最初の段階に手をかけただけだ。揃った今タネは発芽し育ち……そして青いの、神格の器も最低限得たな? 偶然ではなく、お前が無意識に求め、そして必要だと頭の底で、魂の中で理解しているから集められたんだ」
「何を知って……!?」
神格のこともバレていた!?
話していないはずなのに……
"千の茨"が次々とプライドの四方八方から攻めていくが器用に弾かれ避けられダメージを最小限に抑えられる。
そこに長剣ゼロエネミー!
「これほど互いに殴り合っているんだ、においでわかる! それに……今の場から踏み込むのためらっていることもな。俺の力、蒼竜の力、お前の力……今はうまいことバランスが取れているが、お前が神の力への自覚ができなければ、この次にお前は踏み込めないだろう。なっ!」
長剣ゼロエネミーの横薙ぎ!
ってええ!? 剣の上に乗った!?
そのままプライドはジャンプしてくる!
イバラを伸ばしまくって……
んな!? イバラを足場に!?
召喚士が攻め立てるむねを叫ぶとプライドの足が輝く。
目の前でプライドが空を蹴り裏返り回転しながらの蹴り!
サマーソルトキック……!
足の爪による大きな切り裂き!
「ぐぐうっ!?」
やはり技量がとんでもない……!
私の体に大きな切り裂き跡がつく。
鎧が無ければ大きな出血が免れていなかった。
それでも……今のは生命力が大きめに減った。
回復したいが……魔法はムリだし道具のスキがない。
「さあ来いよ。もっと自身の欲をぶつけろ。におうんだよ、青いのの混同した魂、性質、そして存在……だから俺は気に入っている。ガッカリさせるなよ」
怒り。
その唸り声からははっきりと聞き取れた。
理不尽で暴虐的な反応……だけれど。
プライドは私がおそらく異世界から転生した存在だと察している……!
だから前のときイタ吉ではなく私に……!
ほんのわずかな時間のにらみ合い。
「この場にはまだ面白そうなやつもいる。期待はずれだったならさっさと――」
(どうやら"私"をお希望らしいな!)
「――ガッ!?」
剣ゼロエネミーがドライによりいつの間にか天に。
そして形状変化して突きを。
瞬間的に遠隔の相手を落とす高速変化に寄る突き。
それを頭から食らってプライドが首から変な吹き飛び方をする。
だがすぐに立ち手で頭を調整。
首の骨を鳴らした。
そして私の体はドライが操作移動。
「そうだ……それだ……!」
プライドが唸りドライにより私のからだも接近。
互いに近づいて……近づいて……
インファイト!
「私はそのことはまだよくわからないけれど……」
「いけ! 止めを刺してやれ!」
「さあ、やろうぜ」
「私がやることは……私が決める!」
拳が。イバラが。足が。
飛び交う。
ゼロエネミーの高速突きもプライドの毛皮をわずかに散らして避けられ……そこに拳を叩き込む。
ドライはこういう時に頼りになる。
うっ!? 腹部にねじ込まれる連続ジャブ!
カウンターきっちりしてくる……!
だがドライはひるまない。
私なら下がる判断をするが逆に腕とトゲの大きなイバラで一斉に殴りかかる!
「ウグッ……! そうだ! 無意識だろうが意識的だろうが、周りのせいだろうが最終的に自分が選んだ道だ! 青いの、前より良い顔ができるようになったなっ!」
「クッ……そりゃどうも! だから、キミが何をしようとキミが何を企もうと、私は私で押し通す!」
「俺の企み? そんなのはな、気に入ったヤツが育つのを待ち、最後に俺がその上に座りたいだけだ」
シンプルな支配欲。
しかも自分でコツコツやってとかではない。
まさに彼が自分でこだわる通り。
「ほんと、傲慢だ……!」
「そりゃどうも!」
互いにラッシュをかけていく。
ゼロエネミーの高速突きすらも連続で交え。
互いの爪が折れだしても互いに殴る。
イバラと腕それにこういう状況で笑顔になるドライの心。
イバラの中に"ズタ裂き"も交えて出血ならぬ出光もちょくちょく起こっていて明らかにプライドを追い込んでいた。
「まずい、まだ他の奴らもいるのに……こうなったら! やるぞ! モードチェンジだ!」
「ああ……! たっぷり行動力もらう……!」
プライドの全身が赤く……!
さらにより凶暴に筋肉が膨れ上がる!
バーサーカーモードか!
「つ、使い切った……あとは、たのんだ」
「行くぜ……全力のぉ……全力だっ……!」




