八百八十五生目 最後
コロロの治療をして……と。
「本当、間に合ってよかった」
「まさかちょっと前にクワァコロロが起きていたとは思いませんでした……! ハーピーたちの歌で気づいたみたいです。それから逃げ回って……」
「……コロロ、がんばった」
ハーピーは雑食性。
ニンゲンだって見つかれば食べられてしまうだろう。
コロロが気づいて猛攻から必死に逃れていたらしい。
その変化は大きい。
きっと信じていたのだ。
絶対にドラーグが来ると。
前までは自力での活動はほとんどせずにドラーグに言われたことだけはなんとかやるみたいな状態だったのに……
僅かな間に目まぐるしく成長している。
「なんとか追い払って、ここまでこれたんです。それでその……なんですが」
「うん?」
「……パパの足、ひっぱりたくない。くんれん、したい」
「そう。僕たち、改めてちゃんとしたふたりで動く訓練をしようって決めたんです。おねがいします!」
ドラーグとコロロが戦いの訓練を改めて……!?
ふたりの目は真剣。
それほどまでに今回のことがこたえたのか……
「……わかった。けれど詳しいことは後で。まずは無事に帰ろう!」
「やったー!」「……うん!」
ふたりともやっとホッとした笑顔を見せてくれた。
やがてアヅキやダンたちも合流。
おせわになったペリュトンたちへの報告も済ませ……
いざ久々のアノニマルースへ!
「おっ、お前らではないか……ゲプ。俺ら共々世話になっているぞ……ゲプ」
「え、どちらさま!?」
アノニマルースに帰って少し歩いたら道端でやたら膨らんだ腹を持つ魔物集団がいた。
こんな愛らしいフォルムな魔物たちってうちにいたかな……?
「主、アレはあれです、チーズの元です」
「チーズ……ああ! ガラガゴートたち!?」
「見ればわかるだろう……フー」
いや前の引き締まったボディーからの変貌が激しすぎるよ!?
前までの何物の切り刻むような闘気もまるで感じられない。
平和なヤギ魔物たちでしかない。
ガラガゴートだけでも3匹いる地獄のような光景のはずが天界じみた空気が流れている。
ヤギ家族全員腹をふくらませているからだ。
「俺ら……少しの間、世話になる……プー。戦いは、俺たちがやりたいことしかやらないが……それでもいいらしいからな……ゲプゥ」
「元より貴様らに戦力などは期待していないからな……フフフ」
すごい新メンバーが入ってきた……のかな?
それはともかく無事にアノニマルースに帰れた。
ケンハリマに戻り圧倒的な虚脱感と疲労感。
まだだ……まだやることがある。
その足で私だけ鍛冶屋カジートの元に。
いつもどおり鍛冶師メンバーたちは今日もここで勇者の剣づくりを励んでいた。
ちなみにこの家に住んでいる竜人カジート以外は自由に私から借りる魔法でワープしてアノニマルースと行き来している。
そしてこのメンバーに先日から追加されているのが……
「はは、は、どうだ! 我が錬金術は!」
「やっぱ何度見ても神さまンは格が違うねえ」
「とてもじゃないが、マネできそうにないなーすごいなー!」
「さっぱりわからん」
「もっとだ……もっと我が神の力を褒め称えるがいい……」
また何やら金属を魔力で合金にしていたようだ。
こんなことやすやすできるのはナブシウのみだ。
人見知りだが上手くやっている様子。
「こんにちはー」
「あ! ローズ! お前、私を試すような真似を……!」
「仲良く出来ているようでなによりだよ」
「わっ、我が神のためにも、ここで逃げ帰るのが良しとは思わなかっただけだ!」
そのおかけで随分と新しい友だちができそうなのは良いことだ。
さてと。
「ところでローズがまた来たンってことは……」
「うん、これが最後の……素材!」
空魔法"ストレージ"からグルシムの死体を取り出す。
これをどうにかして灰……そして砂にする必要があるんだけれど……
「サイズは……今までよりは小さいな」
「十分大きいですよ……というよりも、砂……ではないですよね?」
「またこいつも神なンか?」
「ええ……この身体をどうやってか灰にして、砂にするみたいなんですが……」
……あれ?
いつの間にか真横に気配が!?
ってこの姿は!
「うおっ!?」「なんだ!?」「ヒャッアッ!!」「また新しいのが……」
「……随分にぎやかだな」
小さくはなっているがグルシム!
つまりは分神だ!
まさか彼も来てくれるとは……
「グルシム!」
「正解のようだな、言わずにおいて」
「……あ、あの時の!」
なにかいいよどんで言うのをやめたこと……
それが私のところに分神を送りたかったということか!
なるほど……それでグルシムが少しでも楽しめるたすけになるのならずっと良いことだ。