八百六十九生目 助手
しんがいから抜けてアヅキたちとも合流。
あらためて私もコロロ所在チェック。
特にまだあの白いもやの下にいるかどうかを。
…………?
あれこれって……?
「いない……」
「ですよね……」
「いやそうじゃなくて……この白いモヤの下にもいない」
「……え!? クワァコロロはどこに!? まさか……」
「いや、生きてはいると思う。潰されたんじゃなくて、いなくなったという感じ……」
「よかった……よくないけれど」
ドラーグが青ざめたりほっとしたりコロコロ顔を変える。
おかしい……移動したのか?
とりあえず召喚してみよう。
…………だめか。
向こうに意識がないせいで呼びかけがない。
逆に言えば生きていることは確定した。
「うん、やっぱりどこかで生きているみたい。どこかがわからないけれど……」
「んじゃあ、ローズが言っていたその、グルシム? というやつに関しての情報集めて、やつに直接聞き出すなり、振り切って探すなりしようぜ!」
「そう……ですね! ここでへこんでても変わりませんから!」
「チチィ」
私達はダンに案内され永遠の滝壺から移動する。
そこは前神殿に行く時に使った穴とは別の道。
例のペリトンが急襲してきた付近に隠されていた洞穴。
ドラーグは陰に潜ることで大きすぎる問題を解消し小さめの洞穴でも進む。
ダンの影にもひそめるから便利だ。
そして少し進めば待っていた姿。
「おお! おかえり! どうだい、神様には会えた?」
「む! 来たのですか! よいしょ……」
ペリュトンとペリトンだ。
ペリトンは急いで頭に被り物をした。
視界が塞がれている。
……あれか。
見なければニンゲンがいても大丈夫という感じかな。
「そ、そこまでするのか!?」
「大丈夫! 自分だってあの暴走は不本意なんだ。あなたたちに迷惑をかけちゃったからね。自分で少しでも手助けがしたい」
「や、やさしい……」
「……今は少しでも、ヒントが欲しいんです! お願いします!」
狩る相手と狩られる相手なのでやふつうはそこまで気にされないが……
ペリトン本来の気性のおだやかさゆえにホンニンが苦しんでいたようだ。
言葉に甘えておこう。
ドラーグも複雑そうだが了承したし。
ここには何があるんだろう?
「じゃ! ぼくも微力ながら……ほら、この奥! 彼が発見してくれたんだ!」
「ええ、助手の自分が、神殿以外の記述をやっと見つけたんだよ」
「自称助手、ね」
「そろそろ認めてくれてもいいじゃないですか!」
復元屋ペリュトンとコロロを突き落としたペリトンの関係はなんとなく読めてきた。
そうこう話しつつも案内された先。
そこの壁はあきらかに色が違った。
暗い土壁から白い岩壁が顕になり長年の劣化を受けつつもギリギリ読めるそれらが綴られていた。
それらは神殿のものと比べるとあまりに質素な文面。
相変わらず読みづらくはあるがこれなら解読は早く済みそうだ。
「どうかな! かなり大事なコトが描かれていそうだけれど。なにせ文面を比較すると、鬼気迫るものもあるし、鳥の王の話も見受けられるし……」
「復元はまだまだだし、解読も半端でね。そしてここからが大事なんだけれど……この文面は神殿より後に書かれていて、しかも重要と思われることは……戦争ってかかれているんだ」
「戦争……! まさか、鳥の王がどうなったかも!?」
「まだ深くはわからないけど、ぼくはそうだとにらんでいるね。そして、この下……崖の底についても書かれているみたいなんだ。ローズたちの知りたいこと、きっとここにあるよ」
「そ、それと! 自分も我々の神に関して詳しいので、直接会ったと聞いたから、何か役立てるかと!」
おお! 今は少しでも情報が欲しい!
どんどん情報共有してあのグルシム突破方法やコロロの行方をさぐろう。
「――って感じで、なんとか逃げ出せたんだ」
「その神さま……おかしいよね」
「ええ。自分が調べた限り我々の神にしては、かなりおかしい点があるかと。そもそもその神自体、否定したという点も含めて……」
私は解読を脳内で進めつつ遭遇戦のことを話した。
だがおもったより彼らの感じる神とは違ったらしい。
それと……
(しんでんのぶんも、ちゃんとよんでおきたいね)
(流れを押さえて読まないと、どうやらよくわからないところもあるうえ……もしかしたら重要なポイントがあるかもな)
アインスとドライの言う通りちょっとずつ脳内で繋がりだしておだやかではない。
ここに書かれていること……
『よみがえりのぎしき』というもの……
それは神殿の1階部分でもそういえば……
もしかしたら私達はかなり重大な見落としをしていたのかもしれない。
ドラーグたちは改めて別のエリアも探索してもらっている。
どこまで急げるかの勝負だ。




