九百四生目 説得
「こんにちはー、あれ、すごくもう揉めている……」
ドラーグはこんな狭いところに入れないので1%の姿。
99%分はコロロと共に外で待っている。
1%だととてもファンシーなのが印象良い。
会議室にはこれでメンバーは揃った。
指揮官長や軍団長以外にも会議していた面々は何名もいるためひどくざわめく。
その声たちは軍団長ウォンレイ王の咳払いで止まった。
「詳しい話は後で聞こう! まず私が軍団長ウォンレイ王だ」
「王!? 彼らの話を聞くとでも!? そもそも奇っ怪にも、なぜ魔物が帝国語を話すかも不明なのに……!」
「リユウ、彼らは渡りに船となるかもしれないのだ」
「ぐっ……」
リユウ指揮官長……どこかでみたことあると思ったら。
前私がニンゲンの冒険者として彼らから依頼されるさいに説明を取り仕切っていた臣下のひとりじゃないか。
余計に気をつけないと。
リユウ指揮官長は一旦下がったものの不服そうだ。
「良いか? 俺はジャグナー、アノニマルース……魔物たちの軍団長だ」
「私はロ……ケンハリマと言います。サポートです」
ジャグナーやドラーグが何か言いたげな目線をよこしたものの各々察してはくれたらしい。
察した中身は合っているかどうかはわからないが。
名前は言えない……!
「ドラーグって言います! 少し隊長さんのお手伝いをしていました!」
「むしろこちらがドラーグ殿に助けられた。壊れている結界は彼らが補っていると言っても過言ではない。錯乱した兵士たちに正規の治療の仕方も伝授された」
隊長がフォローしてくれた。
会議室の面々は訝しげな表情だが。
あの小さく浮いてる1%ドラーグではほとんど説得力が無いのはわかる。
「よし、挨拶はこんなもんでいいな。うちらがやることはひとつ、そちらの支援、そして最終的には帝都をカエリラスから開放することだ」
「何故ですか!? 魔物たちなど帝都を救う持ちかける利点はないでしょうに」
「大アリ何だよな、それが。魔王復活の阻止だ」
会場から息を飲む音が聞こえた。
そう。彼らにとって帝都を乗っ取られたのが最悪なのであって敵の目的はあくまでサブだ。
しかし私達としては敵の目的阻止こそがメインとなる。
「ほう、魔物なのに魔王の復活を阻止したいのか」
「そうです、魔王を復活させたいというのならわかりますが……」
「何言ってるんだ、今更姿も名前も存在もしらないようなのが出てきて王を名乗っても、ただのアンデッドでしかないだろ。ニンゲンはポッと出の王に従うんか?」
「それは……ありえないですが、これは魔物として、我々と感覚の違う話。話をすり替えないでいただきたい」
「おっと! それは悪いな」
ジャグナーはわざとらしくのけぞる。
「でも、カエリラスの構成員はニンゲンも魔物もいます! だからこそ、ここの感覚は似ているのかと」
「ふむむ、確かにそうですが……」
ドラーグが助け舟を出した。
「分かった。とにかくだ、キミたちは我々帝都奪還軍の手助けを……あの光で邪気を祓うことをしてくれると、そういうことだね?」
「王!」
行軍の道に石をひとつひとつ拾って歩きたい慎重派のリユウ指揮官長。
ただウォンレイ王はそれも限度があると考えているみたいだ。
実際に今が攻め時になる最後のチャンス。
「ああ。しかも帝都自体に興味はない。しっかり俺たち味方の魔物のことを覚えていてくれれば良いさ。とにかく数が足りない。数が少なすぎて戦線維持すらままならねえ、俺達だけで戦況は打破できん」
「そのようなこと、いきなり現れたあなた達に言われましてもね……このさいはっきり言いましょう。こちらとしては、そちらに信用たるものがないのです」
「リユウ指揮官長殿、彼らは私が保証人で――」
「そうではないのです。表面的な協力姿勢とは別に、彼らがどうこちらを取るかまで信用ができません。仮に私が了承したところで、果たして兵たちは見ず知らずの魔物に……兵に、いきなり背中を預けることはできるでしょうか? コレは現場の納得させるための話であり、私はその代表です」
「なるほどね……確かにいきなりしらんやつに背中を任せろと、上から命じられたらたまったもんじゃねえからな」
リユウ指揮官長の立ち位置は現場によっているらしい。
今の言葉に隊長もウォンレイ王も黙する。
ジャグナーの言葉にココにいた他の面々はただざわついた。
「やはり現場が――」
「戻ったらなんて説明すれば――」
「魔物って結構かわい――」
「もちろん、こちらとしてもそう言われることは想定済み。こちらには信用のかわりにそちらへ預ける。ローズ、あれを!」
「うん」
私の出番だ。
少し前に出て範囲指定……
会議に使っている机の上に……
空魔法"ストレージ"で亜空間の穴を机の上に開ける。
中からお祓い炎石がジャラジャラとたくさん出始めた。