九百十四生目 待望
空を飛んでいるダルウクに出会った。
「面倒くさい……このぐらい自分でやってほしいですねえ……僕はドラーグ様のお力を近くで見たいだけなのに……ぶつぶつ」
「こんにちは! 助かっているよ!」
「……誰ですか? 魔物軍の方ですかね?」
少し不機嫌そうな声だ。
ダルウクからしたら今の私はそりゃあ見たことないか……
変に名乗るもの危険かな。
「そうです、魔物軍です」
「じゃあここに近づかないほうが良いですよ〜、大人たちの手元がいつ狂うかわかりませんからね」
「うん、忠告ありがとう、それじゃ……」
おっとダルウクの背後から大きな鎌を持った布切れをまとったスケルトンたちが!
ダルウクは気づいていない。
イバラを左右から伸ばす。
「じっとしててね!」
「何を――なっ!」
ダルウクの後ろに迫った存在に気づいたらしく背後を見て驚きの声を上げる。
だがもう大丈夫!
先回りしたイバラが鎌を打ち払う!
がら空きになった胴に1! 2! 3発!
そのまま怯んだところに"龍螺旋"!
龍のように自由に空をとぶがごとく動いたイバラが光をまとってそのまま突撃!
2体とも猛烈な1撃が入ったところに"龍螺旋"の効果で爆発!
さらに"連重撃"で当たる回数は実質倍!
さらに爆発が起こったが少しダメージオーバーすぎたかもしれない。
「す、すごい……強力なアンデッドが、一瞬でチリに……」
ダルウクが言う通りアンデッドたちが爆発に飲まれ風で飛んでいくような感じのものになってしまった。
普段の戦いっていつも"峰打ち"でやりすぎても倒れないようになっているからなあ……
そのかわり強く叩いておこうという意識はある。
それにこまかく見ている場合じゃなかった。
ダルウクが襲われていたのだから。
アンデッドは倒れたと思っても動いたりするからなあ。
「大丈夫? 怪我は?」
「あ! いえ、僕は何も…………ううーん、ドラーグ様コロロ様以外にも、魔物軍はこんなエースが……僕はどうしたら……」
「とりあえず、良かったよ! じゃあね!」
「は、はい!」
ダルウクが何やら悩んでいたようだが戦争中に関しては大丈夫だろう。
そしてあとのことは後で悩んだほうが良い。
私は急いで次の救援へと向かい……
向かおうとして。
またまわりにアンデッドたちが寄ってきて集中放火されていた。
ドライよろしく!
(さあて、今度はどんだけ持つ!? "ズタ裂き"喰らえ!)
なんとかひと通りの狂乱味方拘束は終わった。
いまはアンデッドたちの侵攻を上空で食い止めている。
幸い私は敵愾心をかせいでいるのでアンデッド軍がこちらに差し向けられやすい。
その分背後での治療がスムーズに進み戦線復帰も早くすむ。
治したばかりで戦ってもらうのは酷だが……
それほどまでにこちらには余裕が薄い。
たおしても倒してもどれだけ吹き飛ばそうと。
アンデッドたちは次々おかわりが来る。
なるほど……これは精神的にもキツイ。
(はっはっはっー! まだまだ楽しめる!!)
ドライが元気にアンデッドたちを殴り飛ばしているから私はなんとか保てるが。
とりあえず"鷹目""千里眼"であたりを見てみればなんとか場は再度前線が構成できていた。
ただ自爆特攻邪気付与アンデッドが来るたびに前線が崩れる……
唯一無事なのは最初からお祓い炎石に頼っていない螺旋軍。
適確にアンデッド浄化滅殺トラップなんかも設置しているのが見える。
踏んだらあたりに魔法陣が広がって範囲内に聖エネルギーで強烈なダメージを与えたりするらしい。
ただ螺旋軍はやはりこちらの手助けはほぼしてくれない。
このままだとジリ貧だ……
ココは龍穴スポットのため高威力の設置兵器や私の"進化"時間が延長されるもののどれもこれも無限ではない。
「ローズさーん!!」
「うん? あ、グレンくん!?」
不意に聞こえる叫び声。
その先に耳を傾ければそれは確実に勇者グレンくんだった。
「剣を!」
「うん!」
グレンくんのそばに急いで飛んで近づく。
グレンくんはうなずいたあと……
力いっぱいに荷物をぶん投げた!
梱包されたそれ。
言われなくてもわかる。
「ゼロエネミー!!」
やっとだ。胸の鼓動が早くなる。
久々に強くなって戻ってきたその姿が見られる。
腕を伸ばしかけ……違う。
剣ゼロエネミーから心が伝わってくる。
そうか……こうだね。
「行って!」
剣ゼロエネミーは加速して私を通り過ぎる。
そのまま落下したかと思えばアンデッドたちに向かって飛ぶ。
そして次の瞬間にはアンデッドが真っ二つになっていた!
な……何があったんだ?
切れた影響で自然に梱包がほどける。
そしてついに新たなその姿があらわとなった。




