八百五十九生目 解釈
遺跡の壁に書かれる難解な文を読み解き……
絵との関連性や文ではない紋様による表現をペリュトンに教えてもらいつつ……
この広大な物語をなんとか必死に読み解いた。
「ふぅ……」
「おつかれさま!」
「お、どうだ? 読み終えれたか?」
「なんとか……とりあえず要約して伝えるね。ドラーグとコロロは?」
そういえば途中からいなくなっていた。
遠くからドスドスと大きな足音が駆けてくる。
もちろん顔を見せたのは。
「すみません! 呼びました?」
「あ、ドラーグ! と、コロロ……?」
ドラーグが顔をのぞかせた。
コロロは……ドラーグが抱えている。
眠っているようだ。
「ええ……実は昔のこと思い出しちゃったみたいで……ずっと暗かったのがだめだったのかな」
「なるほど、抱きしめてあげていたんだね。気を使って別部屋でやってくれてありがとうね」
「いえいえどういたしまして! それで、もしかして解析がおわりました?」
「うん、それで呼んだんだ」
なんとか必死に訳した解析結果を伝えないと。
白砂の情報も含まれていたし。
「まず全体の話として、これは創世神話っぽいものが書かれていたよ。まずはハーピーなんかの魔物たちがこの迷宮にやってくるけれど、そのころは深い谷っていうだけで、川も下に流れていたみたい。けれど鳥以外は暮らしにくい。そのころからこの世界にいた輝かしき神様こと、鳥の王は、いろんな生物が苦労するのを見かねては工夫をこらそうとしたらしいよ」
今話している壁の部分を指しながら話し続ける。
あっちこっち飛ぶのだ。
「さらに多くの生物の信仰を集めて……特にこのハーピーたちが祭壇を作って祀ったんだ。
鳥の王は歌が上手く踊りも見せて言葉を多く交わしそして奇跡を見せたらしい。
だからかとにかく鳥の王への評価が良かったから祭壇まで出来たみたい。
それにこの鳥の王は地形を大きく変えて、祭壇の想いに応えるために安心安全な浮岩たちをつくったのだとか」
「へえぇー! すごい、そんなことが出来る神様なんですか!」
「いや、ここに書いてあるだけだから細かくはわからないんだけれどね……なにせこういうのは事実とはたいてい違うし、それに月からやってきた使者と戦って守ったとか、流石に眉唾だし……」
「そうそう、ぼくたちの神様についても書かれていないしねえ」
結局は神話である。
現実がそうなっていたことを後からつけたして形にするということは多い。
……本物の神がいる世界だからなんとも言い切れないけれど。
「ま、そういうオチがつくとしても、ワクワクはするよなあ!」
「うーん、本当にいてくれたら良かったんですが……」
「うん、今の荒れっぷりを見るに、ここに書かれていない何かが起きたか……はたまた普通に神様だなんていなかったのか。それと、白砂のこともあったよ」
私はまた別のところを指す。
今度は祭壇の方だ。
「白砂は、まず前提として鳥の王は無限の命を持ちつつも、時にはその身を炎に投じたんだって。それでたくさんの輝く白い灰がうまれ……その中から新たな鳥の王が出てくるんだってさ。
その灰はさらに輝かしい白い砂となって、世界に撒かれたんだってさ。そして元々みのりの少ないこの世界がその砂の力でどんどん豊作になり、緑豊かになった、とのことだよ」
「良い解釈! ぼくは直すのがメインだから、あまり解釈まで手を伸ばせてないから、他者のこういう解釈聞くの本当に好きだあ!」
ペリュトンは蹄を鳴らして喜んでくれた。
一緒にはりきったかいがあったものだ。
「すげえ神様だな……死んだり生き返ったり。うーん、ようはその神に会いに行く必要があるのか?」
「でも、いるかどうかもわからないんですよね? これだけ荒れ果てていますし……」
「そこなんだよねえ……」
「一応、住む場所はあちこちの文献から予測はできるけれど……」
書いてあることは本当に多彩だからこそ迷う。
あの世まで魂を届けたとか何度も民たちを守ったとか素早く飛び回ってあの世と行き来したとか……
儀式によって様々な奇跡を起こすひとつひとつが描かれているようでキリがない。
だが明確にどこに住むとはかいていない。
この迷宮が住処だ。
だが……どこに自らの巣としてくらしていかたは推察ができる。
必ず来る方向が同じで帰る方も同じ。
各地で目撃された姿も記されている。
そこは永遠の滝つぼをこえてツルツル崖とかかれた場所を飛び越えてたどり着く所らしい。
とある部分では世界の果てからやってきているかもしれないともかかれていた。
曖昧ながら重要な証言だ。
「とにかく、永遠の滝壺をこえる方法を考えなきゃなあ……」
「ん? ローズたちこの後は永遠の滝壺をこえるの? アレ使わないの?」
「アレって……?」
「ん? 知らないのにここまで来たのかあ。じゃあ教えてあげる! ついてきて!」
今度は一体どこへ案内されるのだろう?




