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八百五十四生目 交渉

 ペリトンたちをまいた。

 さらに噛み砕き谷を必死の思いでくぐり抜ける。

 "千里眼"と"ミニワープ"の組み合わせはかなり便利かもしれない。


 噛み砕き谷の殺意ある地形もやはり底の怪物によるものなのだろうか。

 もしかしてかなり悪い存在なのでは……?

 輝かしいとされる神さまは逆にすごく慕われるタイプだったからなあ。


 でも底にいる怪物はペリトンたちの神。

 ある意味こちらも慕われはいるのか……

 どうしても好印象持てないが。


 必死に噛み砕きのエリアを越えているしね……!


「ひぃ、ふう、やっと安全圏……!」

「ドラーグ、お前はほとんどなにもやってないだろうが」

「ワープ待ちでも心臓に悪いんですよお!」

「まあ違いないな!」


 移動しつつ互いの情報は交換した。

 基本は私の"ミニワープ"で移動しつついけそうなところは空中ダッシュで切り抜ける。

 ただ……風はこのエリアでも容赦なく吹いている。


「チチィ」

「前方は向かい風強風のようです」

「回り込む道を探そうか」

「……パパ、あっち」

「あー、こっちも道が……ちょっと見てきますね!」


 風のスキマをみつけるのが大変。

 強い風はほぼ道を一方通行化して……

 さらに噛み砕き谷へと案内されてしまう。


 追い風すら安全ではなくなってしまった。

 希少な安全圏を渡り歩きつつ……

 出来る限り先に進める方角に行く。


 途中安全そうなところはクモグモの巣だらけで……

 ドラーグを前にして進み。

 やっと出れたと思ったら風に流され。


 迷宮の殺意が高い分わりと魔物たちとの遭遇戦が少ないのは救いか。

 底にいると言うペリトンたちの神め……

 移動するだけで命の危機なのでさすがに悪態つきたくなる。


 そのまま飛び続ければいつのまにやら岩柱が何本もそびえ立つどこかで見た景色。

 まだ耳の奥にあの叫びが聴こえる気がする……

 いやがうえにもみんな身構えだした。


 しばらく飛び続け……

 私が無言で全員に静止をかける。

 ……あの柱の裏。


「また貴様らか……」

「ひえっ、この声!?」

「パパ……こわい」


 岩柱はほとんど垂直。

 多少自然ゆえの凹凸(おうとつ)があるのみ。

 それなのにその柱に蹄を引っ掛け当然のように歩くその姿。


「「ガラガゴート!」」

「チーズ!!」

「……? まあいい。言葉が通じるのならわかるな。俺に関わるな」


 今アヅキの発言に明らかに怪訝な顔をされたが怒ってはいないらしい。

 それどころか……何やら元気が前よりもない。

 そう言えば前あった時も何か言っていたような……


「し、失礼します〜……」


 ドラーグに続き私達もゾロゾロとそっと通り過ぎ……

 そのまま振り返ってそっとバックしようとして……

 アヅキが動いていないことに気づいた。


「いや……待った。俺はお前らの乳液が欲しい。何とトレードする?」

「「アヅキ!?」」


 ヤバイ! アヅキはチーズ入手に本気だ!

 あまりにも当然のような顔をして切り出したせいで私もあっけにとられて動けなかった。

 急激に威圧感が膨れ上がっていく……!


「舐めているのか、お前……?」

「いや、舐めてなどいない。もっと言うなら貴様に興味もない。取引だ。お前の持つものと、こちらが出せるもの。みるからに貴様、困っているのだろう?」

「……」


 ……あれ?

 威圧感が爆発するかと思ったら保っている。

 とりあえずこの間にそろりとアヅキの近くによる。


「あ、アヅキ、一体何を?」

「主、御覧ください。メスのガラガゴートです。おそらくは高品質な乳液がとれるかと」

「いやそうじゃな……メスなの……!?」


 すごく声を押し殺して言うしかなかった。

 おかげでガラガゴートには気づかれなかったが。


「どうみてもメスですが……」

「そ、そう……」

「……なにをしている」


 うわっ! また威圧感が増した!

 おそらくアヅキは種族的にオスメスの見分けが簡単につくんだろうな……

 男の子が好きだから……種族的に……


「ちょっとした相談だ。そちらは、どうやらかなり余裕がないようだな? 何に切羽詰まっている。話せ」

「……気に入らん、が、話が通じるのなら少し別だ。我らが欲しいものはシンプル」


 威圧感が薄れていく……

 けれどそれはさっきよりマシという話。

 アヅキとガラガゴートがまともに言葉の刃をぶつけしのぎあっているのが見えて恐ろしい……


「飯だ」

「任せろ」

「えっ……」

「ええ!?」







 まさかの条件合致で私達はガラガゴートに連れられる。

 "無敵"と"ヒーリング"静化組み合わせをこっそりかけつづけておこう……

 幸い怒られる気配はない。


 入り組んだ道の先。

 崖の穴をくぐり抜けて向こう側。

 隠された道の向こうにあるのは。


「ついたぞ。俺の棲家だ」

「「おおー!」」

「むっ、この気配!」


 ヤギ魔物たちがひっそりと暮らす小さな浮き岩だった。

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