八百七十八生目 玉座
鳥の王の翼が右翼のみ復活した。
「翼が!?」
「少しずつだが……良い。戻ってきた……実に良く馴染む……! ククク……フフフ……! フハハ……!」
「グルシム!」
マズイ。
鳥の王の力を奪い始めている!?
このままだとグルシムを倒せないどころかグルシムに倒される!
コースはさらに苛烈を増す。
当然のようにマグマが噴き出しスケルトンは自身の骨を投げてくる。
ゴーストたちは壁を作りさらに奇っ怪な格好のアンデッドたちもやってきた。
明らかにさっきから通り過ぎるだけのひと山いくらみたいな意思の薄いアンデッドたちではない!
彼らは明確に悪意をもってコチラを狙って暗い光の魔法やら鎌やらをぶん投げてくる。
危ない!
「多い、妨害が! 多い!」
「傷つくと……言っただ………ろう? よし、もう一度だ」
グルシムの姿がまた変わっていく!?
今度は右後ろ足先が光に包まれ……
鳥の足のように変化。
「これでわかったろう、どうだ」
「鳥の王の力が、取り込まれている!」
「……?」
何なんだろうグルシムの不満そうな声は。
それよりもマグマの噴き出しが突然来るから危ない!
"四無効"があってもマグマを完全に防げるわけではない。
マグマとは溶けた岩塊みたいなもの。
おそろしく質量があり当たれば吹き飛ばされる。
ギリギリで避け続けているのにグルシムはまさに何事もないかのよう。
影分裂避けがずるい……!
「お、追いつけない!」
「傷つくと、だから言っただろう、だが思ったよ……り粘ったな。貴様、玉座から追放されし……王の帰還を見届けんとするか」
ひたすらにレースが大変で正直話を聞いている場合ではない。
それでもさすがに何か気になる。
強い思い込みやそれこそ嘘ではない何かを……
先程も聞いた言葉。
玉座から追放された王。
ソレは間違いなく鳥の王のことだ。
けれどグルシムのことではない。
しかし……単純な話今グルシムがうそをつく理由はない。
なんだかたびたびグルシムとの会話がやたら変でなぜか煽られているような。
そうこう考えていたらグルシムが突如バランスを崩し速度が落ちる。
「む……!?」
「よし! ペリュトンさんたちがやってくれたか!」
さらに少し距離を詰める。
グルシムの身体から淡い光が漏れ出している。
はためからすると原因はわからないが……
「なんだ……? 何が起こっている……?」
「グルシムの信仰者であったものたち……ペリュトンたちに本来の信仰先ではないと伝え渡してもらっていたんだ。信仰が力なら、それが揺らぐことでまた変わるはず」
復元屋と助手ふたりに任せたこと。
それは多くいるペリトンたちにグルシムはペリュトンたちの神ではないと伝えてもらうことだった。
それはグルシムすらも肯定する事実。
とは言えペリトンやペリュトンたちの影信仰がすぐに揺らぐものではない。
しょせんは凝り固まっていた仮説がブレるぐらいだろう。
けれどそれはグルシムの能力を削ぐ。
実際にグルシムは目に見えて直線速度が落ちた。
追いつけるわけではないが……
油断すると引き離されていた前までとは違う。
「おお! ご苦労だなそれは……俺が話したこと、覚えていて……伝えたのか?」
「え? あ、うん。グルシム自身もペリュトンさんたちの神ではないっていってたし……こっちでも色々と調べたしね」
「そうか、このタイミングで解けて、戻るか……俺の身を支え起こし、同時に縛り付けたもの……ククク……」
うん……うん!?
言っていることがやはりおかしくないか……?
いやこれまでもなんだけれど!
さらに道のりは険しくなる。
洞窟のような空間をくぐるさいに骸骨たちがあちこちから腕を伸ばしてくる。
外には服も着込んだのアンデッドたちが待機していて攻撃を飛ばしてくる。
相変わらずグルシムにはまったく当たらないため私が無駄に引き受けることになる!
「ぐ、グルシム……!?」
「世界が留まり、腐った楔となりて長かった……そう……思い出してきた……感覚……その灯り、ああいう使い方もあったな……やれやれ、やっと思い出せるとは」
「一体何を……? グルシムキミってまさか……うわっ!?」
これまでとかなり話が変わってくる。
グルシムが腐った楔だというのなら。
グルシムは信仰を受けて立ち上がれたけれど同時に縛る鎖になっていたのなら。
そして……もしかしてだけれど。
ものすごい話下手な気がするのが本当なのならば……!
そう考えていた首から下げていた灯りから急に強く輝き出す……!
グルシムが何かしたらしい。
光が少し収まると私達の前側空中に。
映像が投影されだしていた。




