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九百三生目 悪化

 ドラーグが影の中から崖の上へと登りこっそりと外を覗き見る。

 バレたら帰るのが大変なのでそっと。

 影の中はあいてからは工夫してもかなり見えにくいと思うけれど……


「どれどれ……え……?」

「なにか……ヘン」

『うわあ……』


 ドラーグが見下ろすのは帝都方面。

 いたるところにアンデッドたちが潜み警戒している。

 さらには軍勢が切れ目なく道のりで続いていた。

 

 それだけでも引くが予想できた部分。

 肝心の帝都がよくわからなかった。

 見下ろした地域にあるものは……自然。


 元々あった帝都にこの世界では見たことのないような禍々しい植物たちが巻き込み根をはり樹立していた。

 まるで別の世界同士が融合し合ったかのような……

 互いの物質がぐちゃぐちゃに混ざり合いそれなのに成立している。


 なんなんだあれは……

 とりあえず近場で"ファストトラベル"できそうな場所は見つけた。

 詳しい帝都調査は後だ。


『ドラーグ、なんとかなりそうだよ! お疲れ様! 帰り気をつけてね!』

「わかりました、夜の魔物と交代しますね!」

「おわり?」

「うん、クワァコロロおつかれさま」

「……ありがとう」 


 ドラーグは再び深く影へともぐった。






 くらくなれば夜の魔物たちと交代の時。

 できているお祓い炎石半分は夜にもたせているためどうしても総数がすくないのだ。

 その分アノニマルース軍の継続戦闘能力は高い。


 ニンゲン軍は夜になるとさすがに引っ込んでしまう。

 だが壊れた青い壁のところは結局常に守らねばならない。

 そのために夜行性の魔物たちが活躍するのだ。


 夜行性なためもちろん夜目は効くし体調もばっちり。

 ドラーグが空間の穴へと向かったらちょうどコウモリやらフクロウやらのアノニマルース軍が空へと飛び去っていた。

 みなお祓い炎石持ちだ。


「よろしくおねがいしま〜す!」

「ああ!」「ありがとう!」「任せなぁ!!」

「……パパ、ねむい……」


 コロロはさすがに疲れ切ったらしい。

 夜の軍がでていくのを見届けたあと交代として空間の穴へ入る。

 すぐにアノニマルースへ到着だ。


「よしよし、まずはごはん食べようね」

「ん」

『ふたりとも、おつかれさま!』


 そういえば私もおなかが空いたが戦術塔から離れられない。

 配給があるはずだし待とう……







 青い壁が破られた。

 その報が入ったのは明朝。

 壊れかけていたのこり2箇所が夜に活性化するタイプのアンデッドたちに破壊されたらしい。


 さらにマズイことが起こっている。

 連鎖的に破壊が起こり今では青い壁結界全体に大きな亀裂が。

 もはや限度だった。


 破損箇所そのものはアノニマルース軍とニンゲン軍が共同で守っているものの……

 全部壊れたら無理だ。

 そうなれば螺旋軍も苦しい局面に陥る。


 私の戦術塔電池としての役割は昨日だけで十分。

 医者(コル)の診察を受け絶対安静をといてもらい……

 ジャグナーと共に現地へと向かった!


 すでにドラーグは昨日の隊長と合流済み。

 ドラーグに私達のことを紹介してもらいそのまま本題に入った。


「――それで、私達はニンゲンの軍団長と話をしようかと思いまして、指揮権のトップの方はどこにおられます?」

「アンタ、見たところ戦場(いくさば)での立ち回りはかなり出来る叩き上げのようだが、さすがに指揮権のトップではないだろう?」

「御名答。私などこの小さな部隊をまとめ上げるのみ。指揮権としてのトップと言えば、軍団長であるウォンレイ王よりも、現場指揮官長であるリユウ殿の方が良いだろう。私もそろそろ時だと思っているから、行こう」

「ああ、話がわかって助かる!」


 ジャグナーの言葉にすぐ隊長は動きを見せる。

 やはり考えることはここまで来れば同じらしい。

 兵たちの精神汚染は順に治療・自然回復している。


 アノニマルース軍が青壁結界の近くを邪気祓いし続けているというのも大きい。

 動くなら今なのだ。





 軍団長であるウォンレイ王たちは仮設拠点の奥で会議を開いていた。

 頭を悩ます要因しかない。

 そしてそこには現場指揮官長リユウの姿も……


「――となると、もう攻めに転ずるしかあるまいだろう」

「王! あの螺旋軍の動きも読めないどころか、新規勢力まで場を荒らしているのです! 撤退はともかく攻めになど――」

「ならその謎の新規勢力の話させてもらうぜ」


 ジャグナーに続いて私も会議の簡易部屋へと入る。

 私の魔物としての姿はウォンレイ王に見せるのは初。

 ちゃんと初対面らしく振る舞おう。


「何奴!? 警備はどうした!?」

「リユウ指揮官長殿、私の案内で通したのだ。落ち着きなされ」

「何……!? 貴殿は……! あの命令を無視した隊ではないですか! どの面を下げてここまで来たのです!」


 もう揉めそう……

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