九百二十二生目 不視
城内潜入!
勇者グレンくんとイタ吉それに隊長さんと私だ。
イタ吉が廊下にいたスケルトンを切り裂いた。
「ローズ、そっちの手筈は?」
「ん、終わった」
「うし」
「む……!? 今の一瞬で見回りのアンデッドが!?」
騒がれる前に倒さないと面倒だからね。
イタ吉と実は"同調化"しているので手早く可能。
他のメンバーとは出来ないが。
そして私の攻撃はゼロエネミーによる刺突……なんだが。
今ゼロエネミーをどこに持っているのかさえバレていないはずだ。
これもひとつの切り札。
「あちらのアンデッドに関してはいつ攻撃し壊れたのか……それすらわからぬ。むう……素晴らしい腕前!」
「ありがとうございます!」
「うわあ、俺なんてなんか扉あけただけで終わってたよ」
ゆっくり話を聞きたい……ところだが。
この場の乱れを感じ取ったのかあちこちのアンデッドたちが警戒しながら接近している音がする。
みんなに目配せしてうなずく。
「蹴散らそう!」
皆うなずき返してグレンくんも勇者の剣ことナイフを構える。
足音が聞こえる方へ一斉に駆ければ曲がり角でアンデッドたちとばったり会う。
たった4体!
「私も、ただ観覧しにきたわけではないというのを、見せねばな!」
隊長さんが強く踏み込み双剣が黄色い光を放つ。
きらめく刃はゾンビの体を十字に切り裂き……
そのまま両方の腕で頭を斬り伏せる!
キレイに入った武技だろう。
その証拠に追加で上から黄色い光が強大そうな腕を模してゾンビを地へ伏すように殴りつけた。
「追撃ぃ!」
イタ吉がさらに攻撃を仕掛ける。
相手アンデッドたちは倒れたアンデッドを気にせず踏み込もうとしているが単に障害物としての役割を果たしている。
イタ吉は廊下の壁を蹴りそのまま壁跳びを繰り返して爪を振るう!
ゾンビ3体たちの腕と変形カニハサミと石拳を弾き大きくのけぞらせた。
イタ吉がもう一度帰ってくるまで時間がある。
さらに私が飛び込む!
イバラを伸ばし打ち上げ!
4体ともきれいに空を跳び……
グレン君が勇者ナイフを構える。
「今こそ力の見せ時!」
そして不思議な光景が見えた。
グレン君がナイフだから軽々と振ったあと……
重々しく大きく上からふりかぶると何かによってゾンビたちは床へと叩っ切られた!
「え?」「む?」「おお!」
「よし!」
ゾンビたちは耐久力がなくなり肉体が崩れ砂となっていく。
よしよし……結構ここまで来たら強めのアンデッドたちだったが今の所順調。
それにしても……
「今のって一体……?」
「あれが勇者の剣の力なんだよ。普段はナイフだけれども、俺の力に反応して見えない実物の刃が出るんだ」
なんという変わり種な力……
振るときによってリーチも重さも変わるというのか。
扱いにくくそして強力。
けれど勇者として武器を振るうと武器の力を引き出しすぎて耐えきれず壊れてしまうからそのぐらい扱いにくい方がかえってバランスがとれているのか。
そんな武器をいざ実戦で早速扱えているあたり……
やはり彼は勇者なのだろう。
とにかく足を止めずに話す。
「すごいね……! そんな能力が! これが勇者の剣の実力……!」
「まだまだ、すごい力は秘められているけれどね! あれ、そういえばゼロエネミーは……」
「ああ、ゼロエネミー? どこにあるかわかるかな?」
「どこにあるって……まさか、持っているの!?」
「もちろん!」
グレンくんがあちこち目線をやるがいるのは新たなアンデッド。
今度は天井に張り付いていた腕に鋭い刃を持つ虫のようなアンデッド。
大きさはニンゲン大なので虫とは言えない。
「どんどん行こう!」
敵を倒し。
蹴散らし。
城の中を駆けていく。
後方チームからたまに念話が来るが今の所平気らしい。
このまま進む。
それにしても複雑な地形だ……
城自体攻め込みを想定して複雑な道になっていることが多い。
"見透す眼"や光魔法"ディテクション"で脳内地図を作り効率よく荒らし回っている。
ただ城が2つくっついたかのような作りで道があったりなかったりめちゃくちゃだ。
アンデッドたちが道を無理やり開けている場面にも出会ったから混沌とした状態らしい。
そして帝都民はなかなかいない……
駆け巡りアンデッドたちを蹴り飛ばした先の扉に駆け込むと他の部屋と雰囲気が違う場所に出た。
今までいろが入り混じっていた空間と違い部屋が黒の色に覆われている。
ただの黒色ではなくやはり明らかにこっちの世界では見たことのない材質な気がする……
うーん……
「なあ、アレ……」
「イタ吉? ……あれは……?」
イタ吉がスルスルと奥へ行くと暗い部屋内で何か見つけたらしい。
私も行くと……宙に浮く球体を見つけた。




