九百二十三生目 魔室
暗く黒い部屋で空中に浮かぶ球体。
不思議なもので物質がある感じがしない。
そして球体の中からまるで別の場所にある光景が見えているようだ。
「え、これは……?」
「おい、これが何なのかわかるやついないのか?」
「俺は見覚えがないなぁ……」
「私もまったく。しかし奇妙な代物……どこかへ通じているかのようにも見える」
口々に疑問は言うものの答えは見えず。
少し魔力で解析してみよう。
触れないように腕を伸ばす。
「えっ?」
腕を伸ばしただけなのに急激に吸い込まれる……!?
抵抗も出来ないままこの中へと吸い込まれ……
すぐ景色が変わる!
驚きはしたが体はなんともない。
さらに次々とイタ吉やグレンくんそして隊長も吸い込まれてやってくる。
どうやら巻き込まれたらしい。
「な、なんなんだ!?」
「うわっ罠!?」
「む……」
みんな無事な様子。
これは私がうかつだった。
「ごめん、みんな私のせいで――」
「そんなことより前だ!」
「……うっ」
イタ吉の言葉通り。
きづいてなかったわけではないがいなかったことにしてほしい相手たち。
アンデッドではない複数のニンゲンと魔物。
「何!? 侵入者だと!?」
「うわっ、やっぱり罠だ! 倒そう!」
「罠ならばちょうど良い。私達が暴れ砕こう」
ここはオレンジカラーの土が眩しい草の乏しい土地。
周囲は壁のように地形が隆起しているが正面方向には広め。
何かしらの建物が目の前にありその手前と中に複数名チェック。そして"観察"。
みな武器は抜身状態。
相手は10体ほどで距離が10mはある。
ニンゲンたちは今抜刀をしようとしているので……
超低空飛行ダッシュ!
地面を蹴り近くまで高速滑空してまだ背負い槍を抜けていないニンゲンに勢いの蹴り!
「だあッ!」
「ぶべらぁっ!?」
派手に吹き飛び狙って後ろにいた魔物たちも巻き込む。
イタ吉がほぼ直後に踏み込んできて出来得る限り無防備な相手に対し尾の刃で切り裂く!
「ぐはっ!?」「ぎゃあ!?」「何!?」
「うららららっ!!」
「グレンくん! 隊長さん!」
私はそのまま一度着地してイバラを振るう。
グレンくんと隊長さんが遅れつつ突撃。
それぞれ魔物にぶつかっていく。
「グルアッ!」
「このっ! こうだ!」
「足を引っ張っているか……だが!」
「ウー、グー!」
隊長さんは2足型の体の大きい魔物に剣で食らいつく。
グレンくんは獣型に対して不可視の刃を振るう。
獣型は避けたはずの先で斬られ血が噴き出す。
"言語解読"で各々の言葉も会得して……と。
「ば、バカな完全に避けたはず……! ぐわぁっ!?」
「ぐぬぬぅ……こいつら、やり手だ! 囲め……!」
2足型は鎧の腕甲で刃を受け止め滑らせるものの隊長の双剣はスキなく次を差し込む。
グレンくんはどんどん追撃し何発も切り裂いた後に大きく吹き飛ばした。
どうやら気絶したらしい。
「な、なんだ!? アイツ吹き飛んだぞ!」
「気をつけろ! あの小僧何か隠してやがる!」
「光がまったく見えないとかどうなっていやがる!?」
不可視の刃。
この世界攻撃にはいろいろ光がつくのは常識である。
しかしグレンくんが勇者の剣を握るとあらゆる光は不可視化される。
それがおそろしい。
本当の範囲も事前動作もまるで読み取れないのだ。
「よそ見してんな? お前の相手は俺だ!」
「早い!? 増えた!」
「落ち着け、どれかが本体だ!」
「落ち着かせない!」
イタ吉が分身をして多数の敵たちがこちらを囲む前にさらに囲んでしまう。
建物から全員なんとか出てきて私のケリで吹き飛ばされた勢も復帰しだしている。
まだあと8体……けど!
私のイバラで"龍螺旋"!
先程までにこっそり事前に舞えた。
相手も警戒していたがどう来るかまではわからないだろう。
光を纏ったイバラがイキイキとうねり横に並んだ相手たちを弾く!
7体程度は余裕だ!
それぞれイバラを1発ずつ当てる!
「「うわっ!?」」
「な、なんの――」
"連重撃"の効果で2回分ダメージ!
さらに"龍螺旋"の効果で着地点で爆発! もちろん2回ずつ!
「「ぎゃあああぁー!!」」
「残りは!」
隊長さんと斬って殴ってしている大型の魔物のみ!
私とイタ吉そしてグレン君一斉攻撃だ!
「な、なにが今……う、うおおおおおっ!!?」
なんとかボコボコにした。
ひとまず良くトゲなしイバラで結んでおく。
イタ吉たちが建物内の奥に詰めている間に私は探索。
建物を抜けてさらに奥へゆけばソレがあった。
私達の目的のひとつが……
おぞましい形で。




