八百四十五生目 突風
「――という感じだったよ」
「ふむ、主や我々が集めた情報はかなりの範囲が一致していますな」
「信ぴょう性が高いってことだな! 魔物の種類を越えて、うっすら信仰されている何かがいるってのは、驚きだがな」
「もしかしたらそれが、昔はいたってきいている、神様かもしれないんですね!」
アヅキがメモ木片を並べダンはニカッと笑顔を見せドラーグが爪を天へとたててひらめきアピール。
やっと進展を出せたからみんなヤル気だ。
あんなことはあったものの気持ちを切り替えていかないと。
例のハーピーの子投下に関しては簡略して概要だけ伝えた。
あの想いをするのは多くないほうが良い。
この地に棲むハーピー含むいろんな魔物に話が聞けたもののみんなに共通している話がある。
落ちるとどうなるかというものだ。
多少言い回しは違うが眠りについて地下の怪物に食われ輪廻するというものだ。
ここまで畏れられている怪物もそれはそれで神なような気がしてきた。
崖が動いたりすりつぶすように動くのはその怪物が操っているという話も出てきている。
どこまでが真実味のある話かはわからないが……すくなくともそうこの地に棲む魔物たちは思っている。
「チイチッ」
「そうだな、おそらくはこことは比較にならないほどの……それこそ国の立派な建造物がこの先にへある可能性が高い」
「話から方角も絞れましたね」
「よし、行くか!」
「「うん!」」
各々元気よく返事し片付けをして飛び立つ。
蜘蛛の巣が多い崖か……ちゃんと道が通れると良いけれど。
大広間的に広がっていた空間からまた崖に挟まれた道になる。
ふたたび動き回る崖たちに苦戦しつつ……
さらに悪い面が見えだす。
「ローズ様! こっちですー!」
「パパでも……厳しい……!」
「主、あちらの道なら追い風です」
「わかった」
「ううっぷ! やべぇなこの風! 俺が飛びそうだ!」
単なる崖の地形以上に空気の通り道が非常に厄介になってきた。
風が乱れたり向かい風だと私やドラーグは無理やり通れてもほかが吹き飛ばされる。
魔物や草も流されているのでそれで見極めないと下手するとずっと下流まで流される。
「チチピイッ!?」
「あ! キトリが流されている!」
「キトリちゃんー!?」
「お前はいつの間に! この中で1番軽いから注意しろ!」
進行方向ではあるがキトリは吹き飛んで行く。
アヅキが飛んで錫杖を伸ばす。
先からさらにカラスの脚が出てキトリを掴んだ。
「うぐっ!」
「パパ!」
「えーい!!」
アヅキももちろん飛ばされる圏内。
ドラーグがさらにつかみ崖に捕まる。
キトリの流されている方向が合流している風の影響で別方向にいきそう!
しかも勢いが強くて崖が少しずつ爪痕を残してズレていく。
風の勢いにうまくのれずもたついていた私も合流……重いッ!
「うぐごご……引っ張られる!」
「あ……ローズ様! なんか首のスカーフが光ってますよ!」
風! もっと手加減してくれ!
その願いが通じるかのように受ける風の間隔が少し和らぐ。
今だ。
「うおお、間に合ったーっ!!」
「せーの!」
ダンが急いで空中を駆けてきてくれた。
私を掴んで空中で踏ん張る。
これはおおきい。
みんなで一斉に引っ張って。
「「ソレーっ!」」
「ピピィッ!?」
やっとキトリをそばへと引き戻せた!
なんという風力……!
明らかにそういう力だろう。
ナブシウの時と似たようなものだ。
迷宮の大きな力で私達は簡単に左右されてしまう。
「まったく! 主に迷惑をかけるでない!」
「まあまあ、助かって良かったよ。困ったらお互い様!」
「チチィ」
「ふぅー、間に合ったぜ……」
こんなそんなで場はちっとも安定していない。
どこか遠くまでうっかり流されると方角を見失う。
うまく道を探さないと……
そうやってしばらく風に流されつつも飛び……
なんとか風の少ない場所に飛び込んだと思ったら。
「うわっ!?」
「蜘蛛の巣だらけです!」
「ここがさっき、主が言っていた……」
ハーピーたちが話していた蜘蛛の巣だらけの谷……!
視界の端を何かがササッと走り去っていく。
風はないがとても蜘蛛の巣の罠が多い。
しかも明らかに大きい。
人間大サイズのものすらひっかかる大きさ。
蜘蛛の巣の中に何か崖にそってくくりつけられた建物らしき残骸が見える……ここのはそこそこ粗末っぽい。
「ちょっと邪魔ですねー」
「あっ、力がまだのこっているものなら素材になるかも」
ただ逆にいえば捕まえられるのは人間大までだ。
ドラーグがはらえば重量負けしてほぐれていく。
ドラーグが軽くエネルギーを込めるとはがれて糸をクルクルと巻いていく。
それを見て驚いた他の巣にいる蜘蛛たち。
大慌てで中央通りから撤退している。
まさにこんなの聞いていないってやつだなあ……




