九百十三生目 歪穴
上空から防衛ラインのひとつにたどり着く。
前よりも下がらせられ即席の壁や溝それに柵で必死に侵入経路を狭め対応している。
なにがひどいかってアンデッドの他に錯乱した味方たちも味方を攻撃し足を引っ張っていた。
精神汚染はどうしようもない。
個々人の耐性はあるもののうっかりしっかりと邪気に精神汚染されたらしばらくまともに戦うことなどできないからだ。
私がやることは治療……ではなくて。
「みんな!」
補助魔法を精霊たちもフルに使い自身にかけつつ接近。
今度は邪魔なアンデッドたちを拳に鎧を身にまとい……
殴り! 飛ばす!
1撃1撃ごとにアンデッドたちが散っていく。
ここらへんのはそこまで強くない。
問題は……
「ウオ、オオオ!!」
「ぐわっ!?」「誰か止めろ!」
銃を乱射している兵が目の前に。
正気ではない……
弾丸が私の頭鎧にあたるが何も痛くない。
素早く接近して"正気落とし"。
そのまま気を失って倒れるところに分けて細くなったとげなしイバラで"縛り付け"。
拘束状態になったら自切して完了。
「今のうちに運んで治療を! 私の力を借りれる魔物はジャグナーに聞いて力を借りて!」
「「う、うん!」」
だけれども時間がまだまだかかりそう……
補助魔法は次々かけているから速度はあがりそうだけれど……
(気絶はさせなくていい、とにかく無力化させていけ! そんで……"私"にも楽しませろ!)
あっうん?
ドライがイバラを操作して鮮やかな手際でアンデッドたちを蹴散らし道を確保していく。
その間に縛られた兵を周りの兵が運んでいった。
よし私はイバラを一部使って暴れている兵士やへたり込んだ兵士たちをどんどん無力化せねば。
"縛り付け"! 本陣のほうへ運ぶ! 自切!
これをとにかく視界と脳の限界までフル稼働させて全部やる!
(わたしはうまく飛んでよけるね! よーいしょお!)
アインスが飛行コントロールをして四方八方味方や敵から飛んでくる攻撃を避ける。
割と低空位置は格好の的。
まあリスクは覚悟の上。
思考回路を"千の茨"で救うことに専念。
ドライが倒すことに専念していてくれるからできる。
丁寧に確実に同時に。
「運ぶぞ!」
「手伝います!」
「治療は俺が!」
戦場に希望の声が増していく。
とりあえずここらへんのは拘束できたかな……?
(ツバイ! マホーの枠あいたよ!)
おっと本当だ。
魔法の補助をかけおわり今私の能力は飛躍的にましている。
そしてさらにその分魔法の枠があいたから……
事前に『ストックセーブ』で組み合わせを考えてあった融合魔法を使う!
土魔法"アーティトアン"! 連続で土槍を発生させる。
空魔法"ディストロイション"! 空間をひねって巻き込んだ相手を破壊する。
それを……融合!
放つ!
アンデッドだけしかいない軍団に向けて魔法爆心地確定。
発動すると次々と地面から土槍が生えそこからも土槍が生えていく。
そのたびに地面に這うアンデッドたちは串刺しになり強靭なアンデッドが吹き飛ばされた先でさらに土槍が生えて身を削っていく。
そして……その中央地で空間が歪む。
そのままねじきれて空間が裂ける。
空いたのは僅かな穴。
それでも猛烈な勢いで周囲を吸い込みだした!
「これでここはしのげる……」
アンデッドたちが吸われ空にいても地上にいても引っ張られる。
何千というアンデッドが刺され吹き飛ばされ吸われていく。
さらに生えていた土槍が抜けていく。
小さい穴に吸われてしまうアンデッドはいなくてもそこに向かって土槍が吹き飛んでいく!
避けたはずの先も大きな土槍が重なってゆきどんどんと刺しつづける。
重力を飲み込むように穴の中心から渦のように回転。
次々と多くのアンデッドたちを巻き込んでいた。
時間が稼げそうだ。
今のうちにさらに次の場所へ飛ぼう!
何度かアンデッド軍を強襲していたら露骨に狙われるようになってきている。
さらに邪気復活自爆アンデッドがまた帝都山脈から飛んできた。
消した邪気が復活するごとに新たな犠牲が出る……
黒いボロボロのフードローブをかぶったゴーストアンデッドたちでスピードが優れている。
しかしそれだけで脆いため私含む空中戦力が必死に叩き潰していた。
空を飛び回りとりあえずの増援分最後を今イバラで貫き爆発して消えた。
……うん?
ここ螺旋軍の近くか。離れた方が……
あれは……ダルウク!?
そういえばドラーグの近くにいなかった。
呼び戻されていたのか。
そのダルウクが空を飛び増援邪気アンデッドを潰したところだった。
背中から光の翼が生えているところを見るに魔法だろうか。
彼の半霊を生かした能力かもしれない。