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八百八十七生目 安静

 無駄に機敏に動いてクルクルと跳んできた影。

 それは足元にツタを伸ばしてクッションにし華麗に着地した。


「ホルヴィロス!」

「任せた」


 白い植物の犬みたいな神ホルヴィロスだ。今日は眼鏡なしらしい。

 私の秘書をやっていてくれている。


「キミが倒れた理由、それをグルシムくんからちゃんと聞いたよ!」

「えっ、グルシムとちゃんと話せたんだ」

「私が割と得意だからね! そういうこと! じゃなくて……」


 あのグルシムとさっくり会話成立させるとは……

 とか考えていたらホルヴィロスがグイグイ近づいてきた。

 顔が近い!


「な、なに?」

「過労だよ、か、ろ、う! 特に命に別状はないけれど、ここ最近ムリが大きすぎるってさ! ちょっと目を離すとこれだから……! 新しい神も連れてきちゃうし……医者がいいと言うまで絶対安静だよ」

「そ、そんなー!」


 まさかの絶対安静宣言。

 確かにこのところやたら"進化"維持を強制させられたり死の間際で戦い続けたが……

 こんなところで反動来るとは。


 わりと"四無効"のおかげでちゃんと休息はとれていたはずだが。

 むしろそれでいけると思いすぎたのか……

 ホルヴィロスは部屋の向こうへと消えてゆく。


「……治そうと思えば治せるけどいい機会だし寝かせておこ」

「ん? 今何か言った?」

「早く寝ててねって!」


 うう……まさかしばらく休息をとらされるとは……

 グルシムもこちらを一度見てから出ていってしまった。

 組み合わさった神格のこと聞きたかったんだけれどな……蒼竜に。


「今僕のこと思わなかったかい!?」

「えっ!? どこ!?」


 この声は!

 開け放たれた窓からのぞくツノ。

 ガウハリのような姿をしている帽子持ち。


 間違いなく蒼龍のガウハリ変化バージョンだ。


「ハハハッ、倒れたと聞いてやってきたけれど、元気そうで何よりだよ!」

「おかげさまで……じゃなくて、そーくん、神格のカケラたちがくっついてひとつになったんだけれど、これどうすればいいんだろう?」


 本題はそこだ。

 わざわざ大きな神に訪ねたいことなど少ししかない。


「どうも何も……なんにもないけれど?」

「え!? なんかすごく光ったりしたのに!?」

「確かに神格は最低限出来ているね。ただソレはただの器さ。中身も無ければそれの力の恩恵を受けることもできない。神じゃないからね」

「ええ……」


 スキルはありがたいけれど神格が揃っただけではなんにもならないのか。

 蒼竜が楽しそうに笑っている……


「フフ、でもこんなに早く揃うだなんて、本当にキミは意外だよ!」

「……その顔、次はどうしたら何か良いことが起きるか、わかっているんだよね?」

「うーん、知識としてはね! ただ僕はほら、生まれつき神だから? そんなもの勝手に成立していたし……」


 そのようなことは前も聞いた。

 それでもニヤニヤとした面が何か情報を握っているのはわかる。

 ただ経験則上こういうときは何か聞いても答えてくれない。


「……わかったわかった、その時を待てとか、そういうやつでしょ」

「ずいぶん察しがいいじゃないか!」

「そりゃこれだけ何度もやっていればね……」


 ううむ。

 ただ蒼竜がその時を待てということは何かきっかけが来る可能性があるということ。

 ただし待つ感覚が蒼竜感覚なのでまともには付き合っていられない可能性もあるが。


「それじゃあ助手、少しだけヒントをあげよう! それは器、カラでは観賞用でしかない。けれど、それは次へ進むための、世界に認められた証みたいなもの。あとはそうだね、奇跡でも起こせれば良いんじゃあないかな?」

「えっ、ちょっとそれだけじゃあなにも……! あっ」


 さっさとどこかへ行ってしまった……

 仕方ない。今は心の片隅にとどめることにしよう。

 器か……入れ物だとしたら必ず入れるものがあるはず。


「今誰かとはなしてたー?」

「なんでもなーい!」

「ならちゃんと寝ててねー!」


 ……ホルヴィロスに部屋の向こうから怒られてしまった。

 きっと聞けば分かる範囲で色々教えてくれるはず。

 ただ蒼竜自体が話さなかったということは単に面白いからだけではないだろう。


 おそらくは……私が自ら掴み取らなくてはならないのだ。






 暇なので時間だけはたっぷりあった。

 しかし世界情勢の方は暇とか言っていられない。

 切羽詰まった状態が目の前に迫っている。


 アノニマルースが派遣した帝都現地組から情報が入ってきていた。

 ニンゲン軍による帝都包囲間近と。

 現地組と"以心伝心"でつないでみよう。


『もしもし? ローズ?』

『うん、ちょっと現場を見させて――』

『ちょうどよかった! こちらから連絡をしようとしていた時だったんだ! すぐ見てくれ!』


 えっ?

 もしかして現場に動きが!?

 視界と聴覚を共有化して……と。

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