九百三十二生目 追詰
2階の面々は外へ。
1階はというと。
「うわっ、イバラが増殖する!?」
「きりがねえ! 行動力が先に切れる!」
「外なら戦いやすいはずだ!」
"千の茨"でどんどんと1階部分を侵食。
1000本までバラしてあえて壁や床をじわじわと進みいやらしく足元から狙うかのように這わせる。
"同調化"しているイタ吉が理解して高速で追い回すのではなく尾の刃を構え敵ににじりよる。
そう。外へ行くように誘導して。
グレンくんと隊長さんはあんまり意識せず彼らに斬りかかる。
それが余計に狙いを気づかせないことにつながった。
小弓から放たれた矢を隊長がさばき落とし2丁のリボルバーから放たれた弾丸はグレンくんの身を削りつつも身のこなしで危険な部位を避ける。
散弾銃はグレンくんが振るうと見えない刃が受け止め落とした。
いや今広く広がって……刃……?
扉から外へ逃れる3人と3匹。
グレンくんたちが追おうとすると2名の剣持ちが塞いだ。
武装ニンゲンとコボルト的種族のふたり組だ。
「オラオラ! どこへ行こうってんだ!」
「泣きわめくまで切り刻んでやるぜ!」
ニンゲン側の剣は氷に覆われ凍てつく刃として燃える隊長の剣とぶつかる!
そしてコボルト的魔物の三日月剣は光でたくさん増やす。
その刃を次々投げ込んだ!
グレンくんは剣ゼロエネミーを構え一瞬止まる。
そして……飛んできた刃に正確に振るう。
当然見た目は空振りだが……
全て刃がはたき落とされる。
「ちい!? トリックが全然わからねえ! 近づかないにこしたことないんぐっ!?」
「おいっ!?」
コボルトが何かに突き飛ばされ壁にぶつかる。
もちろんグレンくんの不可視の突きだ。
ふつうの刃では届かないリーチだからそりゃ読めないよね。
「余所見ですかな?」
「うっ、ぐぅ!?」
隊長と斬り合っていたニンゲンが強く隊長に踏み込まれ眼前で鍔迫り合い。
さあてトゲなしイバラ失礼します。
足元からするりとのばし。
「ん? なんだ!? うわああっ!?」
「くそっ、いった、何が……ってイバラ!? うおおっ!?」
あっという間にイバラの中へ。
召喚石持ちでない者たちは少しイバラと遊んでいてもらおう。
暴れるほど締まるように結び目つけておくけど。
グレンくんや隊長それにイタ吉たちはわきめもふらず外へ駆ける。
私もイバラを自切して……と。
追おう。
外では私が念じて動かしている剣ゼロエネミーと必死に指示を出す召喚士。
それに剣ゼロエネミーをギリギリでしのぎつつ召喚士をうまく守って戦っている。
3人の召喚士はまだ息をととのえていた。
時間かかっているようでまだ全然かかっていないからね。
プライドたちからしても降りて戦いだしてから数十秒だ。
「もう追いついてきた! やれ!」
「いけ!」
「くう、使いたくなかったが……俺の支給品使う!」
2匹の召喚獣は向かってきたが……
あとの1匹はその場で何か貯めるように静まる。
召喚士は瓶の中の液体を飲み干す。
アレは行動力を回復させる薬……
「やっちまえ! 全力全開!」
「待っていたぜ……!!」
召喚獣2匹と召喚士2人とで私達と攻撃しあう瞬間に吠え声。
のこりの1匹がみるみるうちに姿が変わっていく……
肉体が大きく膨れ上がり毛皮の量が増し獰猛な肉食獣が3mはほどの高さが有る化け物へと変貌した。
「外へ追い詰めたと思ったか!? 俺たちも外の方が良いのだ!」
「はあ、はあ、くっ、変身させるだけですごい持っていかれる……よし、はあ……やれ!!」
召喚士は倒れ込み瓶の中身をあおる。
喉がかわいてきた……
こうなったら……
「巨大なやつは私が! みんな任せた!」
「ああ!」「はい!」「うん!」
剣ゼロエネミーを手元に戻し目の前の相手を見上げる。
先程よりかなりの威圧感を感じる……
「さあ、踏み潰してやろう!」
早速高速の前足踏みつけ切り裂き!
目にも留まらぬ速さで打ち付けてくる!
私はそれに合わせなんとか避けるが……
「クッ」
衝撃も余波も凄まじく雪とともに氷も飛び散る。
爪は頬の鎧を撫でいる……!
別に生命力が大きく減らなくちゃ死なないわけではないんだぞ!
「耐えるな! なら!」
前足ラッシュが終わったと思ったら次は大きく移動。
自身の全体に氷きらめく光を纏い突撃してきた!
ああいうのは単純だけれど威力が高い!
けれど!
「こっちはもっと、強い相手を知っている!」
飛び上がり剣ゼロエネミーに渾身の力を込め長剣モードへ……
速度を上げて相手とすれ違う!
そして長剣ゼロエネミーの音が鳴り響く。




