八百五十七生目 復元
ペリュトンを見つけた。
この遺跡内でウロウロしているようだ。
追いつこう。
「みんな、ペリュトンを見つけたからそこに向かおう」
「お、俺達は大丈夫なのか……?」
「ペリュトンなら大丈夫、ペリトンには気をつけないといけないけれど……」
「……パパと、行く」
みんなの合意が決まったところで駆けよう。
階段を探しちゃんと道通り動く。
"ミニワープ"も良いけれど基本は足を使わないとね。
まあいきなり目の前に現れて驚かすのもダメだよなあと思ったところもあるが。
それとこの遺跡全体に刻まれている絵や紋様が何を示しているのかちゃんと覚えてあとで振り返りたいのもある。
そろそろ読めるものもこないかな……
と上階へ上がって早速見つけた! "言語解読"!
たんなる飾りのような刻みにしか見えなかったものがスルスルと頭の中で文字となっていく。
この階から言葉が使われているようだ。
「うーん、この文字面白いな……まるで読み方が他と違って、分かってもちょっ と混乱する……」
「あ、ゆっくりいきます?」
「ううん、頭で覚えて後で読むよ、ありがとう」
そのまま暗がりを進んでゆく。
そうしてくらい黒の向こう側。
大きな姿がやっと見えた。
ペリュトンが遺跡の壁を丁寧に翼で払っている……
何をしているんだろう。
かなり集中しているらしい。
わざとドラーグに物音を立ててもらいつつ接近。
さすがに揺れるような音には気づいた。
ペリュトンが牡鹿の頭を角揺らしつつこちちを見る。
「おや……? 見たことのないドラゴンに、いくらかの魔物たち……ああ!? ニンゲン!? えっ、ホンモノ!?」
「ガハハ、本物だ! ついでお前の言葉もわかるぞ!」
「うおおー!? すごい! 初めてみた! ぼくペリュトン、よろしく!!」
ダンが大きく手を振るとペリュトンも翼を大きく振り返してくれた。
ニンゲンをみたらものすごくテンション上がったなあ……
こっちが危険な存在かもしれないのにアッサリ合流を許した。
「ニンゲンがどうやってこんなところまで来たんだい!?」
「なあに、みんなで協力してな! 俺は空に立てるんだぜ、こんなふうに!」
「すごいー! あ、そこのキミから同族のにおいするね、もしかして彼らから教えてもらった」
「ああ、はいそうなんです、遅れました、私がエアハリーのローズと言います」
「デムクスのドラーグです! それとニンゲンのクワァコロロ!」
「……ん? コロロ」
「そして俺もニンゲンのダンだ! よろしくな!」
「こちらこそよろしく!!」
ペリュトンが角先でみんなをつつく。
それに私達はタッチを返す。
各々の挨拶だ。
「わー、本物のニンゲンに生きているうちに出会えるだなんて、眼福だなー! もっと見せて! ここは、ここはどうなっているの!? ハーピーと全然違うじゃないかー!」
「お、おおう!?」
「キミもキミも! もしかしてこれで同じニンゲン!? へー、派生で全然違うんだねー! オスとメスってやつでもあるのかな! それとも子ども体!?」
「わー」
「クワァコロロはもはや全身チェックされるのはお手のものだね……!」
興味を持ってペリュトンがニンゲン組を調べている間に私はペリュトンがいじっていた壁をみる。
そこは土埃が払われしっかりと露わになった壁。
美しい壁面に刻まれた文様が露わになっていた。
かなり保存状態が良い……
岩壁なのと室内で光が入っていないというのがとても幸いしている。
むしろそういうのを狙ってこういう造りにするんだっけか。
「どう? あなたもこういうことに興味あるのかな?」
「ええ、まあ……ちゃんとわかるわけじゃあないんですけれど。崇める、捧げる、光? まだつなぎ方が……」
「おお!! 自分以外に解読者が! 嬉しいねえ!」
この大きく描かれている絵は……ハーピーだろう。
背中に翼を生やしている人型っぽい絵だ。
こういうところに描くときに神格化というか象徴化して元の姿と結構変えるからねえ。
他にもいくらかの魔物たちや何らかの建造物それに運搬したり作ったりする様子も。
「ここの部分は、この神殿の建築模樣が描かれているんだよ! 神殿が建てられる経緯や、意匠理由なんかも少しずつ書かれているね」
「あ、やっぱり神殿なんですね……あーなるほど……そこはそう読めば良いのかあ……」
「そうそうここは――で――もう――紋様もつなげて――」
ほうほう……面白いなあ。
よくみると近くに蹄にはめたりツノにはめそうな道具がある……
この詳しさも含めてやっぱり。
「あの、もしかして復元屋さんですか?」
「そうだよ! そう呼ばれたりしているね! みんなから聞いたかな? ここにある情報たちが、誰にも知られずに消えていくだなんて許せなくてね、私だけでも究明してやろうって!」
やっぱりこのペリュトンだ!




