九百六生目 丁寧
ドラーグとコロロにたいしてほめたたえている修道士ダルウクがいた。
ドラーグはその個性としてとんでもない激運の持ち主。
本人が望まない力や望まないものそれに望まない当たりをとにかく引き続ける。
本人が偶然や奇跡と思っていても行動するなら必ず良い結果が待っている。
ただそれがどれだけありがた迷惑だとしてもだ。
ドラーグはこうしてニンゲンたちの街に潜伏すれば新たに誰かに好かれたくさん引き連れて歩くハメになったりする。
なおドラーグはどうあがいてもドラゴン。
ニンゲンの性別すらあんまり見分けがついていない。
「ドラーグ、コロロ! と……」
「あ! ドラーグ様とコロロ様のお友達の方ですか? お世話になっています、わたくし、ダルウクです!」
さっき"観察"したから知っているけれどしらないフリはしたほうが不審ではない。
「初めましてダルウクさん、ケンハリマです。螺旋軍の方ですか?」
「うーん、そうといえばそうなのですが、そうじゃないと言えばそうではなくて……ほら、この格好を見てもらえば分かる通り、普段は敬虔な修道士をやらせてもらっています。今日は螺旋軍にお呼ばれしたので、断るのも無下かと思い、神の導きとしてここへ馳せ参じたのですが……まさに、わたくしの直感が正しいと、今ここに証明されたのです!」
わりと丁寧に説明してくれたが……
証明といって手を広げた先にはドラーグたち。
どういうことなの……?
「えっと……?」
「いや、僕にもよくわからなくて……なんだか、僕の使ったあの竜の咆哮を見て、探してココにきたらしいんですけれど……」
「そうです! 遠い螺旋軍の待機場所、私が暇を持て余し、無駄な大人たちの策略につきあわされ、神の導きではなかったのかもしれないと悔やみ始めたころ、空を抜ける流星のごとき輝きが遠いあの地でも見えたのです! 現地に行って驚きました……明らかに穢らわしいアンデッドどもが、確実に1撃で、しかも美しい光で全て天へと導かれていたのです!」
「あー、ようは、倒されていたと」
確かにあれは見事な一掃だった。
それがなぜ彼の琴線に触れたのかがわからないが。
「そう! 周囲の者たちに誰が行ったのかを聞いてまわり、こうして馳せ参じた次第なのです!」
「えっ、ではニンゲンたちには……」
「特に用はありませんね!!」
ひどい言い切りようだ……
まわりの兵たちも呆れているのか困惑しているのか気楽な表情。
対してダルウクは完全にでっかくて強いものを見る少年のそれ。
「むう、パパ、コロロ……の!」
「わたくしはコロロ様とドラーグ様はセットで愛していますとも! コロロ様がドラーグ様と共に勇敢に神の力を示すのを間近で見てみたい……!」
「僕、蒼竜神でも螺旋の神でも関係ないのに……!」
「この世界は全て光様との関わりがあるのです。そこには等しくありますとも。だからドラーグ様の放つ光とコロロ様の勇姿が示された通りなのだから、貴方達はフォウス様の遣わされた者なのです! またぜひあの光を見せてください! アンデッドたちに救済の鉄槌を!」
「ひえ〜! ろ……ケンハリマさーん、たすけてー!」
なんかこういうの蒼竜教の隊長ともやっていたな……
だいぶノリが違うけれど。
ダルウクに詰め寄られドラーグはたじたじだしコロロも乗りながらジト目を送り続けている。
「ええっと……ああ、そういえばさっき螺旋軍の大人たちによるくだらないなんとかって言っていたけれど、もしかして螺旋軍の方に連絡取れたりします?」
「えー、まあそうではあるんですが、けどなあ、あの人達と話すの疲れるんですよねえ……」
「あ、僕からもお願いします!」
「ドラーグ様たちの希望ならば、迅速にこなしましょう! 内容は? 具体的に誰へ!?」
うわあわかりやすく転身した……
螺旋……つまり光教って確かドラゴンダメだったような。
まあダルウクも言う通りコロロがのっていたりアンデッドを焼き払ったというのが大きいのだろうな……
その後ドラーグがダルウクを連れ螺旋軍の元へ。
戻ってくると螺旋軍指揮班のひとりを連れて帰ってきた。
会議室へ通すとかなりざわついたが話は大きく進むこととなる。
螺旋軍を代表して『現場の混乱による通達の遅れおよび人員不足による連絡不足』を謝罪された。
明らかに形だけの謝罪。
それをその場にいる全員が理解して飲み込んだ。
場を円滑に回すためのものだと言うのは理解できたからだ。
その後会議は進み螺旋軍ははっきり味方すると再度宣言。
またアノニマルース軍の有用性を認めた上で螺旋軍の範囲には不要……とも。
明らかな利益争い。
巻き込まれると厄介なのでジャグナーは素直に下げ……
話はまとまった。




