九百九生目 連絡
帝都城と黒の城が融合した場所へとやってきた。
視界を"鷹目""見透す眼""千里眼"で広い範囲のチェック……
脳内地図もしっかり見ておく。
光魔法"ディテクション"はこういうときに便利だ。
うーん……よし!
水路に道がある。
正確には道ではないが……侵入は可能。
少し嫌だがアンデッドの数は地下の水路ではどうしてもそんなに配置できない。
駆け抜ける分には問題なしだ。
早速移動。
道なき道を跳んで走って移動する。
大樹の幹を滑り台にして滑るー!
終点前で跳んで地面に着地!
さあ行こう。
地下水道はもちろんきっちり柵で閉じている。
問題なく空魔法"ミニワープ"で抜けられる……が。
やはりにおいと"魔感"でわかるけどトラップが仕掛けられている。
魔法で侵入すると感知されるものだ。
直接関与して解除してしまおう。
柵ギリギリまで近づき……
魔法トラップアクセス……
魔力のラインを読み解き魔力構造を解析にかける。
大量のデータがあるのでその中から必要なものをピックアップ。
見た目としては何もしていないが脳内では複雑な魔力の色合いが線となってひとつの形をなしているのを見ている。
四角型……あんまりコードは複雑に絡まっていない。
バラすには好都合。
ただ当然このままでは崩せない。
きっちり蓋がハマりさらにはどこからどう開けてどうほどけば良いのかわからないからだ。
無理やり叩き壊せば当然エラーにより警報発動。
発覚してしまう。
だから蓋を開きこっそりほどいてスイッチのオン部分だけオフにしてまた戻すのだ。
そのための裏口を見つけるなり作るなり。
魔法関係は色々学んだのだ。このぐらい……
バックドアを……うんうん。
それで……ハッキングを……もう少し。
できた!
トラップたちが無効化し反応が消える。
後は工作でハック探知妨害しておこう。
つまり消されたというのに気づかせないための工作。
解いた紐を戻す前にまるでオンになっているかなような色をあと足し。
これで外からは起動し続けているようにしか思えない。
さらにこれをつくったものとの連携は無かったためいまので何かバレることもない。
チェック終了。きっちり脳内イメージの蓋を閉めてアクセス終わりだ。
さあ"ミニワープ"!
すぐに景色が変わり柵の向こう側に到着。
さっきのトラップ以外は大したものはなさそうだ。
アンデッドたちは奥の方歩道を歩いているから気を引き締めていこう。
向こうも侵入されるならこちら側からと踏んでいるはずだ。
地下水道は探索したもののアンデッドやスライムがうろうろしてちょっとした侵入者対策ギミックがあるのみだった。
ここに生存者はいない……と。
ならば上にいるのだろう。
城への出入り口らしきところはアンデッドが複数固まって守っている。
単にアンデッドだけならスルーすればいいが問題は1体面倒なのが待機していることだ。
「……定時報告、定時報告、異常無シ」
「…………了解……」
賢く話せるアンデッドが綺麗な石に語りかけ石からも声が聞こえた。
使用中は輝いているらしく定時報告が終わると輝きがなくなった。
もし揉めたらバレるな……
走り抜けたら賢いアンデッドが止めるのでダメ。
気づかれずに通るのは難しい。
結構上まで距離があるらしく同時に魔法感知センサーがあり"ミニワープ"などは見つかる。
なんとか堂々と誤魔化すしか無い……か。
アンデッド同士だとしたら……なんとかなるはず。
相手の話す相手はローブをかぶった人型スケルトンなのも好都合。
よしいくぞ。
足音を派手に立てぬようにしつつフラフラ〜っと歩こう。
そのまま階段前を封鎖しているアンデッドたちに近づく。
「止マレ! 立入禁止!」
アンデッドたちがいっせいに槍を前へ向ける。
よしよしこっちが侵入者なのはバレていない。
だとすれば後は……
「ワンワン! ガウ! クークー」
「ム……ワカラン。タマニオ前ミタイナノ来ルナ……」
学んでおいて良かったアンデッドの基礎知識。
アンデッドはアンデッドだからといって全員と言葉が通じるわけでもなければ意思も通じるわけではない。
だからこそほとんどのアンデッドを組ませる時に同系統と組ませる。
さあ困るが良い!
「クィンクィン、バウバウン」
「ハァ……連絡、連絡」
石が輝きだした。
余計な言葉を言うのはやめておこう。
「……何ダ?」
「迷イ獣ガイル。通シテ良イカ。何デコンナニ多インダ」
「……一定数管理シキレナイ奴ハドウシテモ出ル。城二入レレバマタ勝手二出ルダロ」
「ハァ、了解……通レ。コレデハ、セキュリティガ悪化スル……ブツブツ……」
槍たちが引っ込む。
よしよし。どうやらこういうことは珍しくないらしい。
アンデッドたちの連携は完全ではない……むしろ甘さすらある。
良い情報だ。




