九百七生目 霊布
帝国それに光教そしてアノニマルース。
3つの思惑は今なんとかまとまった。
「はぁ……仕方ないですね。何がどうなろうと、明らかに私達が協力しあわねばこの窮地を切り抜けることはできません。それぞれ、よろしくお願いします」
「よし。帝国奪還連合軍、ここに結成である!」
「「オオー!!」」
リユウ指揮官長も結果的に折れウォンレイ王の号令と共に歓声が上がる。
これでやっと正式に動ける……
ドラーグは外でコロロやダルウクと共に遊び……ではなく。
アンデッドたちの侵攻を食い止めている。
腕が伸びて切り裂き執拗に生者を追いかけ回すタイプのアンデッドも見つかり非常に危険度が増してきているらしい。
青い壁はもう壊れる。
ギリギリのタイミングで会議が終わり各々作戦と通達を始める。
アンデッドたちへの反撃のときだ!
「エネルギー供給停止!」
「「エネルギー供給停止!!」」
号令繰り返しとともに青い壁結界を発生させるマシンに魔力注入が止められる。
急いで整備士や魔術師たちが下がれば限度が来ていた青い壁結界は一斉に崩壊。
轟音をたて崩れそして光となり消える。
アンデッドたちは一斉になだれ込んできた!
「吹きとばせー!!」
「「発射!!」」
そしてアンデッドたちが爆発!
みな吹き飛んでいく。
当然アンデッドたちの邪気は払い済み。
一気になだれ込み渋滞を起こすのはわかっていたのでニンゲンたちの大砲が一斉に火を吹いた。
前方にいたアンデッドたちは空を飛び身体が散り吹き飛ばされ……
黒煙が上がった向こう側。
一切怯むこと無く次のアンデッドたちが突撃してくる!
「抑えろ! やつらをこの地から排除する!」
「「ウオオオーーッ!!」」
そして兵たちの刃がきらめく。
互いの大軍が衝突だ。
結界外に閉じこもっている間罠もたっぷりしかけてあるらしい。
そこらへんはニンゲンたちやジャグナーたちがうまくやってくれるはず。
さあ私は……
空魔法"ファストトラベル"!
私はここから帝都を攻略していかねばならない。
ということで元帝都平野で現黒い山脈に到着。
正直まだ剣ゼロエネミーがないのは困るが……
周囲が派手に暴れているため帝都近くであるここらへんは警備が薄くなっているようだ。
それでもまだまだかなりいるが……
ほとんどアンデッドだからうまく誤魔化そう。
アンデッドは生体感知だ。
音を殺し見た目を偽ってもバレる。
だが命の気配さえ断てば平気。
霊衣のローブと呼ばれる服を私用に仕立てたもの。
見た目はボロいローブなのだが着ると不思議とひんやりしている。
これをしっかり来て頭のフードも被る。
ちゃんと耳も入るように設計されていてスポッと包まれる感覚が良い。
きっちり着ていればこの布は生体反応を外にもらさない。
逆に言えば"進化"などで脱げればバレバレに。
とりあえず今近くには誰もいないようだ。
ここから駆け抜けていけば数時間で帝都近辺へぬけられるはず……
急いで走り抜けよう。
スッと足を伸ばせばグンと景色が背後へ伸びる。
久々にケンハリマの姿で長時間移動になりそうだ。
やはりなんだかんだでこれが一番しっくりくる。
"進化"の姿はやはりどこか浮いた気分になるのだ。
足を伝わる躍動がいい。
あとはこの空気がよどんでなければよかったのだが。
ちゃんとお祓い炎石は持っている。
そしてアンデッドのかもしだす気配を除いてもこの場は空気が薄暗くよどんでいるように感じる。
見た目は普通に澄んでいるのに異様に重く濁ったような肌感覚。
走り抜けるさいに毛皮を通り抜ける風がどことなく気持ちの悪い。
似ているのは……そうか。
ここ外界なのに異様に空気中魔力が豊富なのか。
まるで迷宮……しかもその中でもかなりのもの。
弱いものは下手したら魔力酔いを起こすかも知れない。
単に濃いだけじゃなくなんとなく異質……
おかしいな……ここは迷宮ではないのに。
やはりこの異常な土地が原因なのだろうか?
考えている間に正面から見張りのアンデッド2体のゴースト。
そのまま駆け抜けて……
通り過ぎる!
ふう。やはり反応なし。
その場に留まれば怪しまれるだろうが今私は外から感知されてもゴーストのように思われる。
気をつけるに越したことはないがここらへんの相手なら問題なし。
どんどん行こう!
山脈の間の道なき道を駆けてゆく。
谷間の大きな道はアンデッド軍が出番待ちしていてひきしめあっているので絶対通りたくない。
たっぷり休んでいたし身体の元気はバツグン!
黒く柱のような特徴的な地形同士のスキマに……身体をねじ込んで……抜けた!