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八十四生目 残念

『尻尾は! 尻尾はダメでしょ!!』

「あらそうなの? スケルトンたち、尻尾を切り落としてあげなさい」

『鬼! 悪魔! 尻尾がない種族にはわからないんだぁ!!』


 うん、尻尾に剣が刺さったらいくら皮が厚くとも痛いよね……

 そんな戦闘を尻目にアヅキが魔法を唱える。

 雷の剣が空中に現れ左手で受け取った。


「やっと主から授かったコレを使える……!」


 アヅキの両手には私が作ったガントレットを装着している。

 問題なく稼働しているらしく装着感が抜群に良い。

 それがアヅキを通して身体リンクで伝わってきた。


「ふっ!」

『ぬわっ!? タンマタンマ!!』


 強く蹴ると同時に羽ばたく。

 短く飛んでその勢いのまま斬りつけた!

 相手は慌てて雷の剣に剣を合わせる。


『あばばぱば!?』


 相手は金属で出来た本物の剣。

 それに電気が質量を持って出来た剣に合わせれば当然感電する。

 ギャグのようにケイレンしたあと吹き飛んだ。


『ちょっ、それはズルいって!』

(ずる)い? それはこちらの話もまともに聞かずに不意打ちしてきたお前が言うのか?」

『精神攻撃もシビレルるる……』


 何とか立ち上がる時に大骸骨による斧が迫る。

 すんでの所で身を起こして避けた。


「ちっ、後少しで首から下の尻尾を落とせたのに」

『それ身体全部だよね!? うわっぷ!?』


 ツッコミの間に霊魔が迫っていて慌てて毒魔法。

 2体ほど溶かされ残り6体に……あれ。

 いつの間にか増えているね。


 アヅキが迫るが大トカゲは剣を合わせないように身をひねる。

 かわりに毒を中距離から飛ばす。

 ビュッバババッ! と重たい液体が飛散する。


 アヅキは自身に来るものだけ冷静に右拳外側でそれを受けて払った。

 ガントレットの右手は小盾のようにしてある。

 毒液くらいなら大丈夫そうだ。


「さすが主の作ったものだ。何も通さぬ」

『うわ、良いなあそれ、どこ製? オレも欲しい』


 軽口を叩いているが大トカゲには焦りの色が見え始めている。

 強敵なのがはっきりと感じとれたからだろう。

 構えが変わる。


 両手で剣を持ち上段の構え。

 本気になったか!


 大トカゲにしてみればユウレンを先に倒したいはずだ。

 しかしその前にはアヅキと骸骨たち。

 油断すれば死角から霊魔が迫る。


 一瞬強い殺気が放たれた。


『イヤアァ!!』


 叫びからの一歩。

 早い!

 アヅキが剣を合わせようと……して慌ててガントレットでのガードに切り替える。


 激しい火花と共に金属同士が激突する。

 アヅキに痛みが走る、がなんとか逸らす。

 そのまま振り抜かれた剣は地面を抉り土煙をあげた。


 土煙の中から大トカゲの剣が振られる。

 大骸骨の斧に横から当たるとヒビが入った。

 なんて威力だ!


『さっきのよく避けたのだ!』

「武技だな!?」


 さらに高速で剣が振られまくる。

 アヅキも早すぎで剣がかち合わない。

 ガントレットで必死に防ぐ。


 大骸骨たちも善戦しているが猛攻に押されだした。

 足運びが早く霊魔たちも避けられてしまう。


『武技、"兜割り"! 力と技でで叩き割る上段の振り抜き!

 まともにかち合えば砕きわるよ〜!』


 自分から技の詳細を話してしまうとは。

 やはり、どこか残念な感じがする……

 つまり、上からの振り下ろしに気をつければ良いのかな。


 そしてこの残念さを利用しない手はない。


(……というわけでよろしく!)

「ふふふ……なるほどね。

 ねえ? そんなに凄い武技があるなんて、他にも凄いスキルあるのかしら?」


 ユウレンがそう声をかける。

 かかってくれたら御の字と言ったところだが……


『もちろん! さあ見てなよ〜、オレの武技"斬り抜け"!』


 剣骸骨相手に走りながら的確に剣を振るっていく。

 足運びが独特で、早い!

 ……それにしてもこんなにあっさりひっかかるとは。


「ほほう、まだまだあったりするのか? どうだ?」

『そりゃあこのオレだからな! まだまだあるよー! そうれ次は武技"五月雨(さみだれ)突き"!!』





 そしてその後も調子に乗せられガンガンと技や魔法を披露した。

 いやあ、本当に知らなければどれこれも危険で。

 何体の骸骨や霊魔たちが吹き飛んだか。


 実は凄い強いというのは、とてもわかった。

 この森のたいていの魔物では到底勝ち目がない。

 間違いなく一方的に狩られる。


 だからこそ。


『はあ、はあ、オレの最強の武技どうよ、はあ』

「ということはそれが最後ってこと?」

『はあ……もちろん、オレの強さならこれだけあれば、向かう所敵無しで……あ、あるえ?』


 やっと気づいた。

 とたんにわなわなと震えだし、ニンゲンなら青ざめていそうだ。


『しまったあああ!! 乗せられたああ!!』

「じゃ、終わらせましょう」

「同感だな」


 とにかく暴れさせられ行動力もスタミナも生命力も削られた大トカゲ。

 一方でこちらは骸骨たちが何度も吹き飛ばされたがその度にユウレンが復活させた。

 大骸骨ならともかく普通の骸骨は低コストらしい。


「はぁ!」

『ま、負けるか!』


 しかしもう技も出し方もその時の感覚も全てわかってる。

 実践して全部語ってくれたし。

 私も手伝おうっと。


("兜割り"だ)

「なるほ、ど!」


 アヅキは剣をガントレットで受け流して地面へ導いてから雷の剣で斬り裂く。


『ぬわぁ!? まさかもう見切ったのか!? ならば』

("五月雨突き")

「ムダだ!」


 アヅキに指示すると的確に反撃してくれる。

 ひたすらそれを繰り返しさらには骸骨たちの猛攻。

 これまでやられてきた分怒りの反撃にも見える。


 ユウレンが不気味に笑う度に骸骨が増える。

 アヅキが不敵に笑うたびに電撃が舞う。

 キレイだった鱗は今や傷だらけだ。


 そしてついにはアヅキの一閃で剣が強く弾かれる。

 大トカゲは痺れで思わず剣を離してしまった。

 くるりと回って地面に刺さる。


「お前の負けだ、さあ、話を聞いてもらおうか」

『う、うぅ……』


 尻もちをついた大トカゲにアヅキが剣を向ける。

 勝負ありだ。





 私……というかダチョウ型の骸骨が呼ばれて一緒に話をすることにした。

 檻の中の私を見て『え? どういう関係?』と言っていたがアヅキが説明してなんとかなった。

 言葉とガントレットの拳で。


「まあ、手荒でしたがとりあえず私達の話も聞いてほしいのです」

『いてて……ってあるぇ? その言葉、オレの……』

「まあそっちの翻訳機みたいなことは出来るので」


 驚いている大トカゲにここに来るまでの話をした。

 私が死にそうになっているが小さき者の村にいけば助かるかもしれないという話。

 自分で話すとなんだか少しずつ実感してしまう。


 私がこのままでは死んでしまうという事を。

 ……死にたく……ないなあ。


 話を聞き終えると大トカゲはひどく動揺していた。


「そ、そんなぁ、死んじゃうかもなんて言われたらここで断ったらオレ、サイアクじゃないー!」

「だからこっちも引き下がれなかったんだ!」

「それで、教えてくれるのかしら」


 ううぅーと大トカゲは唸っている。

 やはりそれでも悩みどころらしい。


「う〜! もう、そうだ! 町に聞くしか無い!」


 そう言うと木陰に隠してあった荷物袋をあさりだした。

 大トカゲのものらしい。

 そして1つの葉っぱを取り出した。


 その葉っぱを丸めてから千切ると先程まで何も無かった場所にさらに奥へ続く道が現れた!


「一緒についてくるのだ! 町長に会わせて判断するのだ! ……いてて」

「治そうか?」

「あ、なおせるならゼヒ……」


 奥への道は気になるが傷が痛そうなので治療することにした。

 鱗に触るとひんやりする。

 もちろん、ついでにスキル無敵も上乗せ。

 また元気になったからもうひと勝負! とかこの大トカゲならやりかねないし……

 またボコられるのだろうし……


 うん、スキルが入った。


『うにゃ!? あ、あああ?』

「どうした?」

『熱い!! 全身が火傷するほどあつうぃい!?』

「ちょっと、ローズ何かしたの?」

「いや、治すのと反撃してこないようにする能力(スキル)使っただけだよ!?」


 鱗越しにわかるほど血が大トカゲの中で大暴れしている。

 い、一体なんなんだ!?


『この感じ、この感じは……! %#@!!』

「え、なんて?」


 ユウレンは聞き取れなかったか。

 ああ、%#@か……

 なんで%#@なのかはよくわからないけれどあれを翻訳出来ないのは仕方ない。

 彼等独自の感覚言語だし。


「まあ、だいたいすごく良いとか気持ちいいとかうれしい、素晴らしい、みたいな感じの言葉だよ」

「ローズ、そんな変なスキル使ったの……?」

「いや、確かに回復と同時にこの無敵ってスキル使うとみんな変なリアクションするけど……このスキル自体はただ敵の戦意を下げるだけだよ」

「ふうん……まあいろいろ気になる事があるけれど、とりあえず先に進みましょう?」


 まあ確かに今は小さき者の町のほうが大事か。

 暴れている大トカゲに落ち着いてもらいつつ私達はさらに先へと進んだ。


「うおおおお!! よくわからないけれど、町に認めてもらうよう張り切って案内するのだー!!」

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