九百十八生目 挟撃
ドラゴンゾンビが迫っていた。
分身を撒いているものの振り切るのはまずムリだろう。
空飛ぶドラゴンゾンビが口を大きく開きついにはエネルギーをためだした。
「クッ!」
おそらくはドラゴンブレス……いやドラゴンロアかもしれない。
放たれたらすべて巻き込まれる。
さらに今もあちこちの私の分身たちがドラゴンゾンビに触れて消えてしまっている。
けど間に合わせる!
高速で移動しつつ剣ゼロエネミーを操作。
あんまり距離を取ると剣ゼロエネミーの操縦が難しいから旋回して逃げる。
巨大な分小回りが難しいはずだから時間を稼いで……
斬る!
ゼロエネミーの斬撃で身を斬る!
切り開いてやろうと思っても体を揺らし弾かれる。
あくまで纏う剣は側面だけで平たい方は斬れないことを理解しているらしい。
あまりにナナメになれば刃が入らない!
剣ゼロエネミーをうまくあやつらなきゃ!
背を裂いて! 足を裂いて!
体を走らせて!
きって切って斬る!
そこだッ!
ドラゴンゾンビに莫大なエネルギーがたまり口からそれをこっちに吐こうと迫り……
腹から爆発! 暴発した!
"鷹目"でチェックしつつやったからなんとか当たった。
腹で爆発を起こしスピードが緩んだところに一直線斬り!
ドラゴンゾンビが目の前で顔が歪んで斬れ……
剣ゼロエネミーが飛び出してきた!
ふう……なんとか倒せた。
ドラゴンゾンビは頭が裂け落下していく。
私の分身もほとんど消えてしまった。
それに疲れてきた――
(まだだ!)
えっ!?
私が驚いている間にもドライが体を動かし何かを避ける。
今のは……!?
次の射撃は気づけた。
ドラゴンゾンビが……まだ動いている!?
裂けた頭から腐った血の玉をこちらに放ってきているのか!
いや気持ち悪い!?
あとドライの空中制御は独特で飛ぶというより攻撃を避けるために急に角度を変えて加速する。
気をつけてないと酔う……
「このッ!」
イバラを伸ばして落ち行くドラゴンゾンビの頭を必死に縛り上げる。
"縛り付け"!
ぐぐぐ……無理やり縛り付けて……!
「行けぇッ!!」
今度こそ。
剣ゼロエネミーで止まったドラゴンゾンビの耐久値が削れきれるまで……
斬ッ!
ゼロエネミーにより今度こそドラゴンゾンビがバラされる。
四角くバラされた体が崩れ落ち身が崩壊して骨が砕けていく。
今度こそ……大丈夫か。
「ふぅ……疲れた……」
これ以上の戦闘はやめたほうがいいか。
行動力もだいぶ減ってきていて半分を切っている。
この力は私だけではなくアノニマルース全体で活用しているのだから。
現在エネルギーを作成して貯蓄し引き出すための龍脈タンクを製造中。
私のこのネオハリーパワーをヒントに作るらしい。
つまりまだない。
だから……
『ジャグナー、一旦帰って休むね』
『おうよ! よくやってくれた、おつかれさん!』
"以心伝心"でジャグナー連絡。
さあ帰ろあいたっ!?
(油断するなよ、ここ戦場だぞ)
暗い魔法弾が私の背後から当たって弾けた。
大したダメージじゃなかったけれど痛む……
集中力が完全に切れている。
背後にいたゴーストをイバラで打ちまくる。
"鷹目"さえあれば向いている方向は関係ない。
……そっちをちゃんと視界に入れていたら。
相手はなんとかチリとなって消えたので今度こそ帰還だ。
光魔法"ディテクション"による脳内マップも見ていなければ意味ないし戦場だなんて敵と味方だらけで情報過多。
さあさあ……余計なことを考えている前に帰らないと――
ドゴォオォン……!!
――何今の爆音!?
戦場で爆音は珍しくないが今の爆発音はその戦場内でも響き渡る音量。
……うわっ。見つけてしまった。
帝都を取り囲む円の外側から進行しニンゲンたち後方部隊に向けてたくさんかつ大型の砲撃を放っているアンデッドたちを。
……挟撃だ。
『じ、ジャグナー!』
『わかってる! 挟撃は……予想はしていた! 相手がアンデッドだとわかってからな! だが……しばらくたってからの投入で夜で……とにかく最悪だ!』
『私も向かう!』
さすがに疲れたとか休むとか痛いとか言ってられない!
すでに後方キャンプ地一部炎上している。
本部位置とはズレていたのが幸いだがまだ伏兵がいるかもしれない。
『だがローズ、その姿はぶっつづけでは使えないだろう! もうすでにかなりムリをしているはずだ!』
『でも、このままじゃあ負ける!』
『前のときも限度こえてぶっ倒れていたのに、死ぬぞ!? 帰れ!』
『うっ……』
けど……せめて浄化して足止めをしないと!
それに邪気アンデッドにより後方のほとんどお祓い炎石を持っていない兵たちを治療しないと!
今やらないと手遅れに……うん?




