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八百四十七生目 敷物

「よっ」


 くずれた瓦礫の山を軽く乗り越える。

 エアハリーの時はとにかく身体が軽く感じる。

 アインスがいつも空間制御してくれるので多少くるくる回ってジャンプしても平気。


(かわいいからオーケー!)


 とのこと。

 さてはて。

 目の前にペリトンたちの群れだ。


 相手も少し前からこちらを感知していたのにもかかわらずこちらをスルーしている。

 ハーピーたちといたときも私はスルーされたなあ。

 それに"観察"した時の説明文……


 やはり普段はここまでのんびりとした種族なのか?

 ならなぜあの時はあんなに暴れて影を取りたがっていたんだろう。


「あの、少しおはなしをお伺いしたんですが」

「ん……?」


 4足を崩して休んでいたペリトンがキョロキョロと左右を見渡して私を探す。

 ベタだ……


「こっちです、こっち! 下です!」

「下……? え!? キミ、話せるのかい!?」

「はい」


 結構驚かれて翼がパタパタしていてキュート。

 でっかくなければ威圧感はまるでない雰囲気はどこかドラーグを思い起こす。


「うわあ、びっくり! なになに、どうしたのちっちゃい子! 迷子かな? 私はペリトン! 影なしだけど仲良くしてね!」

「えっ、あっ、はい、あっいや迷子ではないです、よろしくお願いします」


 勢い。勢いがすごい。

 グイグイと親切心が迫ってきて圧がある。


「へぇ、えらいね、ひとりで買い物かい?」

「やあやあ小さき子、困ったことはないかい」

「ここに来るのちょっと大変だったんじゃないか? 疲れてない?」

「あ、あの……」


 どんどんペリトンが増えていく!

 影のない顔のせいか貼り付けて迫ってくるような圧が凄まじい!

 ここまで親切魔物だったの!?


「おい、お前たち! 困惑しておるだろう、離れなさい!」


 ゆっくりとしかし強い声。

 ペリトンたちの背後から……さらに大きなペリトンが出てきた!?

 あれ……なんだか陰影がしっかりしている。


 というかところどころペリトンより立派なような……

 "観察"!


[ペリュトン 特別な影を得たペリトンがトランスした姿。ペリュトンの影は狩られたその姿を写すとされる。非常に緩かな性質を持ち争い事に興味がなくいつも穏やかだ]


 今度はトランス体!?

 この説明文は……影……影……ええと。

 あっ。ハーピーの形だ!?


「こ、こんにちは……あの……つかぬことをお伺いしますが、その影は……」

「おお、これかのう? ソレに関しては、まず我々のことから話さなくてはな。何、立ち話もなんだから、向こうで日に当たりながら話そうか」

「いいよなあ、影持ち」

「俺もいつか影を手に入れてやる!」

「私は、まだ不安かな……」


 ペリュトンに案内されて後ろを歩む。

 ペリトンたちはペリュトンを尊敬の眼差しで見ているようだ。

 トランスしている……というより影を持っているコトが彼らには大事なのか?


 ペリュトンに奥へ通されるとそこは奇跡的に壁すら壊れていない空間。

 遥かに古いガラスのだけが破損し陽が暖かくさしている。


「さあさ座って。小鳥たちとこまめにトレードして集めた小羽根を詰めた敷物だ。かなり君には大きいが、何もないよりは良いだろう」

「あ、わざわざありがとうございます」


 サイズが明らかにペリュトン用でチョコンと座る。

 これしっかり手入れしてある……

 彼らも本当に文化があるのか。


「おや、意外そうだね。それに対して疑問を覚えるということは、君の環境にはもしや、文化があるのかい」

「え!? あ、はい。少しですが」

「おお、それはいい。なるほど、なるほど」


 ああそうか……

 敷物やらトレードの存在に特に疑問を持たず使い倒したりスルーするのは知らないからだ。

 知っていると違和感ばかり浮かんで気配に出てしまうか……


「ええとそれでですね、先程の影についてなんですが」

「おお、そうであった。この影についてだったな。まずは我ら、ペリトン族の話をしよう」


 ひとことひとことをゆっくりと語るその口調はどこか楽しげ。

 昔の話をして子どもにつまんないって言われるタイプかもしれない。

 どこか客人にじっくり話せるのが楽しそうだ。


「よろしくお願いします」

「わしらペリトン族はのう、こう見えて実は、ちゃんとした肉体と呼ばれるものはもっておらんのだよ。よく霊体と言われるが……あれでもない。半端な(うつつ)と常世の間。影のない半端者は、どちらにも身のおきようのない、命なきもの。そう我らは、昔から伝えられ、考え、思っているのだよ」

「ううーん、つまり、影がないと生きているとは言えない、と?」

「そういうことになるね。我々はこれを、影信仰と呼んでいるね。我々一族の、大事な心なのだ」


 ふーむ。

 ペリトンがペリュトンにトランスするのが影の有無みたいだからそんな発想が出来上がったのかな……

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