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八百七十二生目 破壊

 なるほど建築物がハーピーが使うにはなんだか違和感があると思っていた。

 何もかも壊れていたからあやふやだったけれど。

 翼があり飛び回っていたとしたらたしかにたんなるニンゲンやらハーピーやらの使いやすい形に発展するわけがない。


 鳥の王……すさまじい力があったんだな。

 飛ぶ力の無かった生き物たちにも飛ぶ(・・)という概念を与えたんだ。


「まー、他にもいろいろあって崖を削って岩を浮かしたり、世界に灰の砂をまいてたくさん実らせたりというのを話し合って深めたいけれど、そこじゃないよね。ここからは、ぼくもまだちゃんと読めていない部分。ローズ、さっきからそこが気になっているんだよね。そういう顔しているよ!」

「ええ……解読はなんとかして……そしていまさっきのすりあわせで、もしかしたらちゃんと読み解けたかもしれません。だけどこれは……だとするとグルシムって……」

「おーいちょっとちょっと! 早く教えてよ!」


 おっと考察の中に入り込みすぎていた。

 神殿ではなく洞穴奥に鬼気迫るように書き込まれた文面。

 そちらの内容は……この神殿に刻まれた歴史の()だった。


「えーっと……そう。始まりは突然だったらしいんです。戦いが行われました。最初はいつも通り鳥の王や民たちが協力して追い払うはずだったけれど……それは気づいたときには、大災害になっていたんだとか。もはや相手は何ら容赦なく、片っ端から生命をひねり潰して燃やし尽くし、世界ごと破壊した……と」

「なんというかこんなこと言うのもなんだが、本当にそんなことが……?」

「われらは、過去の者たちが残したヒントを元に、あっただろうって想定するしかないのさ。否定には否定の材料がいるからね。ありえないではなく、ありえない理由を提示しなくちゃいけないのさ」


 世界は理不尽により破壊されてしまった。

 目的も理由も正体もわからず。

 神話の時代にそういうことがあった……のかな。


 なんとなく知ってそうなドヤ顔が思い浮かぶが今はそこは大事ではない。


「鳥の王は必死の抵抗虚しく翼を砕かれて叩き落され……そして底が抜けた。この底が抜けたっていう表現、よくわからなかったんだけれど……今なら、まさに世界が現在の状態になったときだってわかる」

「底は、あとからなくなっていたんだね! そしてあのツルツル崖ってもしかして……」

「ま、まさか鳥の王のとの戦いの余波だと!? 地形が変わるってレベルじゃないぞ!? 今現在も変質したままなのに!?」

「多分……神様同士の争いなら、そのぐらいは変わります。私は、ちょっと知っているから」

「お、恐ろしい……」


 ペリトンが思わず身震いした。

 では鳥の王が住まう巣があるはずの行き止まり。

 そこが深い恐ろしいしんがいになっていたのって……


 脳裏に浮かぶはおぞましい神の一撃により巣ごと……むしろ地面そのものごと破壊しつくされ吹き飛ばされる鳥の王。

 そんな戦いの先は……


「それで続けるけれど……鳥の王は例えその身が砕けようとも諦めなかった。最後の力で道連れにしたそうです。その敵の正体を直視することすらかなわなかったの、交戦中赤い影だけは捉えたことがあるとも。まあともかく、ここのニンゲンはわずかに数を残してギリギリ助かったのですが。けれどその時に背中の奇跡……翼のことかな。それをなくしてしまう。鳥の王の存在が感じられなくなり、迷宮ごと崩壊して鳥の王が死ぬことも間近だと悟ったのだとのことです」

「へぇ……神様も死ぬんだなあ」

「ここはちょっと私も不思議に思いました。けれど、世界ごと崩壊するようなことになったのなら、もはや誰もがいきていることなんて、できないのかもしれません」


 しかも司っていた場所の崩壊に巻き込まれるのである。

 神といえど蘇生ができない。

 それに信奉者もだれもいなくなる。


 確かにまるで神の死を強く表している。

 授けた奇跡すら狂うとか。


「そして激しい地震に崖の変動、世界があちこち壊れだして、ここでもわずかしか生き残れないと。もし、世界が残っていて、誰かがこれをみたとしたら……きっとそれは、鳥の王が、最後の力で世界を保っているのだと。改めて、我らの王を救うために、『よみがえりのぎしき』をしてほしいと。そうしめくくられています」


 『よみがえりのぎしき』については前もチラリと目にしたことがある。

 その時はまったく深く追求しなかったが……


「う、うーん? あれ、それだとこの世界がまだあるってことは……鳥の王はまだ生きている?」

「一応言っておきますが、グルシム神に鳥要素は……いやあるっちゃああるけれど、骨をかぶっているような、おぞましい状態でしたよ」

「うーん、そこまで神のこと詳しくないけれど……ほら、私達の神として、彫刻屋が作ったイメージ。あの神はそれこそ骨と皮だったんだけれど、私達の生死概念は当てはまらないんじゃない? むしろ、色々と除いていって、それがどれだけありえなくても、そこにあるものが答え……それが神なんじゃない?」


 う……うーん。

 そんな。

 あれが鳥の王の成れの果て……とか?


 ちょっと違う気もする……

 そう……この胸の奥のもやもやは……

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