八百五十六生目 神殿
アヅキとガラガゴートたちをアノニマルースへ送った。
あちらは任せるとして。
私達は先へ進もう。
この迷宮もだいぶ奥まできたはず……
何度もあっちこっち吹き飛ばされつつ移動して……
やっとついた先は。
「……えっ」
「先が……見えません……」
「……パパ……」
「うひー……! 滝だ……!!」
それは遥か果てから降り注ぐ洪水。
そして見えぬ底へと延々と落ち続ける。
ここはまあ見たらさすがにわかる。
「ペリュトンたちが言っていた、永遠の滝つぼかあ……」
「圧巻ですね……」
「つーことは、この付近にまたペリュトンがいるんだったな。ペリトンがいなきゃいいが……」
「……パパ、ここどう通るの?」
「「……えっ」」
言われて全員固まった。
相手は滝。
この豪快なシャワーの中飛んでゆけと?
こう……話を聞くだけだと天から大雨が降り注ぐくらいの感覚だった。
まさかの大質量。
崖全体の縦に川が流れているといった方が合っている。
いやどう考えても溺れるのが先か落下が先かである。
音も水に吸い込まれるし……
ちょっとやそっとの落下量じゃないということだ。
「魔法はどうなんだ?」
「……試してみる」
そうだなあ……
まずは天候を防ぐ聖魔法"クリアウェザー"!
ひとまず私にかけて……と。
そのまま少し突っ込んでみる。
ぐっ!? 猛烈な勢いで頭を水が叩き込まれる!
うわわわわわ!?
急いで出た。
「だめだ、この魔法じゃ効果ない!」
他にも色々試してみた。
空魔法"ゲートポータル"は2つ空間の穴を開けて互いにものを出し入れする仕掛けだが……
上から振ってくる水を吸わせて少しだけ離して下に落とし通り道を作ろうとしたのだがそれでずっと道を作り続け詠唱しなおすのがあまりに効率が悪すぎる。
氷魔法を借りて使おうとしたがまあ滝全体を凍らすなんて無理。
ドラーグが傘になろうとしたが身体の大きさゆえにより過重かけられてどんどん落ちそうになった。
ダンは空気を固めた天井を作ろうとしたが無残に破壊された。
「うーん……」
「何かいい方法はないか……」
「じゃあ……うん? 何か聴こえる」
私の耳が水に吸い込まれた音の側から何か音をキャッチする。
その音源をたどると……
滝の少しだけ向こう側壁に穴がある……のかな。
脳内地図でチェックしてみたがおそらくそうだ。
どこかに通じているしやたら大きい。
ペリュトンくらいなら出入りできそう。
「みんな、向こう側に穴があるから、あっちの奥に頑張ってとんでからみんなを呼ぶね」
「「はい!」」
そうは言ったものの向こうの崖側穴に飛ぶのも結構たいへんだな……
距離にして100mを突っ切る必要があるかな。
それに空と水という私の嫌なコンビネーション。
なのでまあ。
こうする。
空魔法"ミニワープ"!
ふう。
"鷹目"はやはり便利だ。
ワープ先をポイント指定出来ないと飛べないからね。
このままこの洞穴を抜けて大広間でみんなを呼ぼう。
道中は特に何もなくグネグネした洞穴を飛び抜ける。
抜けた先にはまた浮き岩空間……なんだけれどこれまでと雰囲気がまるで違う。
これまでは魔物たちがたくさん住みかう場所だったが気配は静まり返っている。
いないわけではないが……静寂だ。
そして浮き岩大きくひとつ占めている建造物。
明らかに今までのものよりも堅牢な造りで岩で出来たそれは草に覆われている……
近くまで飛んで浮岩のところに行き空魔法"サモンアーリー"!
みんなをひと通り召喚した。
アヅキはまだ忙しいらしく呼んでない。
「わああ……大きな建物ー! 僕よりも大きい!」
「パパすっぽり」
「すげえな、これ誰かが住んでいるタイプじゃねぇやつだな……それこそ祭壇を兼ねている神殿あたりかもしれねえ」
「わかるの? ダン」
「まあ、カンだがな! ガッハッハ!」
ダンの言うカンはつまりこれまでの蓄積によってそうだと判断したもの。
案外バカにならない。
早速探索していこう。
中は非常に暗く灯りもない。
幸い夜目が効くから見回せられる。
壁1面に複雑な文様や絵らしきものが刻まれている……
どうやらここらへんは言葉ではなさそう。
"言語解読"が反応しない。
「ダン、見えてる?」
「おうともさ! こういう時の調合薬は常備してあるからな! ゴウお手製だ」
どうやらダンは薬で一時的に夜目を獲得しているらしい。
それならばこのまま進んで問題ないだろう。
中に住まう暗がりの魔物たちが息を潜め寝入っている。
そのそばを歩み続けて数分。
光魔法"ディテクション"の探知にやたらアクティブで大きい魔物が引っかかった。
こちらには気づいていない様子。
"鷹目"と"見透す眼"で壁や天井の向こう側……階違いのそこを見てみる。
……お! ペリュトンだ!
彼が話にあった輝かしい神に詳しくペリュトンか。
 




