八十二生目 鳥馬
大きなトカゲに小さき者の町を訪ねたらめちゃくちゃ攻撃された。
そしてなんとか逃げてこれたわけだが……
「くそっ、いきなり攻撃してくるとは!」
アヅキが拳で木を殴る。
完全に撒いたのかもう追ってきてはいない。
トカゲにとっては守るのが優先なのだろう。
一旦オジサンは帰ってもらった。
さすがに友達同士での争いに巻き込むのは得策じゃない。
幸いあのトカゲが追ってこないから本格的な争いになる前に遠ざける。
実際にオジサンもかなり困惑していた。
あんなことになるとは思っていなかったからだろう。
でもオジサンは悪くない。
なんとか納得して帰ってもらったのは良いが、どうしようか。
日が本格的に暮れてきた中私達は群れの中へ帰った。
疲れ切ってインカとハックは泥のように眠っている。
私のように危うい魂ではないから進化さえ覚えて使わなきゃ平気だろう。
あれは一朝一夕では無理だしインカたちは3種類も魔法を覚えていないからね。
夕食を済ませた。
ご飯のにおいがしだしたら寝ていた泥たちが起きて食べたらまた寝た。
実にお疲れのようだ。
私とアヅキはユウレンの元を訪れ今日あったことを話した。
私による同時通訳つき。
本当は私が明日にでも戦って鎮めてから話を聞いてもらえないかやるほうがいいのだが……
「……なるほどね、それでローズ、また自分でなんとかしようとしているでしょ」
「うぐっ」
「死にたいの?
戦闘中に自滅で死んだら元も子もないじゃない」
「そうです主よ、ここはぐっと堪えてください」
さっきの時も私が足手まといで逃げるしかなくなったんだよなぁ。
じゃないと私が動かない的になるから。
アヅキは私を抱えながら戦うわけにはいかないし。
「というわけで私とアヅキでなんとかしましょう」
「ほう、共に主のために戦うわけか。それならば文句はない」
「……え?」
私が翻訳すると同時にふたりは熱い握手をかわした。
ど、どうなるんだこのふたり……?
かなりの変わり種の組み合わせ。
それに……
「私のために迷惑かけるのはちょっと……」
「アヅキ、死にかけのビョウニンが何か言っているわよ」
「さあさあ主はここまで頑張ったのですから、ゆっくりおやすみください。
後は片付けておきますので」
不穏過ぎる!
その後なんとか近くまでついていくことは許可してもらえた。
このふたりが組むとどんな暴走するかわからないし……
それにトカゲだって理由あって守っているはずだ。
出来ることならその真意は聞きたい。
こっちも命がかかっているから、出来る限り通してもらうけれどね。
「じゃあ久々に作るかしらね」
そう言ってユウレンが魔法を唱えると薄暗い光と共にどこからともなく骨が集まってきた。
……いや、これ最近食べた残りの骨じゃないか?
そうしてあっと言う間に1体のスケルトンが出来上がる。
いや正確には違うのかな?
人型ではなくまるでダチョウのような形だ。
ご丁寧に背には骨で出来た鞍もついている。
馬みたいだ。
「疲れを知らない移動手段よ。
とは言ってもアヅキは乗れないだろうから私用だけれど」
「あれ、私はどうすれば良いのだろう」
「それなら簡単よ」
ユウレンが魔法を唱えるとさらに骨が集まってきて……
すっかり夜に。
現在疾走中。
そしてなぜか私は骨でできたカゴの中に閉じ込められていた。
ち、ちょっと狭い。
そしてダチョウのクチバシにカゴがくわえられている。
まあ、飛んで運ばれるよりかは快適かな……
「主、そんな粗末なもので大丈夫でしょうか?
やはり私が抱えて飛んだ方が……」
「いや、それはそれで酔うし……」
「そうですか……」
残念がるアヅキ、どこかドヤ顔のユウレン。
何の戦いをしているのだ。
そんな小競り合いがありつつもなんとか迷わせる仕組みの前まで来れた。
ユウレンはダチョウ型の骨から降りて先へと歩む。
アヅキも横に並んで私とダチョウ型の骨はその後ろだ。
あれ、私もしかしてこのまま?
「厄介な仕掛け。魔法と技術で道が隠蔽されているのね」
「ふむ、前来たときと少し変えてあるのか……?」
確かに前のときと違う感じを受ける。
トカゲは追いかけてこないかわりに隠すのに力を入れたか。
前と同じならなんとかなったけれど、これは厄介だ……
「じゃあ行きましょう」
「えっ、行けるの?」
「まあこのぐらいなら……そうね」
そうユウレンが言うと魔法で霊魔が発生した。
ガス状で取ってつけたような顔をしているやつだ。
そのまま浮いて先へ進むと霊魔が何重にもぼやける。
そして分かれたうちの1つのみ残った。
「当たりの進む道をこうやって解析しながら進むからついてきて」
「……ほう、なかなかニンゲンもやるな」
アヅキも感心している。
私もびっくりした。
死霊のプロしかしらないやり方なのだろうか。
「どうやってるの?」
「色々と組み合わせているのだけれど、あなたはまず前提知識を学んでいないのだから今は説明しない」
「なるほど」