八十三生目 死兵
本日二つ目です
その後も順調に進みレーダー上に大トカゲを捉えた。
合図を出して準備をする。
私は補助魔法をかけるぐらいしか出来ないけどね。
アヅキはガントレットを嵌めユウレンはアンデットを何体か呼び出した。
斧持ちの大きいのが2体、並の剣持ちが5体、霊魔が8体。
それぞれに補助をかけたからだいぶ強くなっているはずだ。
「よし、こんな感じかな」
「それじゃあローズはそこで見てなさいよ」
「それでは共闘と行こうか、ニンゲン!」
やる気十分と言った感じ。
そう言えばユウレン自身がしっかり戦うのは見たことがない。
その少ない数のアンデットでどうするのだろう。
「そう言えばアイツは毒を持っていた。気をつけて」
「わかった」「承知しました」
森の最奥へと足を踏み入れていく。
ココからはスキル身体リンクでアヅキの視界をもらおう。
いやまあ身体リンクはいやでも五感みんなもらっちゃうけどね。
「主、聴こえてますか?」
(うん大丈夫、思考伝達の距離内みたいだね)
ぎりぎり広場内なら届くらしい。
アヅキの目に大トカゲがうつる。
『あ、また来た!? だったら叩きのめすのみなのだ!』
「なんとしても『街』の場所を吐いてもらうぞ!」
「これが話に聞いてたやつね。じゃあまず私からいく」
いきなり相手が抜剣した。
交渉不可と判断したユウレンが前へ出る。
そしてユウレンの指示と共に剣のスケルトンが駆け出した。
剣のスケルトンでは半分程度の身長もない。
必死に駆け寄るが……
『無駄だっだん!』
気の抜ける声とは裏腹に強烈な一閃。
破壊力の高い巨大な直剣を片手で軽々振り払う。
剣を合わせることすら叶わずあっさりと骸骨達は吹き飛ばされた。
「ふむ、まとめて5体全滅ね」
「大丈夫なのか? 負けているが」
「まあ見てなさい」
私は遠くから見てる兼翻訳係にしかなっていないがまあいいや。
さらに4体の霊魔が突っ込む。
これも片手であっさりと払い……
『あれ、効かない?』
剣は霊魔をすり抜ける。
彼等には殆ど物理的なダメージは効かない。
『だったらこうだぁ!』
剣を持っていない右手の拳から魔力がにじみ出る。
それは液体となって降り注いだ!
ドバババッ!
霊魔たちに当たるとジュウジュウと音をたて消え去っていく。
「毒の魔法……」
『そう! 食らったらタダじゃあすまないよ!』
ユウレンは思わず口に服の裾をあてる。
ガスを警戒したのだろう。
さらに指示を出して今度は残りの霊魔4体に大きめの斧骸骨2体だ。
『何度来ても同じだあ!』
そう言って大トカゲは毒を降らせた!
大きめの骸骨でも彼のサイズには届かない。
頭上から降り注ぐ毒になすすべもなく……
『あ、あら?』
大骸骨たちは霊魔を斧で守る。
自身はそのまま当たった。
当たったが……いかにも平気そうだ。
魔法や毒に耐性があるのか。
今度は、と剣で縦斬り。
地面ごと派手に叩くが大骸骨たちはバックステップで回避し霊魔は前へ出る。
当然剣をどれだけ降ろうが霊魔には当たらない。
慌てて魔法に切り替えようとするが……
ついには霊魔が大トカゲにたどり着きまとわりついた!
こいつら近くまで行くと途端に動きが早くなるのよね。
『あ、コラ! 離れろー!!』
あがき苦しむ大トカゲに急速接近する大骸骨2体。
その斧で大きく切り裂いた!
慌てて剣で防ぐが身体の痺れで不完全。
霊魔のまとわりつく効果だ。
『ぐあっ!?』
追撃をかけようとする大骸骨にたまらず大トカゲは後退した。
そして全身から強い圧力を発すると霊魔をやっと吹き飛ばす。
取り付き状態から霊魔たちは元の形に戻った。
『もう……させないのだ!』
ハアハアと肩で息しつつ大骸骨たちも向き合う大トカゲ。
とは言ってもまだ体力は余裕がありそうか。
巨大なだけある。
それにしてもこれが彼女のバトルスタイルか。
アンデットという使い捨て可能な駒を使って確実に弱点や長所を把握して1つ1つ詰めていく。
「ああそうそう言い忘れていたのだけれど」
そう言ってユウレンは大トカゲへ手を伸ばす。
「アンデットは生きていないのだから、殺そうとしてもムダよ」
『ぎゃひぃ!?』
完全に注意が前方に向いていた大トカゲが悲鳴を上げた。
声掛けすら注意が削ぐための作戦
か。
その尾にはいくつもの骨で出来た剣。
剣の骸骨たちがいつの間にやら復活して背後に回っていたのだ。
「さて、そろそろ私もやるか」
アヅキがわたわたしている大トカゲを見つつ掌と拳を横で合わせた。