九百二十九生目 凍地
"ダイヤモンドブラスト"が当たった!
私は大きく吹き飛ばされそうになってイバラで廊下の壁にて受け身し耐える。
リビングアーマーは大きく吹き飛んで背後にいた巨漢ゾンビも巻き込んで転がったあとに鎧が砕けていった。
危なかった……習っておいて良かった剣術。
数少ないしゼロエネミーでとはいえリビングアーマーの攻撃を途中から完全にしのげた。
向こうは……
「やあぁ!」「うりゃりゃりゃりゃ!」「……」
「「…………!!」」
不可視の剣がまた1体のゴーストを吹き飛ばす。
どうやらなんとかなりそうだ。
グレンくんの勇者の剣本当に強いな……
私のゼロエネミーと仕様はまるで違うが強さの高みは同じくらいかもしれない。
アンデッドたちを倒したので扉を開けるとブービートラップ。
私達の方に爆炎!
……なので盾ゼロエネミーで受け止める。
「ああ、その腕輪だったのかあ……! 変わった装備だなあって思ってはいたんだけれど……」
「この姿になれることを気づいてね。まさに肌身離さず!」
爆風が収まり盾からまた腕輪に変化させる。
部屋の中はまた黒に支配され今の爆風で家具が壊れている。
だが部屋奥にある球体は無事だ。
この球体……私の感知に引っかからないんだよね。
音もにおいもないけど見えはするので直接見るまではわからない。
"見透す眼"や"千里眼"で探してできれば特定はするけれど。
今の罠はわりと簡単なワイヤートラップでにおいでわかった。
火薬のにおいと糸のにおいどちらも独特だったからね。
とりあえず中へ。
そしてまた球体に腕を伸ばし……
吸い込まれて景色が変わった!
「寒ッ!?」
「うわっ、雪だらけじゃねぇか!?」
今度はうってかわって雪深いエリア。
氷の大きな結晶も見える。
そして雪をかぶっている建物も……
イタ吉に続き隊長さんとグレンくんも続く。
「む!? 何という寒さ!?」
「うひゃあ……! 凍っちゃう……!」
「あ、そうか」
私やイタ吉はそもそも暮らしていた場所のおかげである程度寒さに抵抗あるし強さもあってかなり耐えやすい。
今も寒いと思ったあとはすんなり適応しているが。
だがニンゲンたちは違う。
ここの環境は普通の雪が降る気候ではない。
特別な迷宮のように異常に低い気温だ。
息が凍り白くなる。
気温はどれほどのマイナスか。
金属鎧を着込む隊長さんは最悪に相性悪い。
こういうときまずはこれ!
「敵がまだいないので今のうちにあたたためます。それッ」
火魔法"ヒートストロング"!
筋力と発熱量増加。
さらに火魔法"フレイムエンチャント"!
炎を全員の武具に纒わせる。
自分が直接触れても平気。
そして聖魔法"クリアウェザー"!
みんなの体に淡い輝きが一瞬。
これで周りの天候の影響が下がる。
「これでどうです?」
「素晴らしい……! む、しかし筋力強化はさきほども受けたような……」
「今回は発熱量に重きを置いてみました」
「なるほど……体の底がじわじわとあたたまる。これなら戦えそうだ、すまない」
なんとか低温の環境下でも戦えそうだ。
建物に近づけばおそらくすぐに見つかる。
みんなに目配せして一気に近づいた。
「敵襲! 敵襲!!」
「今頃気づいても遅いぜ!」
近寄れば当然気配で見つかる。
だがイタ吉はその瞬間に加速。
一瞬で建物内にいたまず1体を尾で切り裂く!
「ぐあっ! このっ!」
「速い!」「回り込め!」「まだ来るぞ!」
私達も到着して入り口から中へ。
イタ吉と切り合っているのがひとり。
近づいてきているのがもうひとり。
奥の部屋から獣魔物2体。
階段に1体に……先程外から"見透す眼"をした限りまだまだ増える。
「侵入者だ! アレ使え!」
「前のやつが潰されたから、躊躇うな!」
「ちっ、こんなことで奥の手を……!」
召喚石はその質により使用限度や再使用時間それに呼び出せるものも決まっている。
おそらくこういうところに渡される召喚石は脆いものだろう。
私達をただの侵入者と見ているならばかなりためらうはず。
「ダメだ! すでに1つ落とされている! やつらをナメるな!」
「ちっ、召喚!」
だがその期待は持てない。
召喚石を持たない者たちが私達とぶつかり切り合う。
そしてその背後で召喚の光。
今度そこから飛び出して来たのは数匹の魔獣。
それに……
「におう……におうな……俺の蒔いたタネが大きく育ったにおいが……よう」
「プライド……!」
「げ、アイツか!?」
私が目の前の兵を蹴り飛ばしたころにそいつはその人狼を象った姿を揺らす。
背後に召喚魔獣を控えさせ傲慢さを前面に押し出して不敵な笑みを浮かべた。




