八百九十八生目 質量
ドラーグの突進爪斬りと肉切り包丁ゾンビの巨大な包丁がぶつかり合う!
互いの光が衝突して火花が散る。
だがそれだけではない。
ドラーグは突進滑空しつづけている。
肉切り包丁ゾンビよりも大きいドラーグの突進を喰らって無理やり押し切られる。
包丁と鍔迫り合いして足は踏ん張っているのに身体がどんどん無理やり下がらせられていた。
そして対してドラーグ勢いが殺され後ろ足を地面に触れる瞬間に強く踏み込む!
地面が爆ぜ再加速によって肉切り包丁ゾンビが強く押され……
ついには剣が弾き飛ばされる。
「れん……げき!」
コロロの言葉どおりさらに畳み掛ける。
両爪をゾンビに押し込みその大きな身体を裂く。
大きいと言っても人間大。
ドラーグからすれば小さな質量。
刺しねじ込み貫いて切り開く!
「そうーれ!」
あっさりと肉切り包丁ゾンビは爪で細切れとなり動かなくなった。
ドラーグの心は戦闘向きではないがふたりいるだけで見るだけでも気味の悪いゾンビたちにもしっかり立ち向かえるんだなあ……
すごくパワーも速度も兼ね備えていた。
「……しっぽ上攻撃」
「うん! えっ?」
そのままドラーグは見ずしっぽを振り上げる攻撃。
後方から前方に何か打ち出された。
あれは……空中に浮かんで奇襲を仕掛けようとしていたゴーストタイプのアンデッドなのか。
ローブをまとったその姿が大きな鎌ごとこちらに来る。
ドラーグもちょっと驚いたらしい。
「……飛ばして」
「う、うん!」
だがコロロは"同調化"していてすぐに指示を出したらしい。
簡単な口頭語も本当はいらないのだが気分の問題もあるし指差し確認みたいなものなのかな。
ドラーグが爪に纏っていた光を空に向かって斬り裂けば飛んでゆきローブをズタズタに引き裂いた。
「ふぅ、多い……」
「まだまだ……?」
「……うん、そうだよねぇ」
ドラーグが見渡せばあらゆる方向にアンデッドたち。
当然このままでは勝ち目などがない。
なので……
「うまくいくといいな……ニンゲンたちの軍解放」
先発隊は壊れかけの青い壁のところのアンデッド邪気を祓いニンゲンたちと話していた。
ドラーグが周りのアノニマルース兵と共に戦地を駆け抜け多くのアンデッドたちを蹴散らしている間にだ。
螺旋軍にはあんまり近寄らないことにしたみたいだ。
そうして3箇所の青い壁結界破損部位で言葉を交わしたところ……
ついに1箇所と話がついた。
指示がありドラーグはそこへと向かう……
私はあくまでドラーグ視点でしか物事を見られない。
戦術塔に横たわっているものの今日は電池に徹している。
戦術塔そのものは機能していて情報集積と伝達を行使している。
だが今回私には情報が渡されない。
やる必要ないからね。
私は直接戦場を見て私が向かう時を 想定するのだ。
ドラーグがアンデッドたちをかき分けるように倒し進む。
石を投げればアンデッドに当たる程度にアンデッドだらけだ。
壁際に近いからだろう。
だがすでに邪気は消されている。
先発隊のおかげだ。
向こうのほう壁際で鳥の魔物が乱戦を避けつつアンデッド相手に立ち回っているのが見える。
「おまたせしました!」
「なんとかこれたぞ!」
「急いでくれ! わたしひとりじゃあ耐えきれん!」
アノニマルース兵たちもドラーグに負けじとアンデッドたちを切り払っていく。
まだまだ元気だからただのゾンビやスケルトンのアンデッドたちに負けはしない。
その代わり疲労し始めてからが危険なのだが。
青い壁はすでに大きく亀裂が入っていていつ崩壊してもおかしくなかった。
光の具合もまるで切れかかった灯りだ。
どんどんと蹴散らしはするがそれ以上にくるアンデッド軍には本当に恐怖しか無い。
「はあ、はあ……うう、臭い、やだー」
「……そろそろいける?」
「……あ、本当だ! そうだね、やろうよ!」
コロロのささやきに何やら気づいたらしい。
『いけるって?』
『見ててください! これが僕の……とっておきです!』
ドラーグがコロロを抱きかかえる。
コロロは何やら耳に手を当てドラーグが身構え震える。
ドラーグが念話で味方に何か警告したのか仲間軍はさがり先発隊鳥魔物は飛び去る。
『一体何を――』
「これ、すごく使いづらいんですよねえ……戦えば戦うほどたまる力を解き放つから、やるにな戦わなきゃいけないし、範囲が広くて……」
「……でも、すごい」
戦闘し続けるとたまるパワー……そんなタイプのスキルもあるのか。
それではそこまでして放つ力とは一体。
腕が刃の細長いタイプや空から黒々しい球弾を放とうとするタイプそして大量の知性なきアンデッドたちが迫る!