九百五生目 光教
会議の机の上にお祓い炎石をぶちまけ続けていた。
「な、なんだ!? 魔法か!? この石は一体!?」
「もしやまさかこれは……!」
「俺達の対アンデッドの邪気用兵器、できたてほやほやのこいつを100そちらに預ける! 使ったり研究してもらっても構わないし、データも渡す。ガンガン複製してくれ」
「い、良いんですか!? 奥の手……明らかに希少でしょうに」
アノニマルース自体が参戦したことにより作り手の減少で昨日は200ほどしか作られなかった。
そもそもメインで作っているユウレン率いる死霊術師の才があるメンバーがいい加減ダウンしている。
こちらの作成ペースはもう下がるばかりなのでむしろ帝都奪還軍に作って欲しい。
「なに、いきなり別の兵士に背中を預けて安心といかないのはこちらもだ。うっかり邪気をまだもつアンデッドに襲われ、発狂されて斬りかかれたくはない」
「ほう、じゃあ遠慮なくいただこう」
「お、王!」
「大丈夫、本物だ」
そうだった。
ウォンレイ王は"観察"みたいなスキル持ちだった。
思わぬところからフォローが入ってよかった……
私達には"観察"みたいなスキルを使わないのかな。
まあ"影の瞼"で弾いてないから使われていないことを理解しているだけなんだけれど。
「……これをしかるべきところへ」
「「ハッ」」
「はあ……螺旋軍の動きもまだまるで分かっていないというのに、こうも頭痛のタネを増やされるのは困るんですよ……」
リユウ指揮官長の声に兵たちがお祓い炎石を運び出す。
100個もあるので大変そう。
「螺旋軍ねえ、確かにこっちを撃ち落とそうとしてきたりはしたが、あくまでニンゲンたちの軍なんだろ? 味方じゃないのか」
「……正直彼らについては味方と思っていたのが時期尚早だと考えていたところでしたよ。彼らは彼らの理屈と理論で動いている……それを承知でも高い戦力は欲しかった。けれどこんな、我々とまともに情報交換すら行わない間に勝手に進軍し続けるだなんて……」
「正直、邪気やアンデッドへの対策が完備すぎるあたりも……情報交換してほしかったものだ。打てる手はあった。だが彼らはしなかった……」
リユウ指揮官長やウォンレイ王も声とともに顔が沈む。
オウカの不安がっていた心配が的中した……!
ドラーグは先程からずっと何やら考え込んでいるが……
「ドラーグ、どうしたの?」
「いえ、螺旋……螺旋軍って、光教の方で、良いんですよね?」
あっちのほうでアレコレとあーでもないこーでもない言っている間に小声で話す。
「いえ……その、今外にその光の方がいらしていて……僕の残りで対応中なんですが」
「えっ」
なんなんだそれは……
いつの間にそんなことが。
「――だからまだ私としては、彼ら魔物の軍は――」
「――なんだから、もう青い壁が壊れちまうぞ、こちらとしても協力してもらわなくちゃ困るし、そっちはもっとだろう」
「――というわけで、私はやはり螺旋軍とちゃんと密に連絡をとらねば総崩壊を――」
こっそりと外に行ってみよう。
あれはしばらく進展がない。
簡易施設の外。
そこにはドラーグとコロロの姿。
そして兵たちに……場違いな服装の男性がいた。
それは明らかに戦いに来ていないような修道服。
大きく螺旋の紋様が見え明らかに螺旋教の修道士……
なんだけれど。
おかしい。螺旋軍はここからかなり遠い位置にいるし……そもそも鎧着ていないし。
なんなら彼武器らしいものが見当たらない。
まさに後方で支援するための部隊員……のようだが。
なのにだ。
彼は戦場ににつかわしくないキレイな格好でまだ若いのに。
多くの螺旋軍兵を凌ぐほどの隠しきれない力が見て取れた。
彼は……強い! "観察"!
[ハイ・E・ヒュムLv.40 比較:そこそこ強い]
[ハイ・E・ヒュム 個人名:ダルウク
自身の肉体が半霊と化しているニンゲンの中でもいくつかのトランスをこえたもの。見た目と違う膨大な力により、自身の質量すら変えられる]
なんなんだろう彼は……
とりあえず応対しているドラーグの元へ……
うん? なんなんだろう彼のあの顔……
ドラーグを見ている顔が凄まじく幸福そうな……
「――だ、だから、そんなにすごくはないですって! たまたまうまく決まっただけで……」
「いえ! あの輝き、技、そして貴方の美しさ! さらに人の子が乗るその姿こそ、聖典にある神の遣わす者のひとつに違いありません! 自信を持ってください!」
……え。またドラーグ何に絡まれているの。
こう警戒モードじゃなくて……
ドラーグの力で引き寄せた相手っぽいなあって気分になってくる。
ドラーグは気づくと自身の激運とも言うべき力で縁を引き寄せる力があるのだ。




