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八百九十二生目 突入

 ドラーグはぐんぐん空へと飛び加速していく。

 前方に遊撃隊が見える。

 先に飛んだ大型鳥魔物たちだ。


 彼らの高度飛行はとどまるところをしらない。

 加速の末に音を置き去りにし雲を突き抜けていく。

 きれいに雲のすきまを縫って正確に天へ。


 そして……

 完全に雲の上へ。

 ここから先地上の喧騒があることすら匂わせないあまりに落ち着いた空間。


「全員、いるか!」

「大丈夫、今日は流石にサボってるやつはいねえ」

「この先が交戦区画か……俺達の本格的な出番はこれが初、楽しみだな……」

「つってもまあ、今回はこの新兵器の試し打ちみたいなもんだろ?」

「現場は地獄らしいな……ニンゲンたち、さぞ驚くだろうな」

「驚くニンゲンが残っていればな」


 最悪の想定もありうる。

 それはこの雲を再度降下するまではわからない。

 ……時間にしてわずか待っただけですぐ届いたのは上空飛行がそれだけ速かったから。


「ここが降下ポイントだ! ってなんなんだこれは……」

「天気明らかにおかしいっすね。ここだけ渦巻いているような……」


 いきなり区切られるように現れた渦巻く暗雲。

 見下ろしているからかよりくっきりおかしいのがわかる。

 場に緊張が増していくのがドラーグごしにわかる……


「……ドラーグ! 我々が先に降りる! テンポを遅らせて、通信後にそちらは突入してくれ!」

「わ、わかりました!」


 どうやらさっきのように同時突入から変更になったらしい。

 ドラーグは少しだけ待機。

 危険が思ったよりも深そうだからかな。


 遊撃隊リーダーが先に飛び降りて後にみんな続いていく。

 ドラーグは黒と白の隙間から飛び降りていくその姿を見送っていた。


「大丈夫ですかね……」

『信じよう』


 ドラーグが思わずつぶやいた小声。

 不安になる雲行きだった。





 暗雲の上にただずんで少したつ。

 ドラーグは速度を殺さないようにうまく気流にのってぐるぐると回っていた。


「数分たちましたがまだですかね……?」

『きっとすぐ来るよ……!』

「そうですね……あ!」


 ドラーグがいきなり黙って別のことに集中しだす。

 これは……念話がきたかな?


 少し待てばドラーグの動きが変わりだす。

 これは……降下をするつもりか!


「かなり下は大変みたいです。うっかり流れ弾をもらわないように気をつけながらおります!」

『わかった!』



 ぐんぐんと降下していく。

 落下は勢い凄まじくなんだか見ているだけで腹の奥底が冷える。

 当然私の身体は陸の上だが。


 あっという間に雲の層を抜ける。

 そこに広がる景色は……

 黒。


 黒い世界が周囲を侵食しだしていた。

 最前線だったところは放棄され見るだけで気味の悪くなりそうな邪気を放つグロテスクなアンデッドたちが軍勢をなして跋扈している。

 ドラーグが目の前に御祓い炎石を掲げた。


 ゆらゆらと炎がきらめいて淡く光が放たれていて不思議と心が落ち着く……

 私は結局視界を借りているだけなのでたいして見て発動する苦しみは薄いがドラーグ自身が見て癒やされることで私にも少し効果があるらしい。

 この石が光っている間は敵の効果圏内ということなのだろう。


「ふう……なんとか……落ち着きました。思ったよりも、不思議と心がざわめきますね」


 ニンゲンたちは最前線を放棄しているものの後退して大きな結界壁をひいて守衛している。

 最前線だったところは……アンデッドたちと荒れた死体だらけ。

 しかもなんとなく増えている気がする。


 おそらく死体からアンデッドを増やすアンデッドもいるのだろう。

 ここまで来るとそのぐらいの想像はつく。


「来たか! なんとか高空の安全はチェック済みだ!」

「隊長さん!」

「俺はこれからこいつの試験運転をしてくる。危なくなったらすぐに上へ逃げろ! 止まるな!」

「は、はい!」


 遊撃隊隊長が近くに飛んできた。

 これから御祓い炎石を使うらしい。

 効果が出ると良いが……


 地上は青白く輝く大きな結界によってアンデッド押し寄せる広がった戦地となんとか生き残ったニンゲンたちが抵抗する後方地に二分割されていた。

 おそらくあの結界自体はもともと仕組んであった策のひとつだろう。

 結界ひとつの壁に何人もの魔道士たちが設置してある魔道具に必死に力をこめている。


 問題はいつまでもつか……だ。

 アンデッドたちはあの壁をこえることは難しい。

 触れると吹き飛ばされるようだ。


 ただニンゲン側からも干渉は難しいらしい。

 なのにアンデッドたちは壁を跳んだり飛んだりで超えてくるタイプも見かける。

 高空以外の場所は制空権を必死に争い続けていてたしかにうかうかしていられない。


 ドラーグは素早く飛びつつ隊長を見送り……

 本来の目的のために上空を素早く飛び回りつつ肩にさげたものを取り出す。

 大きな射影機だ。

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