八百四十六生目 文化
"観察"そして"言語解読"!
[クモグモ 森を彼らの巣そのものにしてしまい大きな雲のように見える景色すらつくりだす。だが本体はとても臆病で糸を雲状にして飛んで逃げたりもする]
「うわあ!?」
「ドラゴンだあ!」
「良い狩場だったのにい!」
「なんか、ごめん、すぐ通り過ぎるから……壊すのは最小限にしてあげて」
「はい! 誰だっておうちを壊されるのはいやですもんね。ごめんなさーい! 通りまーす!」
私は真面目に避けないと蜘蛛の巣に捕まってしまうから結構さっきから気を使っているのにドラーグは正面突破だもんなあ……
むこうとしてはやってられないらしくおしりについている雲のような物質を浮くのに使いどこかへと飛び去っていく。
ただ遅い。
なるほどふだん待ち構える必要があるわけだ。
……なんかドラーグの後ろ通るだけで良い気がしてきた。
みんな同じことを考えたらしく1列並びに。
「ちょ、ちょっと!? みなさんどうしたんです!?」
「いやあ……」
「お前は主の盾だ。誇れ」
「まあ、無駄に巣を壊すのもよくないからな」
「ええー!? 僕だけが蜘蛛の巣払って進むんですか!?」
「……パパ、かっこいいよ」
「よーしはりきっちゃうぞー!」
コロロの言葉であっさりやる気になってくれた。
単純で助かった。
それでもあんまり荒らさないように必要最低限だけ壊して進む。
幸いクモグモの巣作成能力は高いようだ。
どんどんと通った後に修復されていく。
私達もどんどん進もう。
クモの巣やら突風地帯やら魔物たちの襲撃やらをやりすごして……
なんとかかんとか日が暮れる前に次の大浮遊岩群にたどり着いた。
必ず来られるかどうかという保証がその時の地形によりないせいでかなり大変だった。
端っこを借りて他の魔物たちの邪魔にならないように気をつけつつ火を焚く。
この場所もたくさんの魔物が群生しているようだからね。
今日私のデザートはいつぞや沼の迷宮で食べたあの辛いバナナだ。
別にあの辛い味が気に入ったわけではない。
あの迷宮攻略後に気づいたのだが……スキル獲得により自身の味覚すら変化している。
正確にはちゃんと味わえなかったものが今しっかりと味をチェック出来る。
あれだけ辛かったはずのバナナがうまいことうまいこと。
刺激の代わりに優しい甘み。
ねっとりとしたうまみが口いっぱいに広がり天然自然のものとは思えぬヤミツキ感覚。
1本で強い満足感!
ずいぶんと感じる印象がかわるものだ。
前のは食べられたものじゃあなかったからなあ。
"鷹目"や"千里眼"であたりを見渡している限り気づくのは……
こちらの方が前よりも残っている建物が多い。
前のが民家たち村なら今度のは街……かな。
公共施設だの集合住宅だのに使われていたらしき崩壊建造物がよくみられる。
なんなら土塊に植物たちが生えているように見えてその下に建造物が埋まっている。
中に魔物も住んでいるがあれって……
それにしても何があったんだこの地は。
滅び方が単なる年月を経て放置されただけではなさそう。
まるで誰かに破壊されたような……この地の底にいると言われる怪物に?
うーん。明日もしっかり調べよう。
朝! おはようございます!
食事を済ませて空を飛ぶ。
今日も調査続行だ。
やはり気になるのは街の方だ。
崩壊しても年月がたってもその風格は今だ感じられる。
もちろんそれはこれを建物と認識できる私達だからだが。
ここに住まう魔物たちは我存ぜぬと言った様子。
今話を聞いたうさぎも詳しいことはなにも知らなかった。
ちなみにこのうさぎ……耳が翼になっている。
まさにうさぎは鳥。
数の単位が羽なだけある。
もちろんこういう迷宮だけだろうが。
さてみんなと別れて話を聞いて回っているが……
ドラーグとコロロ組はかなり手前側を調査してもらっている。
ダンやアヅキも離れさせているが理由は奥に存在する。
奥の地こそ街がまだかなりそのままの形で残っている。
植物が生い茂り破損し木が生えても原型がわかる頑丈な建物が多い。
そこを根城にしている魔物たちがコロロにとって危険かもしれないのだ。
ペリトン。
影を持たない魔物……
あそこに群生していた。
大きな建物の中へと入っていく。
昔は公共施設のひとつだったのだろうか。
崩落した天井の一部や壊れた壁に哀愁を感じつつ無事な部分だけでずっと広いのに驚く。
ここには確かに文化があった!
手つかずの品が残されていないかなと思って探ってはいる。
ただやはりほとんどのモノは風化が激しい。
おそらく本らしきゴミは見事土に還っている。
スクロールはひらかない。
雨ざらしと風晒しで自然変換。
このまま進んで行けば感知しているペリトンたちにたどり着くはずだが。
気を引き締めてかからないと。
この場所と……ハーピーとの関係の話だ。




