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八百八十二生目 手数

 グルシムが鳥の王に戻ってしたいことが判明した。


 グルシムはきっと自身もどこかでまたみんなと過ごす日々を期待して……けれどそれらを諦めるほどのことを味わい続けた。

 それでも異常なほどに……すでにグルシムが厳格に管理し続けなければならないようなものではないのに手放すのを恐れている。

 神話の時代は終わりグルシムが迷宮管理部屋にアクセスしている様子がなくとも迷宮はたしかに維持されている。


 守る愛がグルシムの軸であり基準として生きて苦しんできたから。

 あとはきっかけだけなのだ。

 卵は孵化し子は歩いた。


 それは思ったものとは違うかも知れないけれど……

 それでも苦しむ必要はもうない。

 喜んで良いのだと背中を押す必要がある。


「ローズオーラです。この名前にかけて、あなたを倒して止める!」

「良き名だ、ローズオーラ。着くぞ、もうすぐ黄泉にな。これ以上は……わかるな?」


 つまり次がラストチャンス……


「……あのさっきみせた映像。現状はグルシムが鳥の王の時に全身を使ってとどめていた。逆に言えば、もうグルシム築き上げた世界は、グルシムが直接やらなくてももう維持されるんだよね?」

「……だったらどうした」

「もう世界は、グルシム、キミから巣立ちするときなんだ。私はグルシムにも犠牲になってほしくない! 鳥の王に戻したいけれど、それは犠牲を増やすためじゃない! そろそろ、キミと世界、どちらとも自立ができるのだから!」

「うぐぅ……!?」


 もう世界は本来グルシムの手から離れている。

 鳥の王の文字通り身を削る力でギリギリ保ち……さらには無事機能を取り戻しつつある。


 グルシムは自身に責任を背負いすぎて目的と手段が逆になっているのだ。


 グルシムが鳥の王の姿を取り戻そうとしている。

 ソレは良いし本来の目的だったのだが……

 見過ごせない問題がある。


「俺は……っ、俺は……! この世界(たまご)を完全に再生する。王の、本来の力全てを捨ててでも!」

「本当に自身を滅びさせる気なの!? それでも過去の時には戻らないのに!」


 それでは復活させても……あまりに何もかもむくわれない!

 先程の映像での自己犠牲力も見せつけられた。

 今度こそ自身を完全に滅して迷宮を完全復活させるもくろみなんだ!


「煩い! 意志をだ、ローズオーラ、貴様のものを見せろ……! 殺す気で来い!」

「ぐっ……」


 グルシムはもうこちらの言葉を聞く気はないらしい。

 これは神なりの自殺だ……!

 神は肉体が死んでも魂で生きていられるがグルシムはその魂を全て燃やし尽くすつもりだ。


 私は見過ごせない。

 例えその肉体を斃すこととなったとしても。


 大きな下り坂。

 そのあと緩やかなU字カーブで地面の下へと潜っている。

 おそらくはあの下が黄泉。


 幸い妨害の手がかなり減っている。

 この下り坂は準備。

 グルシムの変化ごとに速度がどんどん増しているためこの直線ではどうやっても突き放される。


 止めるには変化中に抜いて大きな1撃を打ち込むしかない。

 もはや聖魔法"レストンス"が効くとも思えないし。

 グルシムの姿はまるで鳥の王と反転している。


 つまりはさっきまで得意としていたことが苦手になっている可能性も……?

 ならば……これに賭ける!


[スパイクロック とがった岩をあらゆるところから対象にぶつけて集め、岩塊にして閉じる]


 地魔法で私の相性問題もあっておそらくは最高威力を出せる魔法。

 ただこれだけで倒せるかは……

 さらにエアハリーだから今から魔法をまぜる余裕がない。


 そう……手数だ。

 もっと手数がいる!


 坂をそろそろ降りきってUカーブ。

 グルシムも姿が光包まれて変化しだす。

 仕掛けるならここだ!


「えいやあっ!!」


 "時眼"を使用して自身を加速!

 頭に痛みがピンと走ってもうあまり使えないことを悟らせる。

 今だけは耐えて……!


 グンと速度を上げつつきっちりとカーブに侵入!

 グルシムの懐に入り込み斬り込むようにカーブをなぞっていく。

 内側を……とった!


「チッ」


 先行しているグルシムの広げる翼真後ろについて大きなゆったりカーブを擦るんじゃないかというほど結界ギリギリを滑っていく。

 だがこのままではグルシムを抜かすことは出来ない。


(チャレンジ!)

(やるぞ! 加速だ!)


 私では空を飛ぶ恐ろしさで自然にセーフティをかける限界。

 それを全権委託してさらに速度を上げる。

 うっかりすると外へ吹き飛ぶような速度!


「うわおわあああああっ!!」

「何!?」


 グルシムの翼を触れそうになる。

 グルシムも今下手に羽ばたくと減速するとわかっているから無駄なことは出来ない。

 U字の半分を……こえた時に頭が並ぶ!

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