八百六十六生目 相違
しんがいの底には化け物がいた。
別種の骨格を纏うその姿はあまりに背徳的で。
着るのではなく他者の死体を被っているような不気味さ。
生理的嫌悪をこえて理解するものを魂すら苦しめるような見るだけでおぞけを覚えた。
闇の地の支配者。
生命の終焉。
行き止まりの存在。
"観察"!
[グルシムLv.51 比較:かなり強い(特殊性あり) 異常化攻撃:天地逆転 危険行動:ワールドクラッシュ]
[グルシム: 小さき神であり詳細理解不能]
うん!? 神なのはわかったが詳細理解不能!?
そんなの初めて見たぞ!?
あと健康そうなのもわかった。あれで。
見た目からして明らかに邪悪な存在だし話が通じるのか……?
開かれた目からは何も読み取れない。
"見通す眼"も相手の思考を覆い隠す闇を貫けない……
「去れ。俺が貴様を押しつぶす前に」
「……っ!]
く、来るか!?
やっぱり帝国語だし……!
感情がまるで読めないおぞましい音が耳に響く。
"言語解読"によって得たグルシム言語で話しかける!
「そ、そちらの言葉はわかっています! けれど、私は荒らすつもりはないんです! 谷底に落ちた仲間をさがしているんです!」
「神の如き心持ちだな。神の言葉で話し、語るのなら、最初の言葉を聞け」
な……なんなんだこの神。
今までの神の中で一番こっちを突き放してくる!?
しかもやたらとボソボソと話しなのに高圧的だし。
「な、何を言って……」
「……暇なのか? お前が見ているものは腐った楔でしかない。まだ壁を見たほうが目は腐らずに済み、有意義な時を過ごせる」
「どういうこと!?」
なんか意味深めいた言い回しをされるせいでわけがわからない!
話が通じてるのに通じない!
なんかすごい煽りを喰らっている気がする!
「歌の上手い者の元へ帰れ。ココにあるものは眠るもののみだ」
「あ、さっきの歌……もしかしてグルシムさん、あなたがうわっ!?」
なっ!?
何が起きた!?
いきなり天と地の感覚がひっくり返った!?
慌てて飛行能力展開!
空中で立て直してグルシムを見る。
グルシムも天地が反転しているらしく壊れた翼をひろげていた。
それでも普通に空に浮いているのだから行動力を消費して飛ぶタイプなのだろう。
砂は落ちてこない。
いきなりとんでもない攻撃を!
ドラーグたちは無事!?
「ここにこだわるな。どうした? 地の砂に立つのも許しがたいが……」
「だから、底に落ちた仲間を助けに来たんだよ!」
『ドラーグたち! 大丈夫!?』
『え!? なんとも無いですが……何か進展が!?』
『こっちは待たされている割に何の進展もないぞ!』
『そ、そう。それならよかった。今相手がいきなり天地を逆にして……』
『え? ……もしかしたらクワァコロロが底から上に出たかも! こっちに影響ないってことは、きっと底かそこらへんだけ反対になっているんだと思います! 近くへ飛ばせます!?』
『おお! ドラーグ、そりゃいい案だな! 俺も乗るぜ!』
きっとドラーグはコロロを助けることですごく考え続けていてくれたのだろう。
"率いる者"で私の空魔法を借りれば行けるはずだ。
『うん。私の魔法を借りて、遺跡の岩場経由で行けると思う!』
『わかりました! いってきます!』
『そっちもなにかあったら言えよ!』
よしあっちは任せておいて……と!
「ここは眠る者のみが来る。もう話したことが、事実だ」
「そう、私の仲間も白いモヤで眠らされてここまで落ちてしまったんです。通らせてもらいま――」
……敵意!
よりグルシムは低く構え唸る。
「来てみろ、どうしてもここにいるのなら」
「う……このッ!」
雰囲気はおぞましいが見た目だけに注目すればまだマシだ。
直接見据えて突破する!
魔法準備!
「暴れるな、ここで」
む! 向こうの魔法反応!
唸る声と共に天の砂地いくつからの範囲に魔法反応!
急いで避けると次々と土の槍が飛び出してきた!
「うわっ!」
土槍から土槍が飛び出してくる!
派生魔法!
天の砂から離れても土槍が追ってくる!
ただ……あの巨大で鋭利な力に対してあまり脅威を感じない?
……もしかして!
土槍に急旋回して体当たり!
(よし、ぶっ壊す!)
ドライによる渾身のパンチで土槍があっさりと砕け散る。
やっぱりだ!
「能を隠していたようだな、愚者かと思ったが」
「通してもらうよ!」
「爪を仕舞ってここを去れ、賢者ならな」
あれは"土魔法"だ!
"四無効"で"土魔法"は私に対して無効。
さらに土の加護があるからまったくもって私に対してなんら脅威にならない。
相手との相性が良いかもしれない。
接近して聖魔法"レストンス"!
聖なる光が私から放たれ邪気を持つグルシムを焼き払い浄化する!




