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九百十生目 巨腕

 地下水道のアンデッドをうまくごまかした。

 わざとらしくあっちこっち見ていちどクルリと回って見せる。

 ローブを着た賢いアンデッドは嫌そうに手招きした。


 それでやっと理解したかのように見せフラフラと入りこみそのまま階段を上る。

 そのままアンデッドたちの感知範囲外まで逃れ……

 ふぅ……! やっとひと息つける!


 アンデッドのマネはやめて素早く登っていく。

 結構厳重だった。

 ひとりで来て正解だったか。


 この調子で内部の場所を確保しよう。

 そう考えつつ階段をどんどんと登っていくと……

 やがて景色が開ける。


 出た場所は庭園。

 こちら側はほとんど見張りがいない。

 うーん帝都のニンゲンたちも全然いない。


 さすがに100万の民を城の中に詰めることは不可能。

 だとすると……(くう)魔法などで空間を歪めたりしてどこかに閉じ込めている?

 亜空間にいるのならポイントを特定せねば。


 大規模な生きた人間たちを確保するにはそれほどに魔力は膨大。

 気配が必ずするはず。

 しらみつぶしに歩きたいが……この城をまともにひとりで歩いていたら終わらない。


 まずは"ファストトラベル"で安全に飛んでこれる位置を探さないと。

 ここは天空にアンデッドたちかいるから安全ではない。

 とりあえず城内へ入ろう。


 庭園はガラガラで空からアンデッドが警戒するのみ。

 横から壁に密着し"見透す眼"。

 そして向こう側の倉庫っぽいところに罠やアンデッドチェック。


 ……よしなにもない。

 "ミニワープ"!

 景色がすぐに倉庫内に切り替わる。


 埃っぽく大した警戒もされていない倉庫。

 不必要な部屋を管理するなら大事な廊下とかに警戒重点するもんね。

 じっさいにこの倉庫から出た廊下ではアンデッドがウロウロしている様子。


 とりあえずこの場所を"ファストトラベル"地点として記憶。

 遥かに高い城の最下層だが……

 攻め入るにはちょうど良い。


 ここをポイントとしてチャンスがあれば一気に攻め入ろう。

 結局帝都民どこにいるかはわからなかったが……

 こうなれば直接殴り込んだ方が良い。


 ゆっくり時間かけて探し出した時にみんな死んでいましたでは駄目なのだ。

 そのために……一旦帰還!

 "ファストトラベル"!







 私が無事城に潜入し脱出してアノニマルースで戦闘準備のために買い出ししていたころ。

 ドラーグが"率いる者"で"以心伝心"を借りこちらに念話を飛ばしてきた。


『うん? もしもし?』

『あ、そちらはどうなりました?』

『もちろん、中までの潜入はできたよ! ドラーグが来られるような広さはないけれど……』

『あ、行けても怖いので遠慮しておきます』


 ドラーグ……まあすでに今頑張ってもらっているし不満はないしなんなら嬉しいくらいだけれど。

 そうだそうだ。

 ドラーグの方はどうなっているんだろう?


『あはは……えっと、そっちの戦況はどう?』

『あ、聞いてくださいよ! むしろ見てください! あの子ってすごく強かったんですねえ!』

『あの子……ああ、ダルウクさん』


 ドラーグになついていた修道服のニンゲンだ。

 彼の実力はいかほどか。

 どれどれ視覚聴覚を借りて見てみよう。


 視界が切り替わりドラーグ視点。

 目の前見下ろしている先にいたのは……惨状。

 肉と骨と霊気の残り火があたり一面に散らばっている。


 そして見下ろした先にいる人影は……

 人と言い切るにはあまりにいびつだった。 

 全身は普通の青年なのにその左腕だけが異様に大きく赤く膨らんでいる。


 それに掴んでいるのはアンデッドたち。

 まとめて掴み……そのまま強く握り潰す。

 あたりに破片が散らばる……


 そのまま中身を地面に叩きつけ大きく振りかぶって地面に拳を叩き込む。

 気味の悪い肉と骨の潰れた音が響く。

 1度だけではない。


 さらに。

 さらにさらに。

 さらにさらにさらに。


 何度も何度も丹念に原型がなくなるまで叩き潰し……

 終えると左腕はしぼんで普通のサイズとなった。

 丁寧に地面のシミになるまで叩き込んでいた。

 腕の修道服はその腕の大きさにある程度合わせているのを見るに魔力が結構込められているのか……


 あたりに腐った血と肉と白骨が散りその中に彼は立つ。


「ここらへんの相手ありがとうございました!」

「いえいえ! ほんと、僕の戦い方ってどうやって美しくない……まだまだ精進が足りません。相手をいつまでも苦しめ、なにより跡が美しくない……アンデッドなど、きちんとこの世からいっぺん残らず消さなくてはいけないのに」


 なるほど理解した。

 彼こそが螺旋軍で連れてきたエースだったのだ。

 だから彼の話は螺旋軍すらも聞かなくてはならなかったのだ……

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